記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
胸郭出口症候群とは、腕を上に上げた状態でいると指がしびれたり手がだるくなったりする整形外科疾患です。この記事では胸郭出口症候群の原因と検査方法について解説しています。肩こりや猫背が多い現代人に多いといわれる障害です。改善するための参考にしてください。
胸郭出口症候群は、鎖骨の下をとおる末梢神経の束や腕や手指に行く血管(鎖骨下動脈・静脈)が圧迫されることで発症する病気です。
主な症状として、脱力感、上肢のしびれ、感覚障害、首や肩のうずくような痛み、手の血行不良(冷え、だるさ)、握力低下や細かい動作がしにくいといった運動麻痺などが起こります。
生まれつき首が長くなで肩の女性がなることが多く、また、腕を上げた状態で仕事をしたり重い物を持ち運ぶ労働者の方によくみられ、ピークは20歳代とされます。
胸郭出口症候群は、下記の4つの原因があります。
斜角筋によって腕神経叢や血管が圧迫されることで起こります。斜角筋とは、首の左右それぞれの前外側に付く3つの筋肉です。前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋がありますが、前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋隙)を通る神経や血管が圧迫されて生じます。
日常生活における姿勢のアンバランスなどで斜角筋に負担を掛け続け、斜角筋が過緊張したことで発症すると考えられています。
肋骨のなり損ねのような骨が第7頸椎の横からでていることが原因で起こる疾患です。これは、本来第7頚椎の横突起にあたる部分が変形して肋骨のようになってしまうために起こります。
前腕および手の痛み、しびれが小指側に偏っているのが特徴です。腕の皮膚が白っぽくなったり、青ざめたりというチアノーゼ様変色、さらには腕に力が入らない、などの弊害も生じることがあります。
肋骨と鎖骨の間を通る血管や神経が鎖骨の下で圧迫されることにより発症します。習慣性の頸肩腕過労による血行不良、姿勢や老化などによる骨格の変位、怪我などで鎖骨や肋骨を骨折した後の変形、職業性の筋膜過労といった、後天的な理由が原因です。症状としては、肩、腕、手、指や背面に痛みやしびれなどが現れます。
過外転症候群ともいわれています。小胸筋は、胸の前面にある筋肉で、大胸筋の下にある筋肉です。小胸筋症候群になると、徐々に指先や手のしびれ、だるさ、冷えが出てきたりします。さらに悪化すると、指先や手の感覚異常、力が入りにくいなどの症状も現れます。
胸郭出口症候群を確認する方法として、5つの診断テストが行われます。
痛みがある腕を後下方に引っ張り、手首の親指側にある橈骨動脈(手首の脈をとる場所)の脈拍が減弱したり、消失した場合に陽性となります。この検査では、主に肋鎖症候群を鑑別します。
痛みがある腕の方向に頭を回転させ、あごを上げて深呼吸をすると、痛みのある腕の橈骨動脈の脈拍が減弱したり消失した場合に陽性になります。この検査では、主に斜角筋症候群を鑑別します。
肩の関節と肘の関節をそれぞれ90度曲げて保った状態で、橈骨動脈の脈拍を確認したときに、脈拍が減弱や消失した場合が陽性です。陽性の場合、肋鎖症候群や小胸筋症候群が疑われます。これは最も陽性率の高い検査方法とされていますが、偽陽性も多いともいわれているため、通常は他のテストも同時に行います。
肩の関節と肘の関節を90度の曲げた状態を保ち(ライトテストと同様)、指の曲げ伸ばしを3分間繰り返します。3分間続けられない場合は陽性となり、肋鎖症候群や小胸筋症候群が疑われます。
鎖骨の上部周辺にあるくぼみを形成している斜角筋を指で圧迫すると、局所の疼痛と上肢の放散痛を伴う場合、陽性となり、斜角筋症候群が疑われます。
首や肩を特定の姿勢にした時にしびれや痛みがはしったり、手指の色の変化が現れたり、つり革を持っているときに手がだるくなったりした場合は胸郭出口症候群の可能性があります。原因が複数あり、それぞれが関わりあって発症していることもあるため、自己判断でセルフケアしても改善しないケースが多いです。整形外科を受診して原因をつきとめ、適切な治療を受けるようにしましょう。