記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日頃からお酒をよく飲む方であれば、注意すべきなのが「アルコール性肝障害」です。今回の記事ではアルコール性肝障害の具体的な症状や治療法について、段階別に解説していきます。
アルコール性肝障害は、アルコールの大量摂取を主な原因として肝機能に様々な障害が出てくる症状のことです。
そもそも、肝臓はアルコールを分解・解毒している臓器です。そのためアルコールを過剰に摂取し過ぎたりするとその機能に負担がかかり、アルコール性肝障害につながると考えられています。
アルコール性肝障害は、はじめは肝臓に脂肪が溜まってしまうアルコール性脂肪肝から始まります。すると次は、幹細胞に炎症が広がりアルコール性肝炎が起こります。そこで肝臓は、この炎症によるダメージを改善しようと幹細胞を修復させようとしますが、その過程において肝臓内の組織結合は増加するようになります。しかし一方でこの組織結合の増加は、アルコール性肝線維症を引き起こします。そして肝臓の線維がそのまま増加していくと、肝臓は硬くなり、従来の状態からはかけ離れた状態へと変化してしまいます。これが肝硬変と呼ばれる状態で、こうなると肝臓の機能はほとんど失われてしまっています。このような一連の流れが、ドミノ倒しのように連鎖的に発生するリスクがあるのがアルコール性肝障害です。
アルコール性肝障害の症状ですが、まずアルコール性脂肪肝の段階では目立った症状が出てこないことが少なくありません。疲労感や倦怠感、むくみ程度で済むことも多いです。しかしその後、アルコール性肝炎に進行してしまうと、先に挙げた症状の程度が重たくなったり、また顔や眼球が黄色くなる黄疸と呼ばれる症状が出てくるようになります。また肝臓の機能が少しずつ低下しているために、尿の色が濃くなることも比較的出やすい症状として挙げられます。
そしてアルコール性肝線維症の段階まできてしまうと、肝臓部分の痛みや発熱、嘔吐、下痢といった症状が出てくるようになります。そして最終的にアルコール性肝硬変にまで達すると、もはや肝臓はほとんど機能していない状態になります。そのため胃や腸を包む腹腔に水が溜まる腹水や深刻な下肢のむくみ、吐血と言った症状が出るようになります。また合併症として糖尿病を発症することも少なくありません。
アルコール性肝障害の治療ですが、まずアルコール性脂肪肝の段階であれば食事や運動を工夫することで治療が可能と言うことも多々あります。そこから先、アルコール性肝炎に至った場合もこれは同様です。ただし程度が進行している場合には、ステロイドの投与や血漿交換(病気の原因を含む血漿を破棄し、代わりに健康な血漿を置き換える方法)などが採用されることもあります。
しかし、アルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変にまで至ってしまうと、命の危機に直結する恐れもあります。一度このような状態になってしまった肝臓を回復させるのは難しいと言われているため、基本的には腹水などに対しての治療を行うのが主流で、人によっては肝移植も検討されます。
アルコール性肝障害の一連の流れを引き起こさないためには、とにかく日々の飲酒を気を付けるのがいちばんです。最も望ましいのは禁酒、断酒ですが、それが難しいと言う場合は適量、ビールであれば1日あたり500ml程度、日本酒であれば1合程度に留める、そして連続して3日はアルコールを摂取しない日を設けるのも望ましい対策です。
進行すると命を落とす恐れもあるアルコール性肝障害。肝臓の機能を取り戻すには、なるべく早い段階での治療が望まれます。お酒をよく飲む方で当てはまる症状があるという方は、できれば禁酒を開始し、病院で検査を受けることから始めましょう。