記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
小耳症は病態によって症状や耳の形に違いがあり、必要な治療も変わってきます。今回の記事では、小耳症の症状や合併症、治療法について解説します。
小耳症は生まれつき耳が小さい、もしくは耳介に奇形(全部~1部分の欠損)がある状態のことです。
小耳症は、母親が妊娠三ヶ月以内に第1第2鰓弓(妊娠4週目頃に盛りあがってくる、耳のもとになるもの)に何かしらの異常が発生し、器官形成の発育不全が起こることが原因と考えられています。
外的要因や遺伝との関係性が示唆されていますが、現在のところはっきりとわかっていません。
小耳症の分類にはいくつかの基準がありますが、以下の4つに分類できます。
小耳症では、合併症として外耳道(耳の穴)の閉鎖がみられることが多く、外耳道が閉鎖すると、耳が聞こえにくい、ほとんど聞こえないといった症状が現れます。
両耳に小耳症がみられる場合は学習能力や言語発達に遅れがでる可能性があるため、骨導補聴器の使用が推奨されるケースもありますが、片耳だけの場合であれば反対側の耳は健常者の耳と変わらないため、そのような心配は少ないといわれています。
また、小耳症では顔骨の形成も不完全であることが多く、小耳症側の上下のあごの骨が小さく形成されてしまうこともあり、顔の左右非対称が顕著になることもあります。
小耳症が必ずしも治療が必要な病気ではありませんが、「見た目」の問題などから学童期に耳の形や位置を整えるための手術を行うのが一般的です。
手術の方法は医療機関によっても異なりますが、基本的には2回に分けた治療が必要となります。
一度目の手術では、耳を形成するために必要な軟骨を自身の肋骨などから採取して耳に移植する「肋軟骨移植術」が行われます。その後半年ほどかけて移植した軟骨がしっかり耳になじむよう経過を観察し、二度目の手術では耳の位置を移動する「耳介挙上術」を行います。
いずれも全身麻酔を使って手術を行いますので手術中の痛みなどはありません。しかし、手術後は感染や痛みなどが生じやすく、なかには移植した軟骨が上手く生着せずに皮膚が壊死するなどの合併症が現れることもあるため、慎重な経過観察が必要となります。
小耳症を治療するには手術による耳介形成が必要になりますが、手術のタイミングや手術以外の治療の必要性については専門医の判断が必要です。まずは専門の医療機関を受診し、担当医と相談しながら納得のいく治療方法を検討しましょう。