急性腎不全になったら、どんな治療をするの?

2017/12/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓の機能が短期間のうちに急激に低下してしまう「急性腎不全」。もしこの急性腎不全を発症してしまった場合、どんなふうに治療が行われていくのでしょうか?治療目的と併せて解説していきます。

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急性腎不全の発症メカニズム

腎臓には身体の中を巡った血液が集まっており、この毛細血管が集まっている部位を糸球体といいます。ここで血液の濾過が行われることで、身体にとって必要な栄養素などは体内に残り、不必要な老廃物や余分な水分が体外に出されるように調整されます。この機能が正常に保たれていることで体内のバランスがとれますが、何らかの原因で腎臓の機能が正常に働かなくなると、腎臓の機能が落ちていってしまいます。その時に1日~数週間といった短期間で急激に症状が進むのが急性腎不全です。

急性腎不全には、腎臓そのものの働きが悪くなるもの以外に、腎臓に流れ込む血液が少なくなることで起こるものと、腎臓からでた尿が正常に排出されないことが原因で起こるものがあります。

現われる症状について

急性腎不全を起こすと、尿の量が適正にコントロールできなくなるので、通常は尿が作られるのが抑制される夜間にも尿量が多くなり、トイレに起きることが増えます。夜間に尿量を抑えられている時には朝の尿の色が濃くなりますが、腎機能が低下して夜間にも尿量が増えるため朝の尿の色が薄くなります。

さらに病状が進むと、水分を適正に体外に出せなくなり、身体の中に水分が残ることでむくみや高血圧を起こし、尿量は減少します。また老廃物が身体に蓄積されるため、疲労感を強く感じたり、食欲不振、頭痛、吐き気といった症状があらわれます。重症になるとけいれんや意識障害が起こります。また、赤血球を作るホルモンが作られないことで貧血になりやすく、ビタミンDの活性化がされないことにより骨がもろくなるという症状がでます。

急性腎不全の治療目的とは?

急性腎不全は、早期に適切な治療を行えば悪化を防げる可能性のある病気です。

治療目的として挙げられるのは、まずは急性腎不全を起こしている原因を取り除くことです。何が原因で急性腎不全を起こしているのかを早期につきとめ、原因別に治療を行います。そもそも腎臓に病気がある時には、その病気そのものの治療が重要です。血流が不足している時には、輸液や輸血で血流を増やし、尿の排出を妨げているものがあれば、尿が正常に排出されるような治療を行います。

また、腎臓の機能が低下すると二次的な障害が起こる可能性があります。そのため、腎機能を補う治療を行うことで、他の臓器への悪影響を防いでいくことも、治療目的のひとつです。

どんな治療を行うの?

急性腎不全の治療は大きく分けて食事療法と薬物療法、透析です。

まず、食事療法は身体に入る水分や栄養素をコントロールすることで腎臓の負担を軽くするものです。高カロリー食をとって腎臓への栄養補給をします。そして塩分とたんぱく質は制限して腎臓の負担を減らします。

薬物療法では尿量を増やす利尿剤を処方したり、血圧を上げて腎臓への血流をよくするために昇圧剤を使います。血圧が高くなり過ぎている時には降圧剤を使用して血圧をコントロールします。

なお、進行度により適切な治療法が変化するので、病状を見ながら治療法を決めていく必要があります。これらの治療を行っても病状の改善が見られない時には、透析を行い腎臓の機能を補います。

おわりに:急性腎不全の原因や症状に応じた適切な治療を

急性腎不全を治療する上では、急性腎不全を引き起こしたそもそもの原因を突き止め、その原因に沿った治療を進めていくことが重要になります。原因や症状の進行度に応じて適切な治療法は異なるので、詳しくは主治医と相談していきましょう。

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