記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/4 記事改定日: 2019/10/7
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠初期の症状のひとつに腰痛がありますが、流産の兆候として腰痛が現れることがあることをご存知ですか?
この記事では、妊娠初期の腰痛について詳しく解説していきます。原因や見分け方、対処法などを項目別に解説していきますので、悩みの解決に役立ててください。
腰痛は、妊娠のための身体の変化によって生じやすい症状であると同時に、流産の兆候の1つでもあります。
ただし、流産の兆候の腰痛は、腰痛だけでなく他の症状と一緒に現れることが多いといわれています。
腰痛とあわせて、以下のような症状のいずれかが出るようであれば、その腰痛は流産の兆候である可能性が考えられますので、病院で見てもらうことをおすすめします。
妊娠後期の腰痛の原因が「おなかが出てくることによる身体の重心の変化」なのに対し、妊娠初期の腰痛は主に「分泌されるホルモンバランスの変化」が原因とされています。
女性の身体は妊娠すると変化し、分娩の準備のために骨盤を少しずつ開き始めます。
これは、卵巣や子宮、妊娠で生じた胎盤から分泌される「リラキシン」というホルモンの働きによるもので、骨盤周辺の関節や靭帯を緩める作用があります。
リラキシンが多く分泌されて骨盤が開くと、今までのように身体を支えられなくなり、腰やおしりの筋肉への負担が増えるために、腰痛が起きやすくなると考えられています。
また、妊娠によってつわりや倦怠感が強くなってくると、妊娠前のように身体を動かせず血行不良となることから、腰痛が悪化するケースもあるといわれています。
妊娠初期の腰痛の症状は、月経前に出る腰痛の症状とほとんど変わりません。
痛みの程度や痛みが出る部位には個人差が大きいですが、以下に妊娠初期の腰痛の症状をご紹介しますので、参考にしてください。
前述したように、妊娠初期の腰痛はリラキシンという妊娠によって働きの強まるホルモンの作用であるため、妊娠中はなかなか軽減されることはありません。
そこで、妊娠初期の腰痛を緩和するには、軽い運動効果のあるストレッチが効果的です。
手順としては、まず両膝を立てた状態で仰向けに寝ます。
次に、両膝を5秒数えながら横へ倒し、この動きを左右交互に3回繰り返してください。
腰回りの筋肉や靭帯が伸び、さらに血流も良くなるので、妊娠初期の腰痛軽減に効果が期待できます。
ただし、体調の悪いときにストレッチをしたり、ストレッチをやりすぎてしまうと、母子ともに体に負担をかけることになります。ストレッチは、体調を見ながら無理のない範囲で行うようにしてください。
ストレッチ以外にも、妊娠初期の腰痛を和らげる方法はいくつかあります。
妊娠初期に生じる腰痛に対するマッサージは基本的になるべく控えた方が良いと考えられます。
もちろん、マッサージ自体が胎児に悪影響を与えることはまずありませんが、妊娠初期はつわりや立ちくらみなどの症状も起こりやすいため、長時間うつ伏せの状態になる腰のマッサージは身体の負担になるためおすすめできません。
また、腰回りには子宮収縮を促す可能性のあるツボもありますので、万が一それらのツボを刺激してしまうと子宮収縮が引き起こされて危険な状態になることも否定できません。
このような理由から、一般的なマッサージ店では妊婦さんの腰回りのマッサージは施術を断られることがほとんどです。
ただし、マッサージ店によっては、子宮収縮を促すツボを避けて短時間で妊娠初期の方のマッサージを引き受けることもあるので、どうしてもマッサージを受けたい場合は妊婦さんを引き受けているところに相談しましょう。
また、マッサージを受ける際はつわりなどが落ち着いた体調のよい日を選び、施術前後は十分な水分を摂りましょう。もし施術中に体調の異変を感じたときは、速やかにマッサージを中止してください。
腰痛対策として一般的な湿布薬には、赤ちゃんに栄養を運ぶ大事な血管を収縮させる成分が入っている可能性があるため、妊娠中の使用は避けた方が良いとされます。
とくに、鎮痛消炎作用の強いインドメタシン配合の湿布薬には、注意が必要です。
配合成分や、妊娠中の使用の可否は湿布薬の注意事項欄に書かれていますが、自己判断せず、症状と使いたい薬を伝えて婦人科の医師に相談するようにしてください。
妊娠初期と月経前、どちらの腰痛もリラキシンなどホルモンの影響が大きいため、症状の出方や痛みの種類は非常に似ていると言われています。
このため、症状のみから妊娠初期の症状か、月経前の症状かを判断するのは困難です。
腰痛が月経前のものか、妊娠初期のものかを見分けるには、腰痛とあわせて以下の項目についてチェックしてみると、判断がしやすくなるでしょう。
まずは、腰痛が起きたタイミングに注目しましょう。
月経予定日より前に腰痛が出てきた場合は、月経前症状、月経予定日を過ぎても出血がない状態で腰痛が現れるようであれば、妊娠初期症状の可能性があります。
基礎体温を記録している場合は、体温の変化も判断の参考になります。
女性の基礎体温は、排卵があると高温になり、その後月経が来ると低温期に入ります。
しかし、妊娠している場合は高温の状態が続くので、体温が下がったら月経前症状、体温が高い状態が10日~1週間続いているなら妊娠初期症状の可能性が高いと言えるでしょう。
月経開始予定日より前、数日~1週間ほど前に不正出血があったにもかかわらず、月経が開始されていない場合は、不正出血=着床出血だった可能性があります。
このように、不正出血のあとも月経が来ず、腰痛が出るようになった場合は、月経前ではなく妊娠の初期症状としての腰痛かもしれません。
腰痛とあわせて、吐き気、においに敏感になる、胸が張る、熱っぽさ、倦怠感、強い眠気などの妊娠の初期症状が出ているなら、妊娠による腰痛の可能性が高いと言えます。
骨盤をゆるめ、開く作用のあるリラキシンの分泌量は、妊娠10週ごろをピークとして24週ごろまでにどんどん減少していきます。このため、安定期となる妊娠5~6か月ごろには、リラキシンが原因の腰痛は軽減されるケースが多いでしょう。
しかし、この頃にはかなりおなかが大きくなり、人によっては身体の重心の変化による腰痛が出始めることもあるため、腰痛自体から解放される可能性は低いです。
妊娠中は腰痛を治すのではなく、出産までうまく腰痛を和らげて、付き合っていくという意識でいた方がいいかもしれません。
流産の兆候として表れやすい腰痛ですが、単に妊娠中の身体の変化によって生じている可能性もあります。腰痛が出たからといって、それだけで流産のリスクを心配する必要はありませんが、一緒に腹痛や不正出血などの症状が出た場合には注意が必要です。
まずはこの記事を参考に、妊娠初期の腰痛の症状や対策を理解してから、心配なら病院に行って、婦人科の医師に相談するのが良いでしょう。