記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31 記事改定日: 2018/11/1
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インフルエンザと風邪は、どちらもウイルスが原因で発症する気道感染症という点で共通しています(ただし、風邪は細菌が原因になることもあります)。でも、インフルエンザと風邪には違うところもあります。この記事では、これら2つの違いについて、予防法も交えながら解説していきます。
風邪もインフルエンザも、発熱、倦怠感、せき等の症状が現れる気道感染症です。
風邪を引き起こす原因となるウイルスにはさまざまな種類がありますが、主にウイルスに感染することによって体の不調があらわれます。
一方、インフルエンザはインフルエンザウイルスが引き起こす感染症で、一般的な風邪とは区別されています。
風邪は鼻やのどなど、局所的に症状があらわれ、かつ、比較的ゆっくりとしたスピードで症状が進行して行きます。
これに対し、インフルエンザは、38度以上の高熱や全身の倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛といった症状があらわれ、かつ、進行が速いのが特徴です。
特に子供や高齢者は、インフルエンザの症状がはっきり現れないことがあります。このため、重症化するケースも少なくありません。
インフルエンザの治療薬は、症状が出てから48時間以内に使用するのが効果的と言われています。したがって、早期にインフルエンザの症状に気づけることが非常に重要になります。もし疑わしい症状がみられたら、念のため病院で検査してもらいましょう。
普通の風邪とインフルエンザでは服用できる薬の種類が異なります。
普通の風邪の場合、その原因によって抗生物質が使用されたり、発熱や頭痛、咽頭痛などには解熱鎮痛薬が使用されます。
一方、インフルエンザは発症後48時間以内であれば抗インフルエンザ薬が有効であり、高熱や咽頭痛などの症状に対しては風邪と同じく解熱鎮痛薬が使用されます。
しかし、普通の風邪とインフルエンザでは使用できる解熱鎮痛薬の種類が異なります。普通の風邪の場合は、薬によるアレルギーがある場合を除いて使用できる薬に制限はありません。しかし、インフルエンザの場合はロキソニン®やバファリン、イブ®などのNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)を服用すると脳症を発症するリスクが高くなることが分かっており、使用は禁忌とされています。
インフルエンザにかかったことが疑わしい場合は、自己判断で市販薬を使用するのは非常に危険です。必ず病院を受診してインフルエンザでも安全に服用できる薬を処方してもらうようにしましょう。
代表的なインフルエンザの治療薬として、タミフル®、リレンザ®、イナビル®、ラピアクタ®があります。これらの抗インフルエンザ治療薬は、インフルエンザウイルスが体内で増殖するのを抑え、インフルエンザを治療します。
以下に、それぞれの抗インフルエンザ薬の特徴を紹介します。
カプセルやシロップで服用します。10代の未成年者への服用はできるだけ避けることとが望ましいとされています。
吸入器を使って、1日2回、5日間使用します。粘膜に直接届くので、高い効果が期待できます。ただし、呼吸器の病気(気管支喘息など)を持っている人は、吸入後に気管支けいれんを起こすことがあります。気管支喘息の治療で吸入薬を使用している場合は、必ず医師に伝えてください。
イナビル®の特徴は、タミフル®やリレンザ®とは異なり、1回で効果を得ることができることです。吸入薬ですので、リレンザ®と同様、呼吸器の病気を持っている人は必ず医師に伝えましょう。また、乳成分へのアレルギーがある方は、アナフィキラシーショックを起こす可能性があります。
点滴薬です。高齢者など、薬が飲めない方や、吸入ができない方に使われます。点滴薬ですので、医師が投与することになります。
腎機能障害のある方への使用はリスクが高いとされていますので、腎臓の病気を持っている場合は医師に相談してください。
いずれの薬も、症状が出てから48時間以内に服用することが効果的とされています。また、服用後に頭痛や息苦しさ、胸苦しさなど、体に異常を感じたら、すぐに病院などの医療機関に相談しましょう。
インフルエンザを発症すると、肺炎、急性脳症、急性筋炎といった重篤な合併症を発症することがあります。
インフルエンザの合併症の中で、最も多いのが肺炎です。肺炎は、インフルエンザウイルスが原因で発症するものと、インフルエンザの症状が軽くなった頃に細菌に感染して発症するものとがあります。
インフルエンザウイルスが原因で発症する肺炎は、発症から4~5日を過ぎても咳や高熱などがみられます。一方、インフルエンザが治りかけた頃に細菌に感染したのが原因で発症する肺炎の場合は、インフルエンザの症状が落ち着いた頃に、再び発熱や咳、呼吸困難といった症状がみられます。
高熱が長く続く場合や、いったん平熱に戻ったのにふたたび発熱した場合は、肺炎の可能性があると考えてよいでしょう。
急性脳症は、インフルエンザにかかることで免疫障害が起こり、脳の働きに異常が出ることで発症します。痙攣や意識障害、精神障害が起こった場合、急性脳症が疑われます。後遺症が残る可能性があるので、早めの対処が必要です。
インフルエンザから回復する過程で、筋肉痛などの症状が起こることがあります。
普通の風邪であっても、インフルエンザと同様に肺炎などの合併症を引き起こすことがあります。特に小児や高齢者、妊婦など免疫力が低い人は注意が必要です。
インフルエンザほど合併症の発症率は高くなく、重症化しにくいとされていますが、合併症を生じると治療が長引いたり苦しい思いをすることになります。このため、たとえ普通の風邪であっても重症化して合併症を引き起こさないよう、無理をせずにしっかり休養して、症状が強くなった場合にはなるべく早めに病院へ行くようにしましょう。
日ごろから手洗い、うがい、免疫機能の低下を防ぐとともに、予防接種を受けることが予防につながります。
風邪は咳やくしゃみをした人のそばにいたり、感染した人の唾液や鼻水などが手などを介して間接的に粘膜に付着すると感染します。
インフルエンザの感染経路も風邪と同じです。ただし、インフルエンザはインフルエンザウイルスを含む空気を吸うだけで口や鼻の粘膜から感染する可能性があるため、注意が必要です。
風邪もインフルエンザも、丁寧な手洗いとうがいが予防の基本です。また、インフルエンザの予防接種を受けると、感染予防だけでなく、重症化防止の効果も期待できます。
インフルエンザワクチンは、接種から2週間後から、5カ月後ぐらいまで効果があると言われています。インフルエンザの流行シーズンは12月頃から3月頃までなので、ワクチンは10月下旬から11月下旬頃に接種することをおすすめします。
また、日頃から免疫力を維持するように努めることも予防につながります。十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、過度の喫煙は控えるといったことを心がけましょう。
マスクを着用すると、鼻の湿度と温度をを保つことができるため、風邪については一定の予防効果があると言われています。しかし、インフルエンザウイルスはマスクの目を通り抜けてしまうため、通常のマスクでは予防できません。ただ、感染を広げないという意味では一定の効果が期待できます。
インフルエンザも風邪も、ウイルスによる気道感染症なので、まずは感染しないために予防することが一番重要と言えます。うがいや手洗いを習慣づけるとともに、インフルエンザの流行シーズンの前に予防接種を受けておきましょう。
また、インフルエンザの症状と風邪の症状は似ているため、一般の人がどちらかを見極めるのは難しいです。インフルエンザは進行が速く、重症化するケースも少なくありません。少しでも不安な症状があるときは、念のため病院で検査してもらいましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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