記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
「ダイエットを始めたら頭痛が増えた」「ダイエットをするとめまいが起こる」と悩んでいる人はいませんか?
「ダイエットと頭痛には何の関係もない」と思うかもしれませんが、ダイエットがきっかけで頭痛が起こることもあるのです。この記事では、ダイエット中の頭痛やめまいの原因と予防対策、頭痛が起こったときの対処法を解説します。
ダイエット中に頭痛が起こるおもな原因は、血糖値の低下です。
糖質は、体と脳のエネルギーになる大切な栄養素です。極端な食事制限や糖質制限によるダイエットは、糖質が不足しやすくなるため、低血糖を引き起こすことがあります。
低血糖の状態になると糖質をエネルギーとして使えなくなるため、不足したエネルギーを補おうと、糖質の代わりに脂肪をエネルギーに変え始めます。脂肪をエネルギーに変え始めるときに「ケトン体」という物質ができますが、ケトン体が過剰に増える「ケトーシス状態」になると、アセト酢酸(ケトン体のひとつ)が血液中に増えて体が酸性になり、頭痛や吐き気が起こりやすくなるのです。
低血糖の状態が続くと、震えやめまい、目のかすみ、脱力などの症状が現われ、重症になると、意識の低下やけいれんを引き起こすこともあります。
ダイエット中は、ビタミンやミネラルなどの「糖質以外の栄養」も不足しやすいです。栄養不足や栄養バランスの乱れは、以下で紹介する不調の原因となり、頭痛を引き起こすことがあります。
ダイエット中に極端な食事制限をすると、鉄分やたんぱく質、ビタミンB群、ビタミンCなどが不足して、貧血(鉄欠乏性貧血)になることがあります。貧血の状態が続くと、赤血球が少なくなって体に必要な酸素を運べなくなってしまい、頭痛やめまい、疲労感などの症状が起こることがあります。
極端な食事制限は、ホルモンバランスや神経伝達物質の乱れの原因です。女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」や神経伝達物質の「セロトニン」などの分泌量が減少すると、頭痛が起こりやすくなる場合があります。
また、ホルモンバランスの乱れは自律神経の乱れの原因にもなります。自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスよく切り替わることで、血圧や呼吸数、心拍数、体温、消化、体液分泌、水分と電解質のバランスなどをコントロールしています。自律神経のバランスが乱れると、血管や神経、体液バランス、筋肉の緊張などに影響し、頭痛を引き起こすことがあります。
極端なダイエットによる低血糖は、頭痛以外の症状を引き起こすこともあり、放置すれば重症化することもあります。低血糖は、初期症状が現れた段階で適切にブドウ糖を摂取することで改善しますので、悪化しないようにするためにも「なるべく早く対処する」ことが大切です。
低血糖の症状が進行して意識に変調が起こると、転倒をきっかけに大ケガをすることがあります。過度な糖質制限や過度な食事制限をする「極端なダイエット」をしないことが一番大切ですが、以下で紹介する「低血糖の症状」に気づいたときは、なるべく早めに(初期症状のうちに)糖分を補給しましょう。
低血糖はチョコレートや飴など、糖分を含むものを食べることで改善できます。初期症状のうちであれば少し補給するだけで回復しますので、飴やチョコレートを小分けにして常備するようにしましょう。ただし、糖分の摂りすぎはダイエットの妨げになるだけでなく、血糖値スパイクを引き起こすこともあるので注意が必要です。
低血糖による頭痛が起こった場合は、一般的な頭痛薬を使用してもとくに問題はありません。しかし、頭痛薬は症状を一時的に緩和するものであり、頭痛を根本的に治すものではありません。頭痛薬の中には胃炎や胃潰瘍の原因になるものがあり、多用することで薬物乱用頭痛を引き起こすこともあります。安易な多用は避けるようにしてください。
また、ほかの薬を服用している人が頭痛薬を飲むと、飲み合わせによっては副反応による望まない症状が起こる場合があります。医師から処方された薬を服用している、常用している薬がある場合は、安易に市販薬を使用せず、医師や薬剤師に相談してから飲むようにしましょう。
ダイエットでは、バランスのよい食事と適度な運動を心がけた「健康的な生活を送る」ことが大切です。バランスのよい食事と適度な運動は、ダイエットだけでなく、ホルモンバランスや自律神経のバランスを整えることにも役立ち、ダイエット中の頭痛の予防にも役立ちます。
最近は、糖質制限や炭水化物制限を中心とするダイエット方法がすすめられることが多いですが、糖質や炭水化物の過度な制限は、低血糖だけでなくさまざまな不調を引き起こす原因になります。
極端な食事制限はせず、主食(ご飯、パン、いも類など)、野菜・海藻類、肉類、魚類などをバランスよく食べ、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類などの栄養バランスが乱れないように心がけましょう。
主食を低GI食品や低GL食品にすると、血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。低GI食品や低GL食品は、ダイエットの助けになるだけでなく、血糖値の影響による頭痛の予防にもつながるのでおすすめです。
また、食事制限だけでダイエットを成功させようとすると、筋肉量が減少して基礎代謝が低下し、体重が落ちにくくなったりリバウンドしやすくなったりすることがあります。体重が減らないからと食事量や糖質の量を過度に減らせば、低血糖による頭痛が起こりやすくなる可能性があります。
1日20分以上の有酸素運動(ジョギング、ウォーキング、水泳など)と適度な筋肉トレを習慣化すると、基礎代謝が上がり、痩せやすい体質になりますので、適度な運動を習慣化しましょう。
貧血による頭痛を予防するには、鉄分を積極的に摂ることが大切です。推奨される1日あたりの鉄分摂取量は、成人男性で7.5mg、月経のある女性で11mg(月経のない女性は6.5mg)になります。女性は月経(生理)時に鉄分が不足しやすく、妊娠中や授乳期間中にも注意が必要です。とくに意識して摂るようにしましょう。
鉄分は、牛肉の赤身、レバー、カツオ、イワシ、ほうれん草、ひじきなどに多く含まれています。また、鉄分はたんぱく質やビタミンCと一緒に摂ると吸収されやすくなるので、大豆製品や乳製品、卵、キャベツ、ブロッコリー、サツマイモ、かんきつ類、イチゴなどもメニューに取り入れるようにしてください。
過度な食事制限や糖質制限は、基礎代謝の低下を引き起こしてリバウンドの原因になることがあり、長期的に見れば、体重増加や肥満を悪化させる原因になりかねません。また、過度なダイエットは頭痛などをはじめとする体調不良の原因にもなります。ダイエット中の頭痛は血糖値の低下が原因で起こることが多く、ひどいときには意識障害やけいれんといった深刻な症状を引き起こすことがあります。
ダイエットの成功とは、一時的に体重を減らすことではなく、適切な体重を維持することです。バランスのとれた食事と適度な運動を長期間続けて無理なく体重を減らしていくほうが、負担をかけずに長続きするダイエットになります。頭痛などの体調不良をさけるためにも、無理のない適切な方法でダイエットをしましょう。
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