記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/10 記事改定日: 2020/7/13
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性的な副鼻腔炎を抱えている方は、特に注意していただきたい症状「副鼻腔気管支症候群」を知っていますか?鼻水のほか長引く咳などの症状は副鼻腔気管支症候群かもしれません。この記事では副鼻腔気管支症候群の原因や治療法について解説していきます。
副鼻腔気管支症候群は、一般的に蓄膿症と呼ばれている副鼻腔炎の症状が進んで、その影響が気管支などにも及び、呼吸器系の疾患まで起こしてしまう状態になる病気です。
まず副鼻腔が炎症を起こすことで慢性的な鼻づまりを起こし、頭重感や、鼻汁が鼻の奥からのどに落ち込む「後鼻漏」が起こります。すると粘り気のある鼻汁が鼻腔からのどに流れて行くことで、痰が絡んだ咳を伴う気管支炎を発症するようになります。
これが副鼻腔気管支症候群の状態で、常にのどに違和感を感じ、痰が絡んだ咳払いを繰り返すようになります。微熱や呼吸困難といった呼吸器疾患の症状が、日常的に出てくるようになってしまいます。
副鼻腔気管支症候群の直接原因には下記のようなものがあります。
副鼻腔炎を慢性化させたことで生じた粘り気のある鼻汁が気道に及び、細菌感染の害を広めてしまいます。副鼻腔炎が進行すると眠っている間にのどに鼻汁が落ち込みやすくなり、気道に感染を広げやすくなります。
気道系全体に慢性の炎症を発生させる何らかの体質的な問題を抱えた人は、副鼻腔炎から副鼻腔気管支症候群に発展させやすいとされています。
鼻づまりが続いて口呼吸ばかりになることで、気管支炎を誘発しやすくなるという指摘もされています。
副鼻腔気管支症候群は、粘性のある鼻水が多く分泌されるタイプの副鼻腔炎に多く合併します。発症の誘発因子としては、高齢者・嚥下障害・睡眠時無呼吸症候群・喫煙者・喘息などが挙げられますが、いずれも夜間に鼻水が気管内に流れ込んだ際、咳反射が出にくく、そのまま鼻水が気管内に流れ込みやすい人です。
とくに元から気管支に病気がある人はリスクが高まります。また、乾燥しがちな室内にいる人や口呼吸の癖がある人は、気管支が乾燥して炎症を起こしやすくなり、副鼻腔気管支炎症候群を発症しやすくなります。
副鼻腔気管支症候群では以下のような症状が見られます。
症状の経過は人によって異なりますが、鼻詰まりや鼻水などの鼻の症状が現れ、徐々に咳や膿性の痰が見られるようになるのが一般的です。また、進行すると気管支に慢性的な炎症が生じて細くなり、息切れや息苦しさなどの症状が見られるようになります。
副鼻腔気管支症候群は悪化すると、気管支喘息を誘発することもあるため、思い当たる症状が続く場合はなるべく早めに病院を受診して治療を受けるようにしましょう。
副鼻腔気管支症候群の治療法としては、まず鼻汁や痰が絡んだ咳などつらい症状を抑える対症療法を試みます。
特に症状が進んで気管支喘息を伴った副鼻腔気管支症候群の場合、まずは気管支喘息の治療が行われます。
一般的に気管支喘息を伴う慢性副鼻腔炎の鼻汁は難治性で、慢性副鼻腔炎に対しては抗アレルギー薬による治療が行われます。副腎皮質ステロイド薬の点鼻薬も使用され、根本的な治療には気道粘膜潤滑薬を用いた投薬治療が行われます。
症状が進行している場合にはエリスロマイシンやクラリスロマイシンといったマクロライド系の抗生物質の少量長期投与が行われます。
副鼻腔気管支症候群が疑われる場合は、副鼻腔炎を根本的に改善する治療が必要であるため、基本的には耳鼻科を受診することが勧められます。
一方で、症状が進んで気管支喘息のような症状がある場合は呼吸器内科などで専門的な治療を受ける必要があります。気管支喘息に対する治療が必要な場合などは耳鼻科から呼吸器内科に紹介されますので、まずは耳鼻科で副鼻腔炎の状態を診察してもらうとよいでしょう。
慢性的な副鼻腔炎は、放置していると気道の細菌感染を誘発し、結果的に「副鼻腔気管支症候群」にまで発展してしまうおそれがあります。副鼻腔炎の持病のある方は早めに専門の医療機関で治療を始めるようにしてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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