記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/11/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断などでメタボリックシンドローム(メタボ)やメタボ予備軍と診断された場合、必要なってくるのが食事の見直しや運動によるダイエットです。しかし、運動に慣れていない人や忙しくて長時間運動をする時間がとれない人は、どのような運動をすればいいか悩んでしまいますよね。
今回は効率よくメタボ解消が目指せる運動方法と、おすすめの運動メニュー、運動のコツについて解説します。
メタボとは、「内臓脂肪症候群」とも呼ばれるメタボリックシンドロームを略した言葉です。その名の通り、「内臓脂肪を減少させること」が、メタボ解消のポイントになってきます。
内臓脂肪を燃焼させるには運動がかかせません。運動には、有酸素運動と無酸素運動がありますが、メタボ解消には脂肪の燃焼効果のある有酸素運動に重点を置いて運動メニューを組むことが大切です。
ただし、脂肪を効率よく燃焼させるためには、基礎代謝を上げる必要があります。基礎代謝とは、何もせずにじっとしている間も消費される、生きていくために最低限必要なエネルギーのことです。
基礎代謝が高い人はエネルギーを消費しやすいので脂肪を燃焼しやすく、痩せやすく太りにくい体質と言えます。対して、基礎代謝が低い人はエネルギーを消費しにくいので脂肪が燃焼しにくく、痩せにくく太りやすい体質と言えます。
メタボ解消のためには、「痩せやすい太りにくい体質作り」が役立ちます。基礎代謝を上げるためには、エネルギーの消費率が高い筋肉の量を増やすことが効果的です。メタボを効率よく解消するためには、脂肪燃焼効果のある有酸素運動とあわせて、筋肉量を増やす効果がある無酸素運動に取り組むことも大切になってきます。
効率よく脂肪を減らすには、運動メニューの順番に気を配ることも大切です。運動のスケジュールや体調に無理がないようであれば、「筋トレ→有酸素運動」の順番で運動メニューをこなしましょう。
筋トレをすると、アドレナリンやノルアドレナリン、成長ホルモンの分泌が促進され、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)を活性化させます。ホルモン感受性リパーゼとは、脂肪細胞内にある中性脂肪を脂肪酸(遊離脂肪酸)とグリセリンに分解する酵素です。
ホルモン感受性リパーゼによって中性脂肪が分解されると、血中の脂肪酸が増えます。この段階で有酸素運動を行うと、血中の脂肪酸は筋肉を動かすエネルギーとして消費されます。また、通常、中性脂肪は有酸素運動を20分以上行ってから分解されますが、無酸素運動でHLSを活性化すると、通常よりも早い段階で中性脂肪が分解されます。
つまり、筋トレ→有酸素運動の順番で運動することで、有酸素運動の脂肪燃焼効果が高められることになり、結果として効率よくメタボ解消を目指せることになります。ただし、筋トレで中性脂肪を分解してできた脂肪酸は、有酸素運動で燃焼させないと脂肪は減らせません。ダイエットやメタボ解消を目的にする場合は、すぐでなくてもかまいませんので、筋トレ後に有酸素運動を行いましょう。
メタボ解消には、1日30~60分の中強度の有酸素性運動を週3日以上することがすすめられます。中強度の有酸素運動の脈拍の目安は、1分間に80回〜120回の間です。運動に慣れている人や50歳未満の人は1分間に100回~120回、運動に慣れていない人や高齢者は100回以内を目安にするとよい、とされています。
体感的には、運動に慣れていない段階では「やや楽である」と感じる程度、運動に慣れてきた段階では「ややきつい」と感じる程度が目安です。「息が弾む程度」「会話できる程度」を目安にしてもよいでしょう。
ただし、運動をしたときのつらさには個人差があります。まずは運動を習慣化することが大切ですので、最初は「楽である」と感じる程度からでもかまいませんし、「1日10分余計に歩く」ことから取り組み始めてもかまいません。できる範囲から取り組み始め、慣れてきてから少しずつ運動負荷や運動時間を増やすようにしましょう。
有酸素運動であれば、脂肪燃焼効果に運動の種類による違いはないとされています。日常生活では以下の有酸素運動が取り組みやすくおすすめです。雨の日や猛暑の日など、外出が難しい場合は、室内でできる有酸素運動もありますので、うまく取り入れましょう。
ウォーキングはマイペースにいつでも始められる、おすすめの有酸素運動です。ウォーキングに慣れていない人は、いつもよりも大股で、少し早く歩くようにすると、適度な有酸素運動になりやすいです。慣れてきたら、脈拍数や呼吸の状態を確認しながら、少しずつペースを上げていきましょう。
有酸素運動で脂肪が燃焼され始めるのは、運動を開始してから20分後とされていますが、1日の運動時間の合計が20分超えてからでも脂肪は燃焼されます。1回で30分の運動ができない場合は、10分を3回ずつなど、小分けにして運動するようにしましょう。
ジョギングとは、普通に会話できる程度の状態で、時速5km~6㎞のペースで走ることを言います。スロージョギングとは、ジョギングよりも少し遅い3km〜5kmの速さでゆっくり走ることであり、笑顔で会話できる状態が目安になります。
スロージョギングも、運動初心者におすすめの取り組みやすい有酸素運動です。あまりきついと感じることなく効率よく脂肪を燃焼できるので、ウォーキングに慣れてきた人、ウォーキングでは物足りなくなった人は、スロージョギングを試してみましょう。
ただし、ジョギングに慣れていない人は、慣れてくると無理なペースになりやすいです。誰かと一緒に取り組んだり、スマートウォッチなどで呼吸数と心拍数を確認したりするなどして、適切なペースを保てるようにしましょう。
水泳は全身を動かす運動のため、有酸素運動のなかでもカロリー消費率が高く、全身の筋トレにも効果的とされています。また、水の浮力で膝や腰へなどの関節の負担を減らせるので、高齢者や関節に不安を抱える人にもおすすめです。泳げない人は、水中ウォーキングでも効果が得られます。
慣れている泳法でかまいせんが、うまく息継ぎできないときは無酸素運動になりやすいので注意が必要です。水泳に慣れていない人がクロールやバタフライで長時間泳ごうとすると、すぐ疲れてしまいますし、息継ぎも乱れやすいです。水泳に慣れていない人は、平泳ぎでゆったり泳ぐことから始めるか、水中ウォーキングから始めることをおすすめします。
階段昇降は、普通に歩いたときと比べると、約2倍程度のエネルギーを消費するといわれています。また、階段昇降はハーフスクワットと同程度の筋トレ効果があるとされることから、有酸素運動と筋トレの両方の効果が期待できるというメリットもあります。
ちょっとした空き時間や休憩時間に取り入れやすい運動ですので、仕事などで忙しい人にはぜひ取り入れて欲しい有酸素運動です。
メタボの人は内臓脂肪が過剰に溜まっている状態であり、メタボ解消には内臓脂肪を減らす必要があります。内臓脂肪を減らすには有酸素運動が必要になりますが、ただやみくもに運動をしてもうまく脂肪が減らせない場合もあります。メタボ解消のためには、自分にあった適切なペースの有酸素運動を、少しずつ負荷と時間を増やしながら継続することが大切です。
筋トレ→有酸素運動の順番で運動する、水泳や階段昇降は効率が良いなど、いろいろとアドバイスはありますが、まずは無理せず楽しんでできる運動から取り組み始めましょう。
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