膀胱炎が悪化すると腰痛や発熱も?気をつけたい腎盂腎炎の症状とは?

2018/4/23 記事改定日: 2020/10/5
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「膀胱炎」の症状というと、頻尿や排尿痛などを思い浮かべる方が多いかと思いますが、膀胱炎が悪化すると腎盂腎炎を発症し、「腰痛」を引き起こす可能性があります。この記事では、膀胱炎と腰痛の関連性や、腎盂腎炎の注意点、治療法などについて解説していきます。

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膀胱炎の主な症状は?腰に痛みを感じることはある?

膀胱炎というと、頻尿や残尿感というイメージが強いかもしれませんが、痛みを感じることもあります。この痛みは、炎症を起こした膀胱が排尿時に急激に収縮して刺激されるために起こるもので、排尿の後半から終了後に下腹部や尿道口が痛むことが多いといわれています。

膀胱炎になると、主に以下のような症状が現れます。

  • 頻尿
  • 残尿感
  • 排尿痛、下腹部痛
  • 尿の濁り

膀胱炎が悪化すると、排尿時に焼け付くようなひどい痛みを感じるようになり、トイレに行くのがつらくなってしまうこともあります。しかし通常は、膀胱炎で腰痛や発熱が起こることはありません。もし、熱や腰痛を感じるようになったら注意が必要です。

発熱や腰痛が出てきたら膀胱炎が悪化しているかも?

熱や腰痛の症状が現れる場合は、膀胱炎によるものではなく、膀胱炎が悪化して腎盂腎炎(じんうじんえん)を起こした可能性があります。

腰痛以外で注意した方がいい症状

膀胱炎の悪化によって生じることのある腎盂腎炎は、腰痛の他にも以下のような症状が見られることがあります。

  • 発熱(38℃以上)がある
  • 悪寒がする
  • 血尿が見られる
  • 背中をたたくと響くような激痛が走る
  • 吐き気や嘔吐がある
  • 下腹部や側腹部に痛みがある

腎盂腎炎は放置すると敗血症に進行し、最悪の場合命を落とすこともある重篤な病気です。当てはまる人は必ず病院を受診するようにしましょう。

子供と高齢者は特に危険

特に、子供や高齢者など病気に対する抵抗力の弱い人の場合は、症状がひどくなると脱水症状を起こして意識障害を起こすこともあります。また、腎盂腎炎がひどくなると細菌が血液によって全身に回ってしまい、重症化してしまうリスクもありますので周囲の人は注意しましょう。

膀胱炎が原因の腎盂腎炎の治療方法は?入院が必要になる?

膀胱炎と腎盂腎炎では、症状の程度によって治療法が変わります。

膀胱炎の場合

抗生物質の内服による治療が基本です。症状にもよりますが、4〜5日間は薬を内服し、内服開始後1〜2日で症状は治まっていきます。なお、薬は菌がなくなるまで内服する必要がありますので、症状がなくなったからといって勝手に中断してはいけません。医師の指示通りに内服するようにしましょう。

膀胱炎が悪化して腎盂腎炎を起こした場合

症状が軽度であれば内服薬による治療のみで済むこともあります。
症状がひどいときは抗生物質の点滴投与が必要になることも少なくなく、場合によっては、入院して治療をすることもあります。食事や水分の摂取が難しい場合は、回復するまで水分や栄養の補給も点滴で行い、食事ができるようになったら内服薬に切り替えるという方法をとることもあります。

多くの場合は抗生物質の投与で回復しますが、人によっては治りにくかったり、繰り返し発症してしまうこともあります。そういった場合は、超音波検査(エコー)で尿の通過に問題がないかどうかを確認し、異常が見られたらそれに必要な治療を行っていきます。

腎盂腎炎はどんな人が発症しやすい?

膀胱炎は、細菌が膀胱内に入って炎症が起きている状態のことです。この膀胱炎が悪化したために起こるのが腎盂腎炎です。

腎盂腎炎は、細菌が腎臓まで運ばれて炎症を起こすことで起こります。膀胱と腎臓は尿管でつながっており、細菌がここを通って腎臓内の腎盂(腎臓の中の袋の部分。腎臓から出た尿を膀胱へと送る)まで運ばれてしまい、炎症を起こすのです。

腎盂腎炎は、ストレスや過労などで免疫力が低下しているときに起こりやすい傾向があるといわれています。また、もともと尿を排出しにくい病気(前立腺肥大や尿管結石など)や、糖尿病のような免疫力が低下する病気がある場合にも、腎盂腎炎を起こしやすくなります。

腎盂腎炎は予防できる?

腎盂腎炎は重症化すると敗血症にまで進行することがある病気です。発症を予防するには、次のようなことに注意しましょう。

  • 不規則な生活を改めて免疫力をキープする
  • 十分な睡眠と休養を取り、ストレスや疲れを溜めない
  • 血尿や側腹部痛などの症状があるときは早めに病院を受診する
  • シュウ酸など尿路結石ができやすい食材を避ける
  • 適度な運動を行って尿路結石ができるのを防ぐ

妊娠中の症状と膀胱炎・腎盂腎炎の違いとは

妊娠中は大きくなった子宮が膀胱を圧迫するため頻尿になりやすく、体形の変化によって腰痛に悩む人が多くいます。

このため、妊娠中に膀胱炎や腎盂腎炎を発症しても、妊婦に特有の症状だと考えて放置されることが少なくありません。発熱や血尿などの症状がある場合は、必ずかかりつけの産婦人科医を受診するようにしましょう。

また、妊娠中は免疫力が低下しやすく、感染症にかかりやすくなりますので下記の点に気をつけましょう。

  • 尿意を我慢しない
  • 陰部を清潔に保つ
  • しっかりと休息を取る など

膀胱炎の予防法 – 水分補給はこまめにした方がいいの?

膀胱炎を予防するには、以下のような対策を行うとよいでしょう。

尿意を我慢しない

膀胱内の細菌は尿と共に排泄されます。尿意を我慢する状態が続くと、膀胱内で細菌が繁殖しやすくなるため、尿意は我慢せず、その都度排尿するようにしましょう。

こまめな水分補給

膀胱は尿が溜まると膨らみますが、十分な尿が溜まっていない場合にはしぼんだ状態となっています。しぼんだ膀胱にはシワが多くなり、細菌はこのような構造内で繁殖しやすくなります。このため、膀胱内の細菌を十分に排泄するには、こまめな水分補給を行って尿量を多くすることが大切です。

陰部を清潔にする

尿道は陰部にあるため不潔になりやすく、そこから細菌が体内に侵入して膀胱炎を発症します。特に女性は尿道の長さが短いため、陰部が不潔な状態が続くと膀胱炎を発症しやすくなります。入浴の際は丁寧に陰部を洗浄し、生理用ナプキンなどはこまめに取り替えて清潔を維持するようにしましょう。

おわりに:膀胱炎らしき症状があるときはすぐに病院へ!普段から対策しておきましょう。

腎盂腎炎は、膀胱炎が悪化して起こることが多い病気です。腎盂腎炎を予防するためには、膀胱炎に早期に対処することが大切です。気になる症状が現れたときは、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
また、膀胱炎にならないように、普段から予防対策を忘れないようにしてください。

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