記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
花粉症を風邪と勘違いし、治療開始が遅れてしまうケースはかなり多いといわれています。実は花粉症でも咳や熱などの症状が出ることがあるのです。
今回の記事では、花粉症の特徴的な症状や症状ごとの薬の使い分けについて解説していきます。
花粉症の症状というと、鼻づまりや目のかゆみを思い浮かべる方が多いかと思いますが、実は咳も特徴の一つです。花粉が鼻や口から侵入すると、体は花粉を追い出そうとして鼻水を出します。しかし鼻水は鼻から出るだけでなく、喉を経由して流れていってしまうこともあるので、この喉への刺激が原因で咳が出ることがあるのです。
花粉症になると、花粉が喉に張り付いて炎症が起こることで咳や喉のかゆみを誘発することがあります。また、鼻の詰まりすぎによる喉の乾燥によって、喉のかゆみや痛みが引き起こされることも少なくありません。喉がかゆいというより、いがらっぽさを感じることもあります。
目に花粉が入ると、目の粘膜内にある肥満細胞がヒスタミンを放出し、血管や神経を刺激することで目の充血やかゆみ、流涙、目の痛みといった症状を起こすようになります。この状態は季節性アレルギー結膜炎と呼ばれるものです。白目の血管が拡張して赤く見えたり、目がかゆかったりする場合は花粉症の可能性が高いです(特に目のかゆみは、花粉症の約8割に見られる症状と言われています)。
花粉によってアレルゲンへの防御機能が働きすぎると、免疫力が低下し、発熱を引き起こすことがあります。風邪との区別が難しいですが、花粉症で出る熱は微熱で、外出時に出るのが特徴です。
ただ、子供のうち、5〜9歳の約10%、10〜19歳の約30%がスギ花粉症を発症しているという統計があります(これは、大人の発症率とほぼ変わらない割合です)。
特に子供は症状をうまく言葉で伝えられないこと、スギ花粉が飛散する1〜5月がインフルエンザの流行期間と重なることから、発症が見落とされやすい傾向があります。
子供の花粉症の発見には、風邪やインフルエンザで見られないような花粉症特有の症状が出ていないかどうか、周囲の大人がよく注意して見てあげ、38℃以上の高熱が見られる場合は風邪やインフルエンザを疑い、すぐに病院を受診させましょう。
花粉症になると多くの場合、透明でサラサラとした鼻水が大量に流れ出るようになります。これによる鼻づまりで口呼吸になってしまったり、睡眠不足になってしまうケースも少なくありません。また、くしゃみが一日に何回も出る場合も要注意です。
こういった鼻の不快な症状が1週間以上継続する場合や毎年同じ時期にこのような症状が出る場合は、花粉症の可能性があります。
原因を調べるためにも、一度病院で検査してもらいましょう。
花粉症には、アレルギー反応そのものを抑える抗アレルギー薬やアレルギー症状を引き起こす物質を抑える抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン薬などの治療薬が使用されます。
一般的には、くしゃみや鼻水、目の充血などのアレルギー症状がみられる場合には副作用の少ない抗アレルギー薬が使用されます。抗アレルギー薬の服用で十分な治療効果が得られない場合には抗ヒスタミン薬が使用されますが、眠気などの副作用を生じやすいので注意が必要です。また、鼻詰まりがひどいタイプでは粘膜のむくみを改善する抗ロイコトリエン薬が使用されることもあります。
薬のタイプも様々で、内服薬の他にも点眼薬や点鼻薬などがあり、それぞれの症状に合わせたものが使用されます。
ただし、花粉症は薬を使用してもすぐに症状が改善しないことも多々あり、症状が改善しない場合は薬の種類を変更することも必要です。また、中には花粉症以外の原因が潜んでいることもありますので、症状が改善しない場合は漫然と服用を続けずなるべく早めに医師に相談するようにしましょう。
咳や発熱が見られると風邪だと思ってしまう方は非常に多いですが、目の充血や喉のかゆみなどの症状も伴う場合は、花粉症の可能性が高いです。
特に子供の花粉症は発見が遅れやすい傾向があるので、頻繁に目をかくなどの気になる症状が見られたら、早めに専門外来でアレルギー検査を受けるようにしましょう。