記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/21 記事改定日: 2018/11/2
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インフルエンザになると、発熱や関節の痛みが続くので、誰が発症してもつらいものですが、子供の場合、重症化するリスクが高いので特に注意する必要があります。また、治療についても大人とは違うことがあります。
この記事では、子供がインフルエンザを発症した場合の注意点について、治療や予防法も紹介しつつ解説します。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが鼻やのどの粘膜に感染して起こる病気です。一般の風邪と異なり、重症化しやすいのが特徴です。インフルエンザを発症すると、以下のような症状がみられます。
上記のような症状が出た後、鼻水や咳、のどの痛みがあらわれます。
ちなみに、インフルエンザとよく似た症状に、風邪(風邪症候群)があります。風邪はウイルスが原因で発症する点でインフルエンザと共通していますが、風邪のひき始めから鼻水や咳、のどの痛みといった症状が出てくること、そして関節痛や倦怠感などはそれほど強くない傾向があるという点でインフルエンザと異なります。
子供のインフルエンザの症状には、大人とは少し違う特徴があります。38度以上の急な発熱や頭痛、強い倦怠感、関節痛といった全身症状のあと、咳や鼻水などの症状が現れる点は大人と共通していますが、子供の場合は中耳炎(ウイルスや細菌が中耳に侵入して痛みや耳垂れといった症状を起こす病気)や熱性けいれん(発熱が原因で、ふるえや体のこわばりが現れる病気)、気管支喘息を併発して重症化することがあります。
また、幼児期の子供の場合、インフルエンザの発症がきっかけでまれに急性脳症を発症した結果、後遺症が残ったり、死亡したりするケースが報告されています。このため、一層の注意が必要です。
インフルエンザには様々なタイプがありますが、日本で冬から春にかけて流行するのは主にA型とB型と呼ばれるタイプのものです。
A型は例年秋の終わりから冬の終わり頃にかけて流行し、38度以上の高熱・咽頭痛・関節痛・筋肉痛・全身倦怠感などの非常に強い症状が見られるのが特徴です。一方、B型はA型よりも遅れて流行することが多く、A型ほど強い全身症状は現れず、微熱や嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状が現れるのが特徴です。
しかし、症状の現れ方には個人差があり、A型であっても症状が軽い人もいればB型でも高熱や強い全身症状が現れる人もいます。どちらの型に感染したとしても、しっかりと休養し、周囲へ感染を広げないように適切な感染対策を行うようにしましょう。
インフルエンザかどうかを判定するために、最近はインフルエンザ抗原検出キットを使うことが増えています。
検査では、まずインフルエンザの疑いがある子供の喉や鼻に綿棒を入れて検体を採取し、それを検出キットに入れて陽性か陰性かを判断します。このキットを使うと、20~30分後には結果が分かるというメリットがあります。しかし、感染した直後など、ウイルス量が少ない段階で検査してしまうと、陰性になってしまうというデメリットがあります。
検査の結果陽性反応が出た場合、インフルエンザ治療薬を服用します。この治療薬は、適切な時期(発症から48時間以内)に服用すると、発熱期間は通 常1~2日間短縮され、ウイルスが鼻やのどから出る量も減少します(48時間以降に服用しても、十分な効果は期待できません)。
インフルエンザ治療薬のひとつに「タミフル®」があります。
「タミフル®」については、過去にこの薬を服用した10代の方が、異常行動を起こして転落死したことが報告されています。
このため厚生労働省では、予防的な措置として
という情報(緊急安全性情報)を配布しています。
インフルエンザに伴う症状を和らげるために、解熱薬が処方されることもあります。子供の場合、アセトアミノフェンを処方するのが一般的です。
解熱薬のひとつにアスピリンもありますが、アスピリンはライ症侯群を引き起こすリスクがあるため、子供には一般的には処方しません。
市販の解熱鎮痛薬や風邪薬には、アスピリンなどのサリチル酸系を含んだ薬がありますので、服用前には必ず医師または薬剤師に相談してください。
また、ロキソニン®は、インフルエンザ脳症のリスクを高めるとされているので、子供のインフルエンザには使えません。
子供のインフルエンザを予防するには、流行期に入る前(12月上旬頃まで)までにインフルエンザの予防接種を受けておくことがとても大切です。
ある報告によれば、ワクチンの接種によって「1~6歳の子供の約20~30%が発病を防ぐことができた」そうです(乳幼児への効果に関しては、報告によって多少差がありますが、およそ20~50%の発病防止効果があったと報告されています)。接種すれば100%感染を予防できるというわけではありませんが、感染したとしても重症化を防ぐ効果が期待できます。ただし、予防接種の効果が持続するのは5カ月程度なので、毎年接種することが重要です。
そのほか、日常でできるインフルエンザの予防法として、以下のようなものがあります。
子供がインフルエンザに感染すると、辛い諸症状だけでなく、けいれんを起こしたり、脳症などの重大な合併症を引き起こしたりする可能性があります。インフルエンザの治療薬は、発症から48時間以内に服用しないと効果が期待できないと言われています。発熱や関節痛など、「いつもの風邪」とは違う症状がみられたら、できるだけ早く病院へ連れていきましょう。
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