記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/21 記事改定日: 2018/11/8
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食道静脈瘤とは、食道にある静脈に瘤(こぶ)ができてしまうことです。小さいものは無症状のことがほとんどですが、大きくなって破裂すると大出血を起こしてしまいます。
この記事では食道静脈瘤の原因と症状について解説しています。
また、再発の可能性についても説明していきます。
食道の粘膜にある静脈に、瘤(こぶ)のようなものができることを食道静脈瘤といいます。
これは、静脈にかかる圧力が強くなり静脈の壁が膨らんでしまうことでできますが、食道静脈瘤が小さいうちは痛みなどが現れないことがほとんどです。
しかし、一度食道静脈瘤ができると、そこの部位に血液が集まるようになり、徐々に食道静脈瘤が大きくなってしまいます。血液の量が多い状態が続き、食道静脈瘤がどんどん大きくなってしまうと、最終的には、こぶが破れてしまい、大出血を起こしてしまいます。食道は、食べ物が通るところで、日常的に刺激を受ける部位です。何らかの刺激で食道静脈瘤が破裂して死に至る可能性もあります。
食道静脈瘤の発症は肝臓と関係しています。肝臓から出ている門脈という血管の圧力が強くなると、食道の静脈にも強い圧が加わることになるからです。
胃や腸の血液は門脈に集まって流れて、そこから肝臓を通って、心臓にもどるという道順をたどりますが、肝臓の中で血液中の有害な物質が除かれた状態で全身に戻ります。
肝硬変など肝臓の病気があるときには、肝臓の中を血液が通りにくくなり、血液がスムーズに肝臓に流れ込んでいかないので、門脈の血液の流れが滞った状態になります。そうすると、血液が胃や食道へ逆流するようになることで胃や食道の血液量が多くなり、血管への圧力が増大して静脈瘤ができてしまうのです。
食道静脈瘤は、肝臓に流入する太い静脈である門脈が何らかの原因で抵抗を生じ、肝臓へ流れる血流が低下することによって引き起こされます。肝臓は血流が非常に豊富な臓器であり、体を巡った血液が門脈を通って肝臓に流入します。しかし、この門脈に血流抵抗が生じると、本来なら肝臓に流入するはずの血液が行き場を失い、血液の逆流が生じてしまうのです。
その結果、食道などの細い静脈にも大量の血液が常に流れ込む状態となり、血管壁の薄い静脈はその抵抗に耐え切れず脆弱化して瘤を形成したり太く蛇行するようになります。これが食道静脈瘤の発症メカニズムです。
門脈に抵抗を生じる病気としては、肝硬変が最も多く、肝臓内の細い血管が閉塞することで生じる特発性門脈圧亢進症、アルコール性肝炎、肝がん、寄生虫感染などが挙げられます。
食道静脈瘤は破裂して出血するまでは、目立った自覚症状がありません。そのため、食道静脈瘤があることに全く気付かず生活していて、ある日突然大出血をおこし、それがもとで自分に食道静脈瘤があると気付く人も珍しくありません。
また少量の出血が起こり、出血した血液が消化器官を通って便に血が混じって出てくることもあります。出血してから時間が経って便に混じるので、血は黒っぽくタール状になって出てきます。大量に出血しても吐血として出なてこない場合には、下血として出てくることもあります。
食道静脈瘤の治療法は、出血しているときと、そうでないときで異なります。
出血をしているときには、出血を抑えることが一番大切です。点滴で輸液や輸血を行い、出血場所の止血ができないときには、チューブを入れて出血部位で風船を膨らまして、出血部の止血を行います。
出血していない状態では内視鏡治療を行います。
ひとつは、内視鏡でこぶの部分に硬化剤を注入して、静脈瘤を固まらせてしまう方法です。もうひとつは、内視鏡で静脈瘤がある場所まで進み、静脈瘤を縛ってとってしまう方法です。後者は安全性が高く、患者の負担が少ない治療法ですが、再発が多いというデメリットもあります。そのため、ふたつの治療を併用することもあります。
食道静脈瘤は治療を行ったとしても再発しやすいのが特徴です。特に、内視鏡で行う静脈瘤の結紮術は他の治療法に比べて簡便に行うことができますが、再発も多いとされています。
再発は、食道静脈瘤を引き起こす病気の治療が適切に行われなかったり、治療効果が不十分なことが原因となって引き起こされます。食道には多くの静脈があるため、静脈瘤を生じた血管の治療だけを行っても、門脈圧が亢進したままでは他の血管に静脈瘤ができたり、治療によって結紮した静脈瘤が大きくなってしまったりするのです。
再発を防ぐためにも、原疾患の治療を確実に行い、禁酒など生活習慣を改めることも必要です。
食道静脈瘤は肝硬変などの肝臓の病気が原因で発症します。しかし、食道静脈瘤自体にははっきりとした症状が現れないため、定期的にチェックして治療のタイミングを逃さないことが大切です。
肝臓の持病がある人は、定期検査を怠らないようにしましょう。
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