記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13 記事改定日: 2018/10/15
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食べ物などが誤って気管に入ってしまったことで発症する「誤嚥性肺炎」です。特に高齢者の発症率が高く、命を落とす危険性も高い病気として知られていますが、この誤嚥性肺炎を予防するにはどうすればいいのでしょうか?
誤嚥予防体操とあわせて、誤嚥性肺炎の予防対策を紹介していきます。
誤嚥性肺炎とは、食道を通るべき食べ物や唾液が誤って気管に入り、肺のほうへ行き、そのことがきっかけで肺に細菌が入り増殖していくことで起こる肺炎のことをいいます。
症状としては通常の肺炎と同じく、高熱や咳、呼吸困難などが起こります。また、異物混入によって、そこから膿を持つ場合があります。ただ、高齢者の場合は知らず知らずのうちに唾液の誤嚥が繰り返され、誤嚥自体に気づかず、自覚症状もあまりないまま病気が進行していることもあります。
この誤嚥を起こしやすい人は高齢者であったり、脳梗塞後遺症で嚥下機能がうまくいかなかったりと、もともと体力のない人です。そういう状態の方にとって、誤嚥性肺炎は命取りとなることがあります。事実、肺炎は日本人の死亡原因の第3位であり、そのうち高齢者の肺炎の約70%が誤嚥性肺炎だといわれています。
誤嚥性肺炎を予防するには、まず口の中を清潔に保つことが大切です。ご本人が歯磨きで口腔内をきれいにすることが困難であれば、介護者の方が医療用の使い捨てゴム手袋をし、指にガーゼを巻き、デンタルリンスをしみこませ口腔内を拭いていってください。ご自身でうがいができる方であれば、ご自身でデンタルリンスをつかってうがいをさせましょう。
また、食事の際の姿勢を正すことも、効果的な予防法です。椅子に座って、やや前かがみになって食事をするよう心がけてください。その際、座面に浅く腰掛け、両足をしっかり床につけることで姿勢が保てます。なお、食べたあとはすぐに横にならず、2時間くらい座位を保つのが望ましいです。
そして、食事はゆっくりととってください。自助食器などを使って自分で自分のペースで食事をするのが一番です。そのほかとろみ剤をつかって、食事にとろみをもたせ、飲み込みやすくするのも予防策の一つです。
誤嚥性肺炎を予防するには、誤嚥が起こらないようにすることが大切です。そのためには、嚥下機能を維持するための体操・エクササイズが効果的と考えられています。
嚥下する力を鍛えるには、首の筋力や柔軟性を維持する必要があります。首を前後に曲げたり、左右にねじる、ぐるりと回すなどの動作を一日に数回繰り返すといいでしょう。また、噛む力を鍛えるには、顎を前後に突き出したり、左右に引き出すなどのエクササイズが効果的です。
その他、円滑な舌の動きを維持するために舌を突き出したり左右に伸ばす、声帯を動かすために「パンダの贈り物」などといったセリフ発声練習も効果的とされています。
誤嚥性肺炎が発症する原因としては、先に触れたように、脳梗塞後遺症などによって嚥下障害が起こっている、あるいは高齢者で嚥下機能が衰えていることが挙げられます。ただ、食物が肺に入ったのではなく唾液の誤嚥によって起こる場合もあります。ほかに、口腔内の清潔が保たれていないことで口腔内で菌が繁殖し、それを一緒に飲み込んでいる可能性があります。
また、胃の内容物の逆流によっても誤嚥は起こるため、嘔吐をよく起こす人や胃ろうを作っている人は、誤嚥性肺炎の発症リスクが高いです。胃ろうとは胃に穴をあけてチューブを通し、そのチューブから栄養物を直接胃に送るという方法です。認知症や脳血管疾患で飲み込みが難しい人のほか、食道狭窄などで口から物が入れられない人に行われます。その際、胃に入れた栄養剤が逆流することで誤嚥が起こる危険性があります。
以上のようなリスク要因がある方は、とくに注意をして予防に励みましょう。
死に直結することもある誤嚥性肺炎ですが、嚥下障害や不衛生な口内環境など、発症原因は特定できているので対策も可能です。特に発症リスクが高いとされる高齢者の方は、ご紹介した予防法を日頃から実践し、発症を防ぎましょう。
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