子供の自傷行為の兆候と原因 ~ SOSサインに気づくために ~

2017/3/23 記事改定日: 2018/2/9

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

子供の自傷行為は、学校や生活のストレスや感情面の問題を処理するために行われたり、周囲の人に対するサインとして行われます。ですが、一般的に思われているよりも多くの人が自傷行為をやっているといわれています。身近な人が自傷行為をしていた場合、早めに気づいて、その根本的な原因を解決するように支えてあげることが必要です。
ここでは、自傷行為とはどんなものか、その原因や対処法について解説していきます。

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自傷行為とは?

人が故意に自身の身体を傷つけることです。これは、耐え切れない感情的苦痛への対処や苦痛の表現して現れます。
自殺で命を落とす人の半数以上に自傷行為歴がありますが、これらは自分への懲罰や苦痛の表現、極度の緊張状態からの解放として現れるものとされ、組み合わせで現れることも多いといわれています。
つまり自傷行為は、助けを求める「SOSサイン」の可能性が高く見逃すことができない兆候といえるでしょう。

自傷行為はどのような行動で自分を傷つけるのか?

意図的に自分の身体を傷つける方法には様々な方法があります。

・皮膚をカッターなどの刃物で切り付ける、タバコやライターなどで焼く
・自分をたたいたり殴ったりする
・アルコールや薬物を乱用する
・故意に食料を絶つ(神経性無食欲症)、暴飲暴食する(神経性過食症)
・明らかに行き過ぎた運動

自傷行為に及んでいることを知られることへの羞恥心や恐怖から、他人に秘密にしておく事があるので、家族などの周囲の人は気をつけるようにしましょう。
たとえば皮膚を傷つけている場合では、長袖の衣類などで皮膚をおおい隠して、その話題に触れられることを避ける傾向があります。

もし誰かが自傷行為をしているなら、親や友人といった周囲の人たちがどれだけ早く気づいてあげられるかが、その人を救う糸口になるでしょう。

自傷行為のサインに気づくために・・・

自傷行為に気づくためには、次のようなことがないか注意深く観察しましょう。

・手首、腕、腿、胸などに原因がわからない傷跡やあざ、やけどなどがある
・夏や暑い日も体中を衣類で覆っている
・気分が落ち込んでいたり、涙もろかったり、やる気がなかったり、何事にも無関心に見えるなど、うつ病の症状が見られる
・自己嫌悪や自らを罰するような言動をとる
・すべてを終わらせたいと口にするようになったり、物事を続けていくことへ拒否感をしめすなど。自暴自棄な言動が目立つ
・異常な痩せ方をしていたり、異常に太ってきた
・食事をしたかどうか、どんな食事をしたか聞いても答えたがらない
・自尊心の低く、どんな問題も自分の責任だとか、自分がが未熟なせいだと自分を軽視した発言をするようになる
・自分の髪の毛を引き抜く
・アルコールや薬物を濫用している

自傷行為が常習化してしまうと、自分自身をひどく痛めつけて学校や仕事に行けなくなってしまったり、日常生活に支障が出てしまう可能性があります。
早めに専門の医療機関を受診し、「なぜ自分自身を傷つけたり軽視するような言動をしているのか」の原因を突き止め、自傷行為を治すための対策をとることが大切です。

自傷行為をする原因とは?

自傷行為は年齢に関わらずどんな世代にも現れる行動ですが、中学生や高校生などの思春期の子供によく見られるといわれています。
自傷行為は以下のような何らかの「SOSサイン」として現れている可能性があるのです。

学校での人間関係などの社交的な問題

「勉強がわからない」「部活で思うように活躍できない」「友達の輪に入れない」などが原因で、いじめにあったり先生や友達とうまくつきあえないことがきっかけ自傷行為をしてしまう場合があります。
セックスの悩みやLGBTなどのデリケートな悩みを抱え込んでしまうことが原因になることもあるでしょう。

トラウマ

過去に肉体的な虐待を受けたことがあったり、性的被害にあった経験があると、そのときのトラウマが自傷行為に走らせる可能性があります。

心理的要因

人格障害(パーソナリティ障害)や発達障害などで異常な思考に陥ってしまい、自身を傷つけてしまうようになることがあります。

これらの問題は、怒りや罪悪感、絶望や自己嫌悪といった激しい感情を増幅して、さらに自傷行為を悪化させる「負のスパイラル」に陥る可能性があります。
しかし、自傷行為をしてしまう人の多くは、人生を終えたいとは考えていないといわれています。「自傷行為のサイン」と「自傷行為を起こしてしまう原因」の両方に気づいてあげることが大切です。

自傷行為の治療法は?

子供の自傷行為の兆候に気づいた場合は、臨床心理士や心理カウンセラーのカウンセリングを受けたり、精神科や心療内科を受診させましょう。
カウンセラーは感情コントロールの方法などの対処法をアドバイスしてくれるでしょうし、自傷行為を防ぐ手助けもしてくれます。精神科や心療内科では、心の状態を落ち着けるために抗うつ薬や精神安定剤などを処方することがあります。

子供の自傷行為を防ぐ対策は?

子供の自傷行為に気づいたときは、まず「自傷行為をやめなさい」と強く伝えてあげましょう。でも自傷行為をしてしまう子供の大半は「悪いこととはわかっているけどやってしまう」といわれています。

自傷行為が治まるには、長く時間がかかってしまう可能性があります。子供が自分自身を傷つける道具(カッターや刃物、ライターなど)を近くに置かないようにしましょう。
そして、自傷行為をしてしまう「原因」を早く理解できるように心がけ、回復を温かく見守ってあげるようにしてください。

 

おわりに:自傷行為に早めに気づき、寄り添ってあげることが大切

自傷行為をしている子供は、周囲の人がサイン早く気づき、気持ちを理解できるようによりそってあげることがです。
自傷行為をしているような兆候があれば、医師や心理カウンセラーに相談しながら解決できるように支援してあげましょう。

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