記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/28 記事改定日: 2018/12/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
黄色靭帯骨化症(おうしょくじんたいこっかしょう)とは、背骨を支える黄色靭帯が骨のように変化して、脊髄を圧迫する病気です。重度の麻痺に進行すると日常生活が困難になる可能性があります。この記事では黄色靭帯骨化症について解説しています。
黄色靱帯骨化症とは、脊髄(神経)の後ろにある黄色靱帯が、骨のように次第に硬く大きくなり、神経を圧迫して、下肢に症状をきたす病気です。足のしびれや、歩きにくさ、膀胱の働きが悪くなるといった症状が現れるようになります。
欧米人と比較して日本人では明らかに高頻度に発生しているとされ、特に40歳以上に発症頻度が高く、男性にやや多く見られる傾向があります。国の指定難病であり、根本治療の方法は確立されていません。
黄色靭帯が骨化すると、靭帯の柔軟性が失われるため背骨の動きが悪くなり、体の硬さ、背すじの凝りなどの変化が起こるようになります。その後痛みに加え、神経(主に脊髄)が圧迫され次のような黄色靱帯骨化症特有の脊髄症状が現れます。
重症になると歩行困難になり、日常生活に支障をきたすようになります。人によっては、道で転倒するなどの比較的軽い外傷にもかかわらず、その後、急激に四肢に(腕や脚のこと)麻痺が起こるなど、極めて重い症状に進行することもあるのです。
ただし症状の進行度合には個人差があり、数ヶ月から数年の経過で歩行が強く障害される場合もある一方で、軽い症状のまま長年過ごすケースもみられます。
気になる症状が現れた段階で、すぐに病院で検査してもらうことが重要になってきます。
黄色靭帯骨化症は、脊椎の中の「胸椎」と呼ばれる部位に好発します。胸椎は、12個の椎骨で形成されており、背中から腰のあたりの背骨を形成します。
胸椎を走行する脊髄神経が圧迫されることで、上肢や下肢など広い範囲に痛みやしびれ、感覚障害などの症状を引き起こします。
黄色靭帯骨化症がどのような原因で発症するかについては明確なメカニズムは解明されていません。現在、考えられている要因としては、ヒト白血球抗原の変異など遺伝的な要因などが挙げられています。また、若年患者の骨化した黄色靭帯にはデルマタン硫酸、高齢者ではコンドロイチン硫酸が多く含まれていることが分かっており、これらの異常蓄積を引き起こす何らかの原因によって発病することが示唆されています。
上述したとおり症状の進行がさまざまであり、経過を正確には予測できないことから、まずは慎重に経過観察しつつ、保存療法で症状を抑えて生活の質を保つことが治療の基本となります。
無症状で他の病気の検査などで偶然に発見された場合は、通常は治療をせず経過を定期的に観察することになることが多いです。ただし転倒などをきっかけに脊髄を損傷することもあるので、日常生活のなかでは気をつける必要があるでしょう。
また、症状が軽い場合には、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤、ビタミンB剤などの薬物療法で様子を見ることもあります。
しかし、神経症状が進行していると判断された場合は、さらに悪化する可能性が高いことが予想されるため、神経症状がそこまで重くなくても手術を検討することがあります。
神経症状が出現している状態は、脊髄自体にもとに戻らない変化(不可逆性変化)が生じている状態です。神経症状が出ている場合は、手術後に期待通りに症状が回復しないケースも多いといわれています。これは軽症であっても同様とされているため、治療を受けるときには留意しておきましょう。
骨化した黄色靭帯は、次第に大きくなって神経を圧迫し、重度の麻痺を引き起こす可能性があります。転んだときに急に麻痺が進むことがあるので危険です。日常生活で注意するためにも、しびれや力が入りにくいなどの症状に気づいた段階で、すぐに整形外科を受診するようにしましょう。
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