記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
脳の血管が破れ、出血を起こしてしまう「脳内出血」。命にかかわることもある重篤な症状として知られ、高血圧の方は特に高リスクとされていますが、実は脳内出血の原因は高血圧だけではないのです。以降で詳しく解説していきます。
脳内出血は、文字通り脳内で出血が発生する病気です。多くの場合、脳内の血管が破れることで、脳内で出血が発生します。
脳内で出血が起こると、まず脳細胞を働かせるのに必要な酸素の供給量が著しく低下するため、脳機能に大きなダメージが発生する恐れが高くなります。更に出血が起きた部分は腫れを起こすため、それにより脳が圧迫され、脳機能に深刻なダメージを与えることも懸念されます。こうしたことにより、脳内出血は非常に命の危険に直結しやすい、また重篤な後遺症につながりやすい病気だと言えます。
脳内出血と血圧には大きな関係があります。事実、脳内出血の主要原因としては高血圧が挙げられます。
また、動脈硬化も主要原因のひとつです。動脈硬化は血管内にコレステロールなどが蓄積されることで、血管が硬くなってしまう状態です。硬くなった血管は脆いため、小さな血栓などでも大きなダメージを受けてしまい、血管が破れ脳内出血を引き起こしやすくなります。
ほかに、血管にできる瘤も脳内出血の原因のひとつです。瘤ができる原因としては動脈硬化や、瘤ができる病気などが挙げられますが、原因がわからずできてしまう瘤も存在しています。
さらに高齢者や動脈硬化を抱えている人は血管が脆くなっているため、トイレで力んだときに血管に負担がかかり、その結果として脳内出血を引き起こすこともあります。
脳内出血の中で一般的なのは、脳内の血管が破れて出血を起こすタイプのものです。しかし中には、特殊なタイプのものもあります。
そのひとつが出血性脳梗塞です。そもそも脳梗塞と言うのは、脳の血管が詰まり血流が滞ってしまうことで発生する病気ですが、その数日後に一度滞っていた血液が流れ始めることがあります。このとき、その血流を脳梗塞を起こした血管が受け止めきれず、続けて脳内出血を発症してしまうことがあるのです。
また自覚症状のないまま脳内で微量の出血が起こる、隠れ脳内出血と呼ばれるタイプのものもあります。
脳内出血がおこりやすい状況とは、つまり血管に負担がかかる状況を指します。しかし血管への負担は意識せずとも起こるものです。たとえば寒い季節は体を温めるために高血圧になりやすいので、血管への負担は非常に大きくなりやすい傾向にあります。その状態でトイレで力んだり、激しい運動をしたりすると、若い人であっても脳内出血が引き起こされてしまうことがあります。
脳内出血が起きた際には、激しい頭痛や片側麻痺、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどの言語障害のサインが現れます。このような場合は、とにかく迅速に医療機関にかかるのが第一です。もしくは発作を起こしている人が身近にいる場合は、無理矢理体を動かしたりせず、声を掛けて意識の有無を確認するところから始めてください。
脳内出血の主要原因は高血圧ですが、動脈硬化などで血管が脆くなっている方は、ちょっとしたはずみで出血を誘発してしまうケースがあります。寒い季節などは特に気をつけ、急な激しい頭痛や麻痺症状がみられたらすぐに病院を受診してください。