進行性核上性麻痺の症状とケア方法のポイントとは!?

2017/11/24 記事改定日: 2020/2/20
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

進行性核上性麻痺とは、パーキンソン病のような症状が起こる難病です。初期のころから足がうまく動かせなくなるので、転倒によるトラブルが多いといわれています。この記事では進行性核上性麻痺の症状やケア方法についてわかりやすく解説していきます。

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進行性核上性麻痺(PSP)の症状とは?

進行性核上性麻痺は、パーキンソン病関連疾患のひとつで、パーキンソン病と似た症状があらわれることが特徴です。脳の一部の神経細胞が変形したり減少することにより神経症状が現れると考えられています。
進行性核上性麻痺の発症率はパーキンソン病に比べると低く、50歳以降で発症することが多く、男性のほうが多いといわれています。

また、症状がゆっくりと進むという特徴がありますが、症状が止まることはなく、確実に症状が進行していきます。進行性核上性麻痺を発症して数年のうちに身体が自由に動かせなくなる人もいれば、発症して10年以上たっても身体が動かせる人もいるなど、症状の進む早さには個人差があります。

進行性核上性麻痺の特徴的な症状は、転びやすくなるというものです(特に後方に)。初期の頃から足を動かしにくくなるので、転びやすさが目立ちます。また、転んでも手が動かしにくく、手で支えられないので、怪我をしやすくなります。
動かしにくくなるという症状は、眼球にもあらわれます。眼球を上下左右に動かしにくくなるため、一層転びやすくなってしまいます。

進行性核上性麻痺は前頭葉に障害がおこるため、まったく動かない、話さないということがあったり、同じことを繰り返したりするようになります。口や喉が動かしにくくなると、しゃべりにくさがでたり、はっきりと話せない、食べ物が飲み込みにくいといったことが起こるようになります。

進行性核上性麻痺の原因は?

進行性核上性麻痺の原因は、いまのところはっきりとわかっていません。現在わかっているのは、進行性核上性麻痺になるのにはタウ蛋白というたんぱく質が細胞内で異常蓄積することが発症と関係しているということです。

これは脳の黒質や、中脳、視床下核、淡蒼球、小脳歯状核といった場所でタウ蛋白が蓄積し、それによりその部位の神経細胞が減少したり脱落することで、神経原線維変化という異常構造が出現し、神経症状を起こしてしまいます。

頭部のMRIをとると、脳幹部の特に中脳被蓋部や、前頭葉で萎縮がみられ、脳血流シンチを行うと、前頭葉の血流が低下していることがわかります。こういった脳の変化により、歩きにくさや目の動かしにくさといったことが起こるのではないかと考えられています。

進行するとどうなるの? ケア方法は?

進行性核上性麻痺は確実に病状が悪くなっていくため、発症後数年で車いすでの生活になることも珍しくありません。その後は、ベッド上で寝たきりの生活になってしまい、その後肺炎や誤嚥、痰詰まりによる窒息などを起こして死亡するケースも多く見られます。
初期の状態であれば、転倒予防に気をつけることが最も大切です。周囲の環境を整えるなどして転倒を予防しましょう。

また誤嚥は肺炎の原因になり、死亡のリスクが高まるため、誤嚥しないようなケアも大切です。食事のときは食事内容を工夫をしたり、食事介助を適切に行いましょう。寝たきりになった場合には、自分で身体を動かせないので、体の向きを定期的に変えて褥瘡(じょくそう:床ずれ)予防に努める必要があります。

転倒予防対策

進行性核上性麻痺では物事を正しく判断する部位である前頭葉に障害が生じます。このため、危険認知度が低くなり、物につまづいたりぶつかったりすることで転倒しやすくなるのが特徴です。また、進行すると反射的に姿勢を正そうとする反射も鈍るため、身体が傾くとそのまま転倒してしまうことも少なくありません。
進行性核上性麻痺の方の転倒を防ぐには次のような対策を行いましょう。

  • 普段歩く場所は床にものや家具を置かないようにする
  • 手すりを設置する
  • ベッドやいすの高さを低くする
  • 進行して姿勢が傾きがちになったときは、椅子からの立ち上がりや歩行を介助する

また、万が一転倒した際に、思わぬ怪我を防ぐために保護帽子や肘・膝当てなどを着用するのもおすすめです。

食事の注意点

進行性核上性麻痺では、脳機能が徐々に低下することで嚥下中枢もダメージを受けるため、物の飲み込みが悪くなり誤嚥しやすくなります。このため、食事はなるべくとろみが付いたメニューを選ぶことが大切です。食事を介助する際には、身体をまっすぐにして座らせ、むせ込みに注意しながらゆっくり少量ずつを口に運ぶようにしましょう。

また、頭部や頸部の筋肉が過度に緊張して下を向きにくくなる上に、目の動き自体も悪くなるため、食事を口に運ぶ際は、なるべく食事が見えるように目の高さから行うなどの工夫も必要です。

おわりに:進行性核上性麻痺のケアは転倒予防と誤嚥防止に気をつけよう

進行性核上性麻痺を発症すると初期のうちから足の動きに影響が出るため、転倒を防ぐことが重要になってきます。また、誤嚥は誤嚥性肺炎のリスクを高めるため、死亡リスクも高まってしまいます。家族など周囲の人はきちんとサポートをしてあげ、必要に応じて周りの環境を工夫していきましょう。

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嚥下障害(14) パーキンソン病(25) 歩行障害(12) 進行性核上性麻痺(3) 前頭葉(2)