記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6 記事改定日: 2018/8/3
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
メンタルヘルスとは、最近企業の間でよく聞かれる言葉です。企業の中で心の病によって休業、あるいは退職する社員が増加していることから、企業内でのメンタルヘルスケアの重要性が認知されてきました。メンタルヘルスとはいったいどのようなものなのか、詳しくご紹介します。
メンタルヘルスとは、心の病気になるのを防ぐために、自己や他者の力を借りて管理することを言います。心の病気にかかった人はもちろん、その周囲にいる家族や友人、更には会社の上司や同僚たちもメンタルヘルスのことを知っておくことで、心の病気を理解することができるようになります。
メンタルヘルスという言葉は、最近特に企業で多く聞かれるようになりました。それは、職場の様々なストレスで心の病気を発生し、休職、あるいは退職する社員が多くなってきたからです。社員が休職や退職をすると、残された社員への負担が大きくなります。会社によっては休職者や退職者から訴訟を起こされたというケースもあり、会社のイメージや経営にも関わる大きな問題になります。
そこで注目されているのがメンタルヘルスです。メンタルヘルスでは、心の病気について理解し、上手に付き合う方法や、病気にならないための自己管理方法、周りが支え合うことの大切さなどを学びます。ストレスへの対策を、個人の「気の持ちよう」と断定するのではなく、本人がストレスに気付き、自分自身で対処できるようにするのがメンタルヘルスの目的です。
本人以外にも上司が労働環境を整備したり、職場の人間関係を整えたりする努力も必要になります。厚生労働省では、平成12年に『事業場における労働者の心の健康づくりのための指針』を発表し、セルフケア、管理者や監督が行うケア、産業医などによるケア、そして医療機関によるケアを整備することを企業へ推進をしています。
企業内で実施が推奨されているケアは大きく分けた4つあり、それぞれ次のようなことを行います。
労働者が正しいセルフケアを行うことができるよう、メンタルケアに関する教育研修や事務所での方針、相談先など情報提供を行います。
また、労働者のセルフケアをすすめるために専門家の相談日を設けることや事業所内で相談専用窓口を作るなどの体制を整えたり、定期的に全労働者を対象としたストレスチェックテストを行って、メンタルヘルスに異常を来たしている人がいないかを把握することも重要です。
職場環境改善のため、労働者の職場に対する意見の収集や評価を定期的に行い、事業所の責任者はその意見をもとに労働者が働きやすい環境を整える努力を必要とします。また、無理な労働を強いられている労働者がいないかを把握するため、各部署に労働状況をチェックする責任者を配置することもすすめられています。
これらの責任者に対するメンタルケアの教育研修も重要な課題です。
事業所にはその規模によって産業医や衛生管理者、保健師などの配置が定められています。これらの専門スタッフは心の健康づくりを行う上で非常に大切な働きをします。
医学や健康に関する専門知識を持ったこれらのスタッフが、労働者の相談を受け付けたり、休みの多い労働者と面接を行うことで、いち早くメンタルの異変を感知することが可能です。
また、これらの専門スタッフの意見を採用して職場環境の改善や労働者の配置に配慮するスタッフも必要となります。
事業所内のスタッフや教育研修などだけで解決できない場合には、事業所外の専門機関を利用することがすすめられています。特に中小規模の事業所では、地域産業保健センターや中央労働災害防止協会などを利用して労働者のメンタルケアを行う場合が多いでしょう。
厚生労働省が平成29年に調査した企業のメンタルヘルス対策に関する調査によると、「メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所」の割合は、56.6%でした。取り組み内容としては、労働者に対してストレス状況についての調査をしたことが最も多く、他にはメンタルヘルス対策の研修を行ったり、相談体制を整えたりもしています。
ただ、約半数の企業がメンタルヘルスについての動きをしている中、半数はまだ取り組みがないのは、メンタルヘルスを行うに対してのメリットだけではなくデメリットも存在しているからだと考えられます。
企業がメンタルヘルスを学び、実践することのメリットは、休職や退職する社員が出ることによって、社内がうまく回らなくなるというリスクを回避すること、社員が身体共に健康に働けることによって生産性が上がるという点があります。
メンタルヘルスが約半数の企業に浸透しない理由の一つとして、具体的な取り組みが分からないということが挙げられます。特に、休職者の職場復帰への対応が難しい点がデメリットです。例として、厚生労働省が示す『事業場における労働者の心の健康づくりのための指針』の4つのケアのうち、産業医などによるケア、そして医療機関によるケアがありますが、休職している労働者が職場復帰をする際、産業医と労働者のかかりつけ医との間で患者に対しての情報共有が不十分な場合があります。そのため職場復帰に対して会社が十分な情報を得られないことや、適切な支援策を行えないことが発生すると、復帰をしても再び休職してしまうということも考えられます。
メンタルヘルスに取り組む現代の企業は年々増加傾向にあります。メンタルヘルスを学ぶことは、自分自身や周りの人が心の病気を正しく理解し、サポートできるというメリットがあります。企業だけではなく、家族などの小さなコミュニティーの中でもメンタルヘルスを知ることは心の病気を理解するための一助となるでしょう。
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