記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/11 記事改定日: 2020/5/1
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インスリノーマとは、膵臓のβ細胞に腫瘍ができることで低血糖状態が続いてしまう病気です。ほとんどの腫瘍が良性とされていますが、低血糖によるリスクがあるため注意が必要な病気です。この記事では、インスリノーマの治療と低血糖に対する処置について解説していきます。
インスリノーマとは、膵臓(すいぞう)に腫瘍が発生し、血糖値を下げるインスリンを過剰に分泌させてしまうことで慢性的な低血糖状態に陥る病気です。インスリノーマによる腫瘍はがん化するリスクがありますが、90%は良性のものといわれています。
インスリノーマは、インスリンの過剰な分泌によって、低血糖を引き起こし人体を危機的な状態に陥らせてしまいます。
低血糖状態はときに人間の命を危機にさらしてしまいます。血液中の血糖値が高すぎることは健康によくないと多くの人はご存知でしょう。
しかし低血糖が続くことも、生命を維持するエネルギーが不足してしまうことにつながり、体に良くはないのです。
インスリノーマでは、動悸や発汗、思考能力の低下や昏睡状態、異常行動などの症状を引き起こします。
脳は血糖を多く消費する臓器です。特に低血糖状態になると、脳は真っ先にダメージを受けてしまいます。
インスリノーマは上述したように低血糖状態を引き起こします。脳のエネルギー源はブドウ糖であるため、低血糖状態が続くとダメージを受けりことがあります。
とくに、血糖値が50㎎/dL未満になると、痙攣や意識障害など重篤な神経症状が現れることもありますが、基本的には低血糖の症状が現れた段階で糖分補給を行えば、脳へ障害を残すことはほとんどないとされています。
ただし、適切な対処がされないまま著しい低血糖状態が続くと意識障害などが続くことがあり、命に危険が及ぶこともあります。
インスリノーマは、膵臓内でインスリンと呼ばれるホルモンを産生するβ細胞にできる腫瘍です。上で述べたように、β細胞に腫瘍ができることでインスリンの分泌量が増加し、血糖値が低くなってしまうと考えられています。
インスリノーマの発症メカニズムは現在のこと明確には解明されておらず、約8割は突然発症することが知られています。
一方、残りの2割は遺伝子の異常によって引き起こされる「多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)」と呼ばれる病気の一症状として発症することが分かっています。
そのほかにも下垂体・副甲状腺に同時に腫瘍が形成されることが多く、ホルモン分泌異常によるさまざまな症状が現れます。
血液検査で、空腹時に血中のインスリン成分が高く、血糖値が正常値よりも低い状態のときにインスリノーマが疑われます。
ただし、体質や食習慣は人によって値は違ってくるため、空腹時にはインスリノーマの症状がそれほど頻繁に出ないケースもあります。その場合は入院検査で絶食状態のときにインスリノーマの症状が現れるかを改めて確認することもあるでしょう。
血液検査でインスリノーマの可能性があると判断された場合は、画像検査で膵臓にあるβ細胞の腫瘍の位置を特定します。画像検査には、超音波検査機やCTスキャン、PET(陽電子放出断層撮影)などが用いられます。
ただ、腹部からの超音波検査のような「身体の外」からの画像診断では、インスリノーマを見つけるのは難しく、超音波発生装置のついた内視鏡を身体の消化管内部へ入れて検査するほうが発見しやすいです。
インスリノーマは、外科手術で腫瘍を取り除いて治療するのが一般的です。手術による治癒率は約90%といわれています。
治癒しない場合や手術できない事情がある際は、ジアゾキシドなどの内服薬によって治療を目指すこともあります。
インスリノーマによるインスリンの過剰分泌では、突然低血糖状態となることも少なくありません。
低血糖になると、強い空腹感や倦怠感、冷や汗、震えなどの初期症状が生じます。重度になると集中力や注意力の低下を引き起こし、意識障害や痙攣などを生じることもあります。
速やかにジュースや飴、砂糖などを口にして体内にブドウ糖を補給しましょう。また、急激な低血糖状態となって意識消失などが生じた場合には、すぐに救急車を呼んでください。
早い段階で初期症状に気づけるかどうかが大切になってくるので、普段から体の変化には注意しましょう。
インスリノーマはめずらしい病気であり、症状が出ることもまれであるといわれています。しかし、空腹時には失神や異常行動などを引き起こすおそれがあることは事実ですし、日常生活を送るうえでは低血糖が起こっていないか常に注意する必要があります。思い当たる症状がある人は早めに専門の医療機関に相談しましょう。
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