記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/1 記事改定日: 2018/8/9
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
認知症の一種として広く知られているアルツハイマー病の原因はいったい何でしょうか?また、アルツハイマー病の完治は難しいといわれていますが、進行を遅らせることはできるのでしょうか?
以下の記事で詳しく解説していきます。
アルツハイマー病の発症には、脳の中にあるアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が関係していると考えられています。これらの特殊なたんぱく質が留まることによって神経細胞が破壊されることで、認知機能が低下したり、障害が起こったりするといわれています。
たとえば、記憶を司っている海馬と呼ばれる部分が破壊されると、最近の出来事を記憶することができず、すぐに物忘れをするようになります。ただ先述のとおり、突然に記憶ができなくなるのではなく、症状は何年も前から出ていますので、早期発見が可能です。
また、アルツハイマー病の一部は遺伝すると言われています。家族や親族にアルツハイマー病の発病歴がある人がいる場合は、自分も発症する可能性があることを認識して、注意しておくことが大切です。
アルツハイマー病の発症には生活習慣が関わっていることがわかっています。
いわゆる「生活習慣病」と呼ばれる高血圧や高脂血症、糖尿病などは動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や脳出血のリスクになります。このため、生活習慣病の人は認知症の中でも「脳血管性認知量」と呼ばれる脳血管の異常による認知症を発症しやすくなるのです。
この「脳血管性認知症」は認知機能障害発生の閾値を低下させて、同時にアルツハイマー病の原因であるβアミロイドの産生を促進すると考えられています。結果として生活習慣病はアルツハイマー病を引き起こすリスクとなるのです。
アルツハイマー病はタンパク質を形成するのに必要な特定の遺伝子変異によって発症することが分かっています。これらの遺伝子変異は遺伝する可能性が高く、親がアルツハイマー病を発症した人は自身もアルツハイマー病にかかる確率が高いとの報告も多く存在します。
このような遺伝因子が関与するアルツハイマー病は、発症年齢が若いのが特徴です。遺伝が関与しないアルツハイマー病は通常70歳以降に発症しますが、遺伝によるアルツハイマーは50代の発症も珍しくありません。
また、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病はアルツハイマー病の発症リスクとなりますが、これらの生活習慣病の発症自体が遺伝しやすいと考えられており、結果としてアルツハイマー病発症には遺伝的な要因があると考えられているのです。
アルツハイマー病を発症した場合、様々な症状が出てきますが、その中核症状となるのが記憶障害、判断能力の低下、見当識障害です。
記憶障害は単なる物忘れではないので、指摘されても思い出すことができません。たとえば、人と約束をしていても、約束したことそのものの記憶がないのです。判断能力の低下では、料理の買い物ができなくなったり、料理の手順がわからなくなります。さらに見当識障害が出てくると、自分がどこにいるのかがわからなくなり、迷子になってしまいます。
またアルツハイマー病の周辺症状で多いのは、物がなくなったとか、盗られたと人を疑うようになったり、異物を食べたり、暴力的になったり、徘徊したりなどの症状が多く見られるようになります。
アルツハイマー病とは認知症の一つであり、その中でも最も発症率が高く、全体の約60%を占めています。男性よりも女性の発症率が高く、全体としても増加傾向にあります。
アルツハイマー病の特徴は、物忘れが激しくなる、判断力の低下や妄想、さらには自分がいる場所がわからなくなるなどの見当識障害が見られるようになることです。このような症状が出る何年も前から脳の異変は始まっており、早期に発見して治療を開始すれば、アルツハイマー病の進行を穏やかにさせることも可能です。
アルツハイマー病は現時点では完治させることができない病気ですが、進行を遅らせることは可能です。アルツハイマー病であることに気がつくのは早ければ早いほど良いので、まずは病院で検査を受けてみましょう。
検査の結果アルツハイマー病だと診断された後は、脳の神経伝達物質に作用する薬によって、進行を遅らせる治療を始めます。現在日本ではドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの4種類の薬が承認されていますが、どの薬が良いかは患者さんによって異なるので、医師と相談しながら薬を選んでいきます。
また、アルツハイマー病のご家族に対して、行動に制限を加えてしまう方も少なくありませんが、できることをさせてあげることには、進行を遅らせるのに効果があると考えられており、症状が良くなったという事例も報告されています。
アルツハイマー病はある日突然発症するのではなく、徐々に進行していく病気です。記憶障害や見当識障害など、アルツハイマー病の疑いがある症状がみられたら、早めに病院で治療を始めることが、進行を遅らせる最良の方法です。