記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/8 記事改定日: 2018/12/6
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
深部静脈血栓症とは、脚部を通る静脈に血栓が詰まることで、太ももやふくらはぎが赤黒く腫れ上がったり、最悪の場合は命を落とすことにもつながる病気です。
この深部静脈血栓症は、どうすれば予防できるのでしょうか?
発症リスクが高い人の特徴と併せて解説します。
深部静脈血栓症とは、股関節より下の脚部を通っている静脈血管に、血栓(血のかたまり)が詰まって塞がったり、血液の通り道が非常に狭まったりすることをいいます。
深部静脈は足から心臓へ血液が戻っていく重要な血管ですので、そこに血栓が詰まったときの体への影響は小さくありません。
太ももや膝、ふくらはぎが赤黒く腫れあがったり、脚の皮膚表面に赤い発疹ができたり、血管の筋が浮き出て見えたりしたときは、深部静脈血栓症にかかっている可能性があります。
痛みやかゆみなどの自覚症状が出ないままに進行してしまう危険もあり、注意が求められます。
もし、深部静脈にできた血栓が血流に乗って肺の血管に到達すると、「肺血栓塞栓症」となり、動悸や呼吸困難、失神などを引き起こし、そのまま絶命するおそれもあるのです。
血管の内部に血栓が詰まるリスクは、「血流の停滞」と「血管や血液の障害」とが複合的に作用することで高まっていきます。
まず「血流の停滞」は、肥満の人や高齢者、妊婦、長期入院患者など、あまり身体を動かさずに横になっていることが多い状況で起きやすくなります。国際線の航空機で、何時間も同じ姿勢で座っていると発症する可能性がある「エコノミークラス症候群」も、血流の停滞によって起こる急性の深部静脈血栓症です。
なお、「血管や血流の障害」は、外からの衝撃による負傷や骨折、あるいはカテーテル挿入手術などをきっかけに血管が傷ついたり、脚の手術やがんなどの影響で血液が凝固しやすい状況になったりすることです。
これらの2つの条件に当てはまる人は、特に深部静脈血栓症の発症リスクが高いので注意しましょう。
深部静脈にできた血栓が血流に乗って肺に到達すると、生命の危機に陥りかねないので、大腿部の静脈に血栓が生じないよう予防することが非常に大切です。
深部静脈血栓症は、長時間同じ姿勢でいたり、運動量が極端に少なくなると発症するリスクが高くなります。特に、術後は血液中の凝固因子が増加して血液が固まりやすい状態であったり、水分不足になりがちですので、ベッドに横になったままの状態が続くと深部静脈血栓症を発症する危険があります、
術後の痛みがひどい場合でも、深部静脈血栓症を予防するためになるべく早く離床するようにしましょう。
肥満や高齢者の方は散歩程度でもいいので、日常的に運動して脚の筋肉を使うよう心がけましょう。妊婦さんや入院患者さんなど、どうしても動けない状況にある人は、足先だけでもたびたび動かしてみたり、枕を脚の下に置いて高くし、血液が循環しやすくするのも有効です。
また、静脈ポンプや弾性ストッキングなどを装着する理学療法や、ワーファリンやヘパリンなどの抗凝固薬を服用、注射して血栓の生成を食い止める薬物療法もあります。ただ、抗凝固薬を使っているときに出血すると止血が難しくなりますので、転んでケガをしたりしないよう細心の注意を払いましょう。
ふくらはぎなどの脚部のマッサージは、深部静脈血栓症の予防に役立ちます。しかし、すでに深部静脈血栓症を発症している場合は、マッサージによって脚部に留まっていた血栓が肺などに流れるのを促してしまうことがあるので禁忌とされています。
ふくらはぎのみが腫れている・痛み・だるいなどの症状があるような場合は深部静脈血栓症を発症している可能性がありますので、自己判断でマッサージをするのは控えましょう。
また、これらの症状がない場合でもマッサージ中に息苦しさや手足の痺れ、めまいなどの症状が現れたときはマッサージを中止して、速やかに医師に相談して下さい。
深部静脈血栓症は、同じ姿勢を保ちがちで、脚をあまり動かす機会のない人に起きやすいです。痛みや腫れを伴うこともありますが、自覚症状が起きないまま静かに進行してしまう場合も少なくありません。
血栓が肺に回れば呼吸困難などにより命を落とすリスクもある、決して見過ごせない症状ですので、日常的な予防に努めましょう。
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