記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/14
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠を望んでも子宝に恵まれない場合、不妊治療を検討する人もいるでしょう。その中には、不妊治療を始める年齢が気になる人もいるのではないでしょうか。
今回は、不妊治療を始める年齢などをご紹介します。
不妊症とは妊娠を希望して夫婦生活を営み、1年経っても妊娠に至らないことを指します。これまで不妊症の定義は「2年経っても妊娠しない場合」とされてきましたが、WHOや米国などでは妊娠しない期間が1年間としていることや、女性の社会進出により妊娠する年齢が上がってきていることなどから、2015年よりその期間が1年に短縮されたといわれています。
現状では夫婦の6~10組に1組が不妊症に悩んでいるとされ、その原因も男性、女性、男女両方にある場合があります。そのため、不妊症を解消するには夫婦が病院やクリニックを受診し、協力して治療にあたることが大切です。
避妊をせずに夫婦生活を送っていると、結婚後の半年で約70%、1年では約90%の確率で妊娠するといわれています。また20代前半と若いうちは、1ヶ月のうちに約25%が妊娠する可能性がある一方で、30代を超えるとその可能性は約10%と低下し、さらに年齢を重ねると妊娠するまでに数ヶ月以上かかるという報告もあります。
このように年齢が上がるにつれて不妊症になる確率も高くなることが知られています。近年、日本では女性の社会進出などによる晩婚化が進んでいます。また、結婚しても仕事を続け、キャリアアップを目指す女性が増えていることも事実です。2016年時点で、第一子の出産年齢は平均30.7歳、第二子の出産年齢は平均32.6歳となっているとされ、2011年以降は第一子の出産平均年齢が30代に突入していることからも、出産の平均年齢自体が上がってきていることが考えられます。
このような社会変化の中で日本産婦人科学会では、高齢出産となる年齢を「35歳」と定めています。出産できる年齢は個人によって異なりますが、35歳以上で出産する場合には胎児の染色体異常や流産、難産となる可能性などが高くなるといわれています。このようなリスクを避けるためにも、不妊治療は35歳までに受けることが望まれます。早めに病院やクリニックを受診し、不妊治療を始めることが望ましいでしょう。
日本産婦人科学会が高齢出産と定めている35歳を超えると、卵子の質が急激に低下するといわれています。女性が妊娠できる能力は20歳代前半にピークを迎えるとその後は緩やかに落ち込み始め、35歳で不妊治療を始めて子供が生まれる割合は16.8%、40歳では8.1%という報告もあります。
また、男性の場合には精子が毎日生み出されるのに対し、卵子は母体に命を宿してから増殖を完了させ、思春期を迎えた頃にその一部が成熟して排卵されるという違いがあります。そのため、排卵となるまでに環境汚染や自然界に存在する放射能などの影響によって、年齢を重ねるごとに卵子の質は低下していくといわれています。
つまり、不妊治療で卵子の質の低下を抑えられるわけではないということです。もし35歳を超えて妊娠を希望する場合は、早めに専門医による治療を受けましょう。また、卵巣の機能低下を招く過剰なアルコール摂取や喫煙、過激なダイエットなどは控えるように心がけましょう。
不妊治療を行ったからといって、必ず妊娠するというわけではありません。しかし早いうちに治療を開始することで、妊娠の確率を高めることができます。少しでも気になる場合は、夫婦でよく相談し、医師へ相談することをおすすめします。
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