記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/23 記事改定日: 2018/11/1
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
毎年11月ごろから流行り始める「インフルエンザ」ですが、インフルエンザの潜伏期間はどれくらいなのでしょうか?また、潜伏期間中も感染力はあるのでしょうか?周囲への感染を防止するためにも、ぜひ知っておきましょう。
インフルエンザの潜伏期間(感染してから症状があらわれるまでの期間)は短く、最短16時間から最長5日で、1~3日がもっとも多いといわれています。
この潜伏期間の短さには、ウイルスの増殖速度の速さが関連していると考えられています。インフルエンザウイルスは、1個のウイルスに感染すると8時間後には100個、16時間後には1万個、24時間後には100万個にまで増殖します。前駆症状として通常の風邪と似た症状もありますが、それを感じたか感じないうちに、インフルエンザの特徴的な強い症状が出てきます。この潜伏期間の短さが、地域での急速な流行につながるともいわれています。
インフルエンザウイルスは、発症する1日前から他人への感染力を持っているといわれています。症状の自覚のない潜伏期からすでに感染力を持っていることから、感染拡大を止めることは容易ではありません。
なお、感染力は発症後1週間程度まで持続します。特に症状がもっとも重い発症2日目~3日目は、感染力のピークとなっています。解熱後2日(幼児の場合は3日)も感染力があり、熱が下がるとともに体内のウイルス量は減少しますが、排出され続けます。このため、薬によって早めに解熱した場合にも、体内にはウイルスは残っているので注意してください。また、熱が出ない場合は、症状がはじまった翌日から7日目までは感染力があると考えられています。
インフルエンザは、主に北半球で毎年冬季に流行し、咳、のどの痛み、発熱といった風邪に似た症状を起こします。インフルエンザウイルスは、大きく分けてA型、B型、C型の3種類があり、特にA型のウイルスは、流行を繰り返すたびに小さな変異を起こし、多くの種類があります。それぞれの特徴や代表的な症状は以下の通りです。
インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによって発症し、インフルエンザウイルスは冬場の寒く乾燥した環境下で活性が増し、感染力が非常に強くなります。感染経路としては、感染者の咳やくしゃみのしぶきに含まれるウイルスを他者が吸い込んで体内に取り込んでしまう「飛沫感染」、感染者から排出されたウイルスが付着したものに触れることで体内に取り込んでします「接触感染」があります。
インフルエンザの感染を防ぐにはウイルスの活性を低下させる環境づくりと「飛沫感染」、「接触感染」に対する適切な対策が必要です。
インフルエンザは感染してから症状が現れるまでの潜伏期間内でも他者に感染を広げる可能性がありますので、インフルエンザの流行期には何らかの症状がない場合でも、以下のような感染対策を行うようにしましょう。
石鹸による十分な手洗いや、アルコールを使用した手指の消毒を徹底し、咳などがあればマスクを着用しましょう。
乾燥した空気で感染しやすくするので、室内では加湿器などを使い適度な湿度(50~60%)を保つようにします。また、バランスの良い食事、十分な休養など、日頃から体調管理に気をつけることも大切です。そして症状があれば早めに医療機関に受診し、インフルエンザであれば自宅療養に努めてください。
なお、予防接種を受けていても感染することがあります。予防接種を受けていると、感染しても症状が比較的軽くなることから、逆に目立った症状がないまま外出し、感染を拡大させてしまう危険性もあります。
普通の風邪のようでも、インフルエンザの流行期には念のため医療機関を受診し検査を受けるのがよいでしょう。
インフルエンザの潜伏期間内に予防接種を受けたとしても、基本的に体に害を及ぼすことはありません。インフルエンザの予防接種は、不活化ワクチンの一種であり、インフルエンザウイルスを不活化したものが原材料となって生成されています。このため、潜伏期間に感染したとしても、ワクチンが相乗効果となってインフルエンザが重症化する心配はないのです。
しかし、どの予防接種にも発熱や蕁麻疹などの副反応が現れることがあり、インフルエンザの予防接種も例外ではありません。予防接種を受けて気分が悪くなった場合には、速やかに医師に相談するようにしましょう。
ご家族がインフルエンザを発症してしまった場合などは、抗インフルエンザ薬を予防投与によって家庭内での感染を防げることがあります。ただし、投与対象は65歳以上の方や特定の疾患のある方に限るなど制限があり、また投与にあたってはタイミングがとても大切です。
これは、予防目的に使用した場合の効果は、薬の種類に関わらず薬を使用している間の10日間程度だからです。また、抗インフルエンザ薬の予防投与は、A型、B型に効果を発揮しますが、C型やインフルエンザ治療薬に耐性を持ったウイルスには、十分に効果を発揮しないことがあります。
また、抗インフルエンザ薬には感染を防ぐ働きはなく、あらかじめ服用することで感染した際にウイルスの増殖を抑え、症状があらわれることを防ぎます。しかし、乱用することで薬に耐性を持つウイルスがあらわれる恐れがあるので、予防目的で薬を使用したいときには、まずは医師に相談しましょう。
インフルエンザは、症状が出ていない潜伏期間中でも、発症1日前から感染力を持っていると考えられ、また、熱が下がった後もウイルスが体内にいる間は感染力があります。日頃から体調管理に気をつけ、流行シーズンには手洗いや外出時のマスク着用などを徹底しましょう。
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