記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/15 記事改定日: 2018/4/17
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
原因がわからないけれど、だるくて体がこわばり、うずくような痛みがある場合、もしかしたら線維筋痛症かもしれません。この記事では気になる線維筋痛症についてまとめました。
線維筋痛症(Fibromyalgia: FM)は原因がはっきりしていないため、根治する方法がありません。
現在は、本人や家族に病気を理解してもらい、良質な睡眠と適切な有酸素運動を取り入れてもらうなど、心理療法や認知療法、運動療法が治療を基本に、症状ができるだけ出ないように多面的な治療方法が行われます。
薬物療法としては、抗うつ薬と抗けいれん(てんかん)薬が使われることが多く、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や副腎皮質ステロイドなどの消炎鎮痛剤は効果みられないといわれています(トラマドール塩酸塩やアセトアミノフェンは使用される場合もある)。最近では三環系抗うつ薬を使用することもあります。
ただし、薬物治療の効果はあまり高くないという評価もあり、日本においては積極的に取り入れられていないことも多いといわれています。
線維筋痛症が長引き、症状がひどくなると薬物治療だけでは十分な効果が得られないことが多くなります。
線維筋痛症は、抑うつ状態や睡眠障害などの精神症状が現れることもあり、疼痛やこわばりのために満足のいく社会生活が行えず、患者は精神的・社会的に大きなダメージを受けます。
このため、線維筋痛症の人に対して、認知行動療法やカウンセリングなどの心理療法が行われることがあります。認知行動療法とは、認知と思考のゆがみを解決して痛みに対して正しい対処法を取得することを目的に行われます。
これは、線維筋痛症の人は痛みやこわばりに対して強迫観念や恐怖心を持つ人が多く、精神的に大きな負荷がかかりやすい傾向があるため、これらの思考を改善して適度な休養とリラックスを心がけるように導くことを目的に行われる治療です。
線維筋痛症の人は、痛みやこわばりのために十分な運動が行えないことも少なくありません。このため、過度に活動が抑制されることで筋力の低下が生じることがありますので、無理のない範囲で運動療法やリハビリが行われます。
運動療法では、身体に過度な負担がかからない有酸素運動が推奨され、その人の症状の程度によって軽いウォーキングや水泳、エアロビクスなどが行われます。また、リハビリでは筋肉や骨格に適度な刺激を加えることを目的に、ストレッチやマッサージが行われます。
しかし、これらの治療も患者さん一人一人の状態に合ったものを行わなければ、痛みを増し、精神的なダメージを与えることもあるので注意が必要です。
投薬治療や心理療法を行っても、症状が改善しない場合には栄養療法が取り入れられることがあります。
最も多く行われるのは、ビタミンやミネラルを含んだ点滴です。徐々に量を増やしていきますが、この点滴によって痛みが軽減するとされています。どのようなメカニズムによって症状が改善するのかは解明されていませんが、若年者の線維筋痛症には特に有効であることが知られています。
また、日常の食生活では、ビタミンやミネラルを多く含む野菜や果物の摂取がすすめられ、肥満の原因である高カロリー食は症状を悪化させることがあるため、控えるように指導されます。
繊維筋痛症の原因は今のところ解明できていません。
ただ、関節や筋肉、腱、内臓などの痛みのある部分を検査しても全く異常がみられず、痛みの特徴が帯状疱疹の神経痛や糖尿病性神経障害の痛み、癌性疼痛などに似ていることから、痛みの信号を伝えたり抑えたりする脳の機能に何らかの問題が生じているのではないかと考えられています。
心理的ストレスや社会的ストレス、外傷などが起因することが示唆されていますが、ストレス状態にいる人が必ず線維筋痛症になるわけではなく、そのほかにも不明な点が多いことから、原因の解明には至っていません。
他の病気と一緒に発症するものが続発性線維筋痛症、他の病気を伴わないものが原発性線維筋痛症です。日本では原発性が多いといわれています。
続発性にみられる合併症にはリウマチ性疾患が多いとされいます。主な合併症として関節リウマチや全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、甲状腺機能低下症などが挙げられます。
線維筋痛症は、関節や筋肉などの体の広い部分に、慢性化した強い痛みやこわばりが生じる病気です。圧痛が認められても、診察や一般的な臨床検査をしても異常がみられないため、治療を行っても思わしい効果が現れないことも多いといわれています。
上記の症状の以外にも、強い疲労感や倦怠感、目や口が乾く、眠れない、抑うつ状態になるなど様々な症状が現れます。
かつては心因性リウマチ、非関節性リウマチ、軟部組織性リウマチ、結合組織炎、結合組織炎症候群などと診断されていましたが、1990年に、アメリカリウマチ学会が提案した基準により、線維筋痛症という名称となりました。
圧倒的に女性が多く、特に中年以降の女性の発症が顕著ですが、子供や高齢者が発症することもあるため注意が必要です。
線維筋痛症の主症状は、全身の慢性的な強い疼痛と一定部位に起こる圧痛ですが、疼痛は中心部に集中する傾向があります。また、全身のこわばりを併発したり、朝に症状が悪化するなど関節リウマチに似た兆候がみられることも大きな特徴です。
痛みの状態は日によって違ったり、時間帯や天候、運動、睡眠状態、ストレスの状態などでも変化します。
その他にも、下記のような様々な症状が現れます。
身体症状として疲労・倦怠感、微熱、口や眼の渇き、手指の腫れ、皮膚の循環障害、過敏性腸症候群様症状(腹痛、下痢、便秘)、動悸、呼吸苦、などがみられます。
神経症状には頭痛や四肢の感覚障害、手指のふるえ、めまいなどがあります。
精神症状には不眠(睡眠時無呼吸症候群を含む)、抑うつ気分、不安感、焦燥感、集中力低下、意識障害、失神発作などがあります。
線筋筋痛症の完治(根治)は難しく、治療は症状をできるかぎり抑えてQOL(quality of life:生活の質)を向上することが中心になります。根治はできませんが、ある程度症状を抑えることは可能とされているので、もしこの記事を読んで、気になる兆候がある場合は病院で早めに検査してもらいましょう。
また、患者さん本人の努力だけでなく、周囲の人のサポートも大切です。しっかりサポートできるように、正しい知識を身につけましょう。
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