記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/1 記事改定日: 2018/10/11
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「インスリン治療をすると、膵臓の機能が低下するのでは?」といった不安から、インスリン治療になかなか踏み切れない糖尿病患者さんもいるかもしれませんが、糖尿病を治療するには膵臓を回復させることが重要であり、そのためにはインスリン治療が有効な場合があります。
詳しくは以降で解説します。
糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気で、この血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」は膵臓から分泌されます。しかし高血糖の状態が続くと、インスリン分泌をし続けた膵臓に負担がかかりインスリンを分泌できなくなったり、インスリンの効きが悪くなったりします。これによりさらに血糖コントロールが難しくなり、糖尿病が進行していきます。
糖尿病の治療の一つとしてSU剤という血糖降下薬が使われることがありますが、SU剤は膵臓の細胞に働きかけてインスリン分泌を促す薬のため、長期間大量に投与し続けるとさらに膵臓を弱らせる恐れがあります。膵臓の細胞は破壊されてしまうと元通りの回復は困難であり、また体内で分泌されない分をカバーするために、一生インスリン注射をし続けなければならない事態にも発展します。
この点から、糖尿病治療では膵臓を一時的に休ませ、機能を回復させることが重要です。具体的に有効なのが、早めのインスリン治療です。インスリン注射で外から補充すれば、その間膵臓は休むことができ、膵臓の機能の回復も見込めます。そして膵臓の機能が十分に回復すれば、インスリン治療を止めることにもつながります。
インスリン治療は、食事療法や運動療法、血糖降下薬の内服治療を行っても血糖コントルールがうまくいかない場合に必要とされます。具体的には、空腹時血糖250mg/dL以上または随時血糖350mg/dL以上など高度な高血糖であるケースや尿検査でケトンが陽性となるケースです。
また、インスリン治療の適応には次のようなケースも挙げられます。
一方、インスリン治療は血糖コントルールが良好である場合には止められるケースもあります。徐々にインスリンの量を減らして血糖降下薬と併用しながら、血糖値とHbA1c値が良好にコントロールできれば、最終的にはインスリンを止めて内服治療に切り替えることが可能です。
インスリンには、注射をしてから血糖を下げる効果が現れるまでの時間によって、超速効型・速効型・中間型・持続型・混合型といくつかのタイプがあります。
2型糖尿病の場合、インスリン治療を始めるときには、まず中間型インスリンを朝・夕食前に二回に分けて注射をすることが多いです。また、経口血糖降下薬を併用しながら、就寝前にのみ中間型インスリン注射を行う場合もあります。
インスリンの種類や投与量は、血糖値の推移によって増減の調節を行い、最終的に最も安定したコントロールを行える投与方法を探っていきます。
先述の通り、糖尿病と膵臓には密接な関連性があり、糖尿病患者は健康な人と比べて膵臓がんの発症リスクがおよそ2倍になると言われています。糖尿病が原因で膵臓がんになるのか、膵臓がんの合併症で糖尿病になるのかは明確にわかってはいませんが、血糖コントロールが突然悪くなったり、中年以降に突然糖尿病になったりした場合は、背後に膵臓がんが隠れている可能性があります。
膵臓がんの自覚症状は、上腹部の痛みや腰痛、背部痛、食欲不振、体重減少などです。そのほか、黄疸や灰色っぽい便が出ることもあります。なお、膵臓がんは特に悪性度の高いがんのため、小さくても周囲の神経や血管にすぐ転移するのが特徴です。このため内臓の痛みや神経障害性の痛みを感じることがあります。
糖尿病患者は、高血糖の持続やSU薬の影響によって膵臓が疲弊しやすい状態にあります。膵臓の機能が低下すると血糖コントロール不良に陥り、糖尿病の改善が難しくなるので、選択の一つとして早期にインスリン治療に踏み切るのも有効です。詳しくはかかりつけ医にご相談ください。
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