記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
アルコール性肝障害は、お酒の飲みすぎが原因で発症する肝障害です。治療においては禁酒などのアルコール摂取制限が必要になりますが、その他にも注意点が様々あります。この記事ではアルコール性肝障害の食事療法について解説しています。
アルコール性肝障害とは、アルコールを長期間、大量に飲むことによって肝機能に障害がおこる病気です。肝臓はアルコールを分解・代謝する機能を担っていますが、アルコールを長期間大量に摂取することで、その機能に異常をきたしてしまいます。
アルコール性肝障害は大きく3つの段階で進行します。まずは、アルコール性脂肪肝から始まります。これは肝細胞に脂肪がたまり、30%以上が脂肪化している状態です。次に肝臓に炎症が起こるアルコール性肝炎になり、さらに悪化するとアルコール性肝硬変になります。肝硬変とは、肝臓が硬く変化し、肝機能が壊れてしまった状態です。肝硬変になると、最悪の場合は肝臓癌に発展し、命に危険が及びます。
アルコール性肝障害の治療には大きく3つの方法があります。それは、禁酒、食事療法、運動療法です。アルコールの摂取による肝障害ですので、禁酒は重要な治療法です。さらに食事療法も有効な治療法になります。アルコールの過剰摂取により、食べ過ぎてしまったり、逆に通常の食事がおろそかになったりし、栄養バランスが崩れてしまっている場合があります。バランスの良い食事を摂ることで肝臓への負担を軽減します。
アルコール性肝障害の治療の基本は、アルコールや食事をしっかりとコントロールして規則正しい生活習慣を送ることが重要になります。GOT(AST)、GPT(ALT)という肝機能を表す数値が基準値を超えている場合には禁酒が必要です。お酒を飲む場合は、1週間に2日程度休肝日を設けるようにしましょう。
食事療法については栄養バランスに注意が必要です。特にカロリーの過剰摂取に気をつけ、脂肪の摂取量はできるだけ抑えるようにしてください。
アルコール性肝障害における食事療法においては、まず、穀物を十分に摂りましょう。食物繊維が豊富で糖の吸収が遅くなり脂肪がつきにくくなるため、未製粉のものが望ましいです。肝機能に障害がある場合はビタミンやミネラルが不足しがちになってしまうので、野菜や果物、海藻でビタミンやミネラル、食物繊維をしっかりと補充しましょう。さらに、肝細胞の再生を促進するため良質なたんぱく質を摂るようにしましょう。ただし、総カロリー量には十分気をつけてください。
避けたい食品としては、上記でも触れている脂肪が挙げられます。特に加熱した油は過酸化しているので注意が必要です。過酸化物は肝臓にとって毒となってしまうので避けましょう。また、合成添加物のような人工合成物は肝臓で処理できないため、肝臓への負担が大きくなるので避けるようにしてください。
アルコールは、適量であれば、ストレス発散やコミュニケーションの円滑化など、メリットも大きいですが、飲み過ぎてしまうと肝臓へ大きな影響を与えてしまいます。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、障害がおこったとしても初期のうちは基本的には症状が現れません。具体的な症状が出てきたときには病状が大きく進行しているということも多々あります。飲み過ぎに十分に注意しながら、うまくアルコールと付き合い、健康な生活を送りましょう。