記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
激しい下痢や血便、腹痛などを引き起こす「O157」。もしこのO157への感染が確認された場合には、どんな薬で治療が行われるのでしょうか。また、重篤な合併症として知られる「HUS」を発症した場合はどんな治療になるのでしょうか。それぞれ解説していきます。
O157は、激しい水様性の下痢や腹痛、血便などを引き起こす腸管出血性大腸菌の一種です。牛や羊、豚などの家畜の腸内に生息している菌で、このO157に汚染された食べ物や水を摂取したり、O157感染者の糞便で汚染されたものを摂取したりすることで感染・発症します。
検査の結果、O157の感染が確認された場合は、基本的に以下の治療が進められます。
O157によって下痢の症状が出ている場合は、安静にし、水分補給をしっかり行い、消化のしやすい食べ物を摂取する食事療法を行うのが基本です。
O157は細菌感染症のため、必須ではありませんが抗生物質の投与が有効です。成人の場合はニューキノロン系やホスホマイシン系、子供の場合はホスホマイシン系やニューキノロン系(ノルフロキサシン)、アミノグリコシド系(カナマイシン)の抗生物質が経口投与されます。日本におけるO157治療で一般的に投与されるのはホスホマイシンで、成人は1日2~3g、子供は40~120mg/kg/日を3~4回に分けて投与することが多いです。
上記の抗生物質の使用期間は3~5日間で、漫然とした長期投与は避けるのが原則です。
【 厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】
激しい腹痛や血便が認められ、水分や栄養分の経口摂取がほぼ不可能であり、脱水症状の危険性がある場合は、点滴治療が行われることがあります。
強い腹痛がある場合は、ペンタゾシンの皮下注射や筋肉注射によって痛みを緩和する場合があります。
HUSとは溶血性尿毒症症候群のことで、O157などの腸管出血性大腸菌感染症の後(数日~2週間ほど後)に発症することのある重篤な病態です。溶血性貧血、血小板の減少、急性腎不全の3つの症状をもって診断され、顔面蒼白や全身の倦怠感、尿量の減少、むくみなどが主な症状です。幻覚やけいれんなどの中枢神経症状がみられる場合もあります。
このHUSは多くが自然治癒しますが、乳幼児や高齢者などの免疫力の弱い人が発症・進行すると死に至る危険性もある病態です。そのため、HUSが疑われる場合は、早急に対応可能な医療機関で処置を行う必要があります。具体的には、点滴や利尿剤の投与、透析療法などの治療が実施されます。
無症状病原体保有者とは、症状が出ていないものの、検便の結果O157への感染が確認された人のことです。こうした無症状病原体保有者はたとえ症状が出ていなくても、他人に感染させる可能性があるので、抗生物質の投与が必要になる場合がありますが、医療機関や保健所によって対処は異なります。
O157の治療では、安静にして水分補給を行いつつ、抗生物質の投与を続けるのが一般的です。下痢がひどいからといって下痢止めを飲むとかえって回復が遅くなる恐れがあるので、必ず医師の指示に従って治療を進めてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
この記事の続きはこちら