睡眠時無呼吸症候群の症状の時間帯の違いと治療方法について

2024/10/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

睡眠時無呼吸症候群では、「日中とても眠たい」「夜中に何度も目が覚める」「朝すっきり起きられない」など、日中・睡眠中・起床時で、それぞれ違った症状がみられます。この記事では、日中・睡眠中・起床時の睡眠時無呼吸症候群の症状と睡眠時無呼吸症候群の治療方法について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

睡眠時無呼吸症候群の日中の症状

睡眠時無呼吸症候群になると、日中には主に以下のような症状が現れます。

集中力・記憶力の低下、倦怠感がある

脳は眠っている間に日中の疲れを回復させます。睡眠時無呼吸症候群によって眠れない日々が続くことで、脳の疲れを十分に回復させることが難しくなり、記憶力や集中力の低下につながります。また、疲れを十分にとることができないために、ストレスが溜まり、抑うつ症状を引き起こすなどといった悪循環に陥ってしまう場合もあります。

強い眠気に襲われる

睡眠時無呼吸症候群になると、眠っている間に呼吸が何度も止まります。すると体に必要な酸素が行きわたらず、熟睡できないということが続くようになります。苦しさやトイレで何度も夜中に目を覚ますなどといったことが繰り返されるため、深い眠りにつくことができなくなってしまい、日中の強い眠気に悩まされるようになります。このような日中の眠気は仕事や学業などに支障をきたすだけでなく、交通事故などの大きなトラブルを招く可能性もあります。

睡眠時無呼吸症候群の睡眠中・起床時の症状

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中や起床時に特徴的な症状・変化が見られることがあります。

睡眠中の症状

眠りが浅くなる、何度もトイレに行く

睡眠時無呼吸症候群で無呼吸や低呼吸状態になると、脳が酸欠状態になります。すると、自律神経が休まらず眠りが浅くなったり、息苦しさを感じて夜中に何度も目が覚める中途覚醒を引き起こしやすくなったります。

また、夜間頻尿も睡眠時無呼吸症候群の特徴のひとつです。眠っている間は副交感神経がはたらき、利尿ホルモンの作用が抑えられていますが、無呼吸や低呼吸状態になると交感神経の影響で利尿ホルモンが促進されます。その結果、夜中に何度もトイレに行きたくなる夜間頻尿を引き起こします。

いびき

睡眠時無呼吸症候群の人の大半が、治療の開始前にいびきをしていたといわれています。いびきをかく人のすべてが睡眠時無呼吸症候群ではありませんが、普段からいびきをかいている人は、発症していなくても予備軍である可能性があります。いびきに以下の特徴がある場合は、とくに注意が必要といわれています。

  • いびきの音が変化して、突然呼吸が止まることがある
  • 朝までいびきがずっと続く
  • 慢性的にいびきがある
  • 仰向けの状態で寝ると音が大きくなる

寝汗をかく、息苦しさを感じる

無呼吸や低呼吸状態になると、息苦しさから大量の寝汗をかくことがあります。また睡眠時無呼吸症候群は睡眠時随伴症(パラソムニア)を合併する場合もあるといわれています。睡眠時随伴症は、眠っている間に歩き回ったり、突然叫んだりする睡眠中の異常行動の総称です。おもに激しい寝相や寝言、歯ぎしりなどがみられます。

起床時の症状

口が渇いている

いびきをかく人の多くは、口呼吸をしています。睡眠中は舌やのどの周りの筋肉のほか、全身の筋肉も緩みます。舌や上気道の周りにある組織が重力で下に沈むため気道が狭くなり、口を開けたまま呼吸を続けるため、起床時の口の渇きへとつながります。

頭がズキズキする

睡眠時無呼吸症候群のときに起こる頭痛は「睡眠時無呼吸性頭痛」といわれています。睡眠時に無呼吸や低呼吸状態になることで、睡眠障害によるストレスや低酸素血症になることなどが原因と考えられています。

睡眠時無呼吸性頭痛の特徴は以下の通りです。

  • 30分以内に治まる
  • 起床時に頭痛がする
  • 1ヶ月に15日以上起きる
  • 頭の両側が痛い

すっきり起きられない

睡眠時無呼吸症候群になると、夜中に何度も目が覚めてしまうことが多くなり、体を休めるための十分な睡眠が取れなくなります。また、無呼吸や低呼吸状態に陥って酸欠状態になることで体に必要な酸素が行きわたらなくなり、疲れがとれにくくなります。そのため、起きたときに倦怠感や疲労感が残りやすくなります。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法について

睡眠時無呼吸症候群のおもな治療法は、CPAP(シーパップ)治療ですCPAP治療とは、鼻に取り付けたマスクから空気を送り込み、睡眠中も呼吸を継続させる治療法です。ある研究では、重症の睡眠時無呼吸症候群の人にCPAP治療を行った場合と行わなかった場合を比べると、CPAP治療を行った人のほうが、生存率が上がったという報告もあります。

また、スリープスプリントとも呼ばれる、マウスピースによる治療もあります。上顎よりも下顎を前に出すように固定させ、気道を広く保つことで無呼吸やいびきを防止する方法です。一般的には、比較的軽度な場合に使われます。その他、外科治療として扁桃腺の切除手術や顔の骨格を矯正する手術を行う場合もあります。

おわりに:睡眠中の症状に気づくのも大切。できるなら家族に様子を教えてもらおう

睡眠時無呼吸症候群では、起床時や日中に特徴的な症状・変化がみられることもありますが、睡眠中にみられる症状・変化に気づくことも大切です。睡眠中の行動や症状を自覚することは難しいため、できれば家族から様子を教えてもらうようにしましょう。最近は、自宅で受けられる検査キットもあるので、思い当たる症状がある人は、医療機関に相談してみてください。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

眠気(31) いびき(30) 睡眠時無呼吸症候群(37) CPAP(6) 夜間頻尿(6) 睡眠時随伴症(3) 集中力低下(2) 記憶力低下(1)