記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/7 記事改定日: 2018/11/1
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
毎年流行する、「インフルエンザA型」と「インフルエンザB型」。両者は、症状にどういった違いが見られるのでしょうか?また、同時にかかる可能性はあるのでしょうか?
新型インフルエンザの発生についても含めて、詳しく解説します。
インフルエンザウイルスは、大きくA型、B型、C型の3つに分類されています。このうち、毎年大流行するのが、A型とB型です。
A型インフルエンザウイルスは、さらに144種類に分けられますが、人の間で流行しているのは、「A/H3N2(香港型)」と「A/H1N1(ソ連型)」の2種類です。激しい症状が出るうえ、毎年のように小さい変異をすることから、ワクチンの予測も立てにくいのが特徴です。
B型インフルエンザウイルスは、「山形型」と「ビクトリア型」の2種類に分かれ、その中でさらに細かい型に分かれます。以前は数年単位で流行していましたが、近年では毎年流行しています。いずれも人の間でのみ感染し、下痢や腹痛を訴える人が多いです。
C型インフルエンザウイルスは、いったん免疫を獲得すると、終生その免疫が持続すると考えられています。ほとんどの大人が免疫を持っているため感染しにくく、4歳以下の幼児が感染しても鼻水などの軽症で済むことが多いです。
A型インフルエンザとB型インフルエンザのうち、より症状が激しいのがA型です。B型は胃腸炎に近い症状を起こしますが、A型では38℃を超える高熱や肺炎など深刻な呼吸器系の合併症、激しいのどの痛みや関節痛、筋肉痛のほか、脳炎や脳症の合併を引き起こす場合もあります。
また、A型は体内でウイルスのかたちを変えて進化するので、新型のウイルスが次々にできてしまいます。そのため、それまでに獲得した免疫も機能しにくく、流行前に作られたワクチンが効かない場合も多くあります。近年、致死率の高さなどで世界中で恐れられた「鳥インフルエンザ」「豚インフルエンザ」のように、ウイルスが他の個体や別種の動物から発生したウイルスと結合して、より強い病原性を持ってしまう可能性もあります。
A型のインフルエンザにかかっても、B型のインフルエンザに対する抗体(免疫のもと)はできません。また、A型のソ連型にかかっても、香港型に対する抗体はできません。その逆も同じです。そのため、1つのシーズンにA型とB型の両方のインフルエンザにかかることはあり得ますし、A型インフルエンザに2回かかることもあり得ます。
同時にかかることもまれにはありますが、通常はA型は12月~2月、B型は2月~3月と、流行時期が微妙に異なるため、それほど心配する必要はないといわれています。しかし、それぞれの細かい型に対する免疫反応(抵抗力)は少しずつ異なるので、人はインフルエンザウイルスの変異に追いつけず、何回もインフルエンザにかかることがあります。
2017年時点では、インフルエンザウイルス自体を退治する薬は流通していません。現在の抗インフルエンザウイルス薬はノイラミニダーゼ阻害薬といわれているもので、ウイルスが細胞外に広がるのを抑える働きをするものです。つまり、体内に広がってしまった後に処方を開始しても、ほとんど意味はありせん。
使われる抗インフルエンザ薬はA型もB型も同じで、飲み薬の「タミフル®」(2回×5日間)、吸入薬の「リレンザ®」(2回×5日間)、「イナビル®」(1回吸入)、点滴薬の「ラピアクタ®」(1回)の4種類があります。投薬方法や回数は異なるものの、治療効果に変わりはなく、A型、B型で効果の違いもありません。ただし、インフルエンザウイルスの中には、タミフルなど特定の薬に耐性を持つ場合もあります。また、インフルエンザの治療で重要なのは、薬の選択よりも「どれだけ早く投与するか」で、発熱後48時間以内の投与が必要とされています。
インフルエンザには様々なタイプがありますが、主に冬から春にかけて日本で流行し、高熱や咽頭痛、関節痛などの激しい症状を引き起こすのはインフルエンザA型です。
インフルエンザのタイプは、ウイルス粒子内に存在するたんぱく質と結合する部位の抗原性の違いによって分類されます。通常、インフルエンザウイルスに感染すると、そのウイルスのタイプに特異的な抗体が形成されるため、同じウイルスに感染したとしても抗体がウイルスを排除し、発症することはありません。
しかし、インフルエンザウイルスは抗原性を発揮するたんぱく質を毎年少しずつ変異させながら増殖していきます。このため、ヒトの免疫機構を巧みにすり抜けて流行を引き起こすのです。前年にインフルエンザにかかった場合でも翌年にも感染するのはこのためです。
一方、新型インフルエンザはこのようなインフルエンザウイルスの毎年の微小な変異とは異なり、抗原性が大きく変化したウイルスによるものです。このため、ほぼ全ての人は新型インフルエンザに対する抗体を保持しておらず、一度発生すると瞬く間に大流行を引き起こすのが特徴です。
インフルエンザA型の変異や新型インフルエンザに備える方法は、マスクの着用・手洗い消毒の徹底・室内の加湿・人ごみを避けるなど一般的な感染対策を確実に行うしかありません。
新型インフルエンザや変異の大きなインフルエンザA型は予防接種をしても感染を防ぐことができないケースが多々ありますので、流行期には日ごろから感染対策を行うようにしましょう。
A、B、Cと3つの型のあるインフルエンザウイルス。インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変異していくため、ぴったり対応するワクチンがなかなかつくれないのが現状です。もし発症した場合は、悪化を防ぐために48時間以内に抗インフルエンザ薬を投与することが大切なので、すぐに医療機関を受診しましょう。
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