アトピー性皮膚炎の治療に欠かせない「3つの柱」とは?

2023/10/11

谷口 隆志 先生

記事監修医師

川崎たにぐち皮膚科、院長

谷口 隆志 先生

アトピー性皮膚炎には強いかゆみを伴ううえ、何度も再発してしまい、生活に支障をきたす可能性があります。アトピー性皮膚炎の治療では、なるべく皮膚を良い状態に保ち、症状を抑えることが大切になってきます。この記事では、アトピー性皮膚炎治療で重要になる「3つの柱」について解説します。

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アトピー性皮膚炎治療の「3つの柱」って?

アトピー性皮膚炎の治療目標は「症状がない状態」または「症状が軽くて、日常生活に支障がない状態」もしくは「軽い症状はあるが、急に悪化しない状態」を維持することです。そのためにスキンケア、薬物治療、悪化因子の除去という「3つの柱」が重要になります。

なお、アトピー性皮膚炎治療において、3つの治療法はどれも大切ですが、一人ひとりで最適な組み合わせは異なります。そのため、実際の治療では重症度や原因などを考慮し、自分に必要な治療を行うことになります。

アトピー性皮膚炎治療の3つの柱①:スキンケア

1つ目は「スキンケア」です。アトピー性皮膚炎の原因には、「皮膚のバリア機能」が弱っていることがあります。そのため、皮膚を清潔にして、保湿する必要があります。なお、アトピー性皮膚炎の症状が和らいでいるときにも、スキンケアを行うようにしましょう。

入浴・シャワーで皮膚を清潔にする

皮膚のバリア機能を高めるためには、まず「皮膚を清潔」にする必要があります。そこで、入浴・シャワーのときには以下のポイントを守るようにしましょう。

  1. ボディソープ・石けんをしっかりと泡立てる
  2. 指の腹でやさしく洗うようにする
  3. ぬるめのお湯で十分にすすぎ、汚れを洗い流す
  4. 身体を拭くときはやさしく押さえるようにする

なお、入浴やシャワーで身体を温めすぎると、かゆみが起きてしまうので注意してください。そのほか、洗っている間に刺激を与えないことも大切なポイントといえます。

保湿時に気をつけること

入浴やシャワーを行うと皮膚の脂分も流されてしまうので、そのままにしておくとすぐに皮膚が乾燥してしまいます。そのため、皮膚をきれいにした後には「皮膚を保湿」する必要があります。

保湿剤にはさまざまな種類があるため、使用感がよいものを選ぶといいでしょう。また、保湿剤を塗るときは、「やさしく手のひらで広げる」ことがポイントです。入浴してから5分を過ぎると乾燥しはじめ、入浴後30分では入浴前より乾燥してしまいますので、入浴後にすぐ保湿剤を塗る必要があります。

アトピー性皮膚炎治療の3つの柱②:薬物療法

2つ目は「薬物療法」です。現時点ではアトピー性皮膚炎を根本から治す薬はないので、対症療法が行われます。また、薬には大きく外用薬と内服薬がありますが、基本的には外用薬を中心に使用され、内服薬は補助的に使用します。

ステロイド外用薬などの「外用薬」

アトピー性皮膚炎の治療では、主に外用薬を使用して症状の緩和を目指します。この外用薬にはステロイド外用薬とタクロリムス軟膏の2種類があり、違いは以下の通りです。

ステロイド外用薬
皮膚の炎症を抑制する働きを持つ
タクロリムス軟膏
免疫機能を調整して、炎症を抑制する働きを持つ

なお、中には「ステロイド薬を怖い薬」だと思っている人もいるかもしれません。しかし、ステロイド薬は、適切に使用することでアトピー性皮膚炎の症状緩和を目指すことができますステロイド薬の塗る量や塗り方など、使用方法を守るようにしてください。

抗ヒスタミン薬などの「内服薬」

内服薬には、主に抗ヒスタミン薬と免疫抑制薬の2種類が使われています。場合によっては、ステロイド内服薬、漢方薬などを使用する場合もあります。なお、抗ヒスタミン薬などの使用はあくまで補助的な治療であって、これだけを服用していてもアトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを抑制できません。

抗ヒスタミン薬
かゆみを抑える作用を持つ
免疫抑制薬
過剰な免疫反応を抑制して、炎症やかゆみを抑える作用を持つ

アトピー性皮膚炎治療の3つの柱③:悪化因子の除去

3つ目は「悪化因子の除去」です。アトピー性皮膚炎の悪化要因はたくさんありますが、ここでは環境因子とその他の悪化因子に分けて見ていきます。ただ、一人ひとりで悪化因子は異なるため、診察や検査などで悪化因子を見つけることが重要になります。

環境因子を除去する

環境因子にはたとえば、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛などがあり、これらもアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があります。そのため、もし生活環境に悪化因子があるようなら、部屋をこまめに掃除したり、換気したりするようにしましょう。

その他の悪化因子を除去する

食物、石鹸、化粧品、汗、気温・湿度、精神的ストレスなども、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があります。もしこれらの中にアトピー性皮膚炎の原因が見つかった場合は、それを取り除くようにしましょう。

おわりに:3つの柱を意識して、良い皮膚の状態を保ちましょう!

現在のアトピー性皮膚炎治療では「スキンケア」「薬物療法」「悪化因子の除去」という3つの柱が大切となっています。しっかりとこれらの治療に取り組んで、症状を和らげて、日常生活に支障が出ないようにしていきましょう。

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