慢性疼痛の解消のためのセルフケアとペインクリニックでの治療とは

2017/3/28 記事改定日: 2018/8/6
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

慢性疼痛は、病気やケガ、心理的なことなど、さまざまなことが要因になって発生します。慢性疼痛は根本改善が難しく長期化しやすい傾向がありますし、我慢できる程度の痛みの場合は放置していることも多いのではないでしょうか。
手軽にできる慢性疼痛のセルフケアやペインクリニックでの治療について紹介していくので、長引く痛みに悩まされている人は参考にしてください。

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慢性疼痛とは

慢性疼痛とは、3カ月以上続いたり、何度も繰り返して起こる痛みのことです。そして、ケガや骨折などが組織的に治っているのに痛みが続いているものも慢性疼痛に含まれます。

がんや糖尿病、関節リウマチなどの慢性疾患や、椎間板ヘルニアや靭帯損傷などの組織損傷、神経障害性疼痛や慢性頭痛、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症などが原因で起こるといわれています。
また、上記のようなはっきりとした病気や損傷以外にも、心理的な要因で起こることもあります。

慢性疼痛を放置することのリスク

慢性疼痛を放置していると、痛みのほかにも倦怠感や睡眠障害、食欲不振、味覚障害などの自律神経症状が現れるようになり、これらの症状は少しずつ増えていく傾向があります。
疼痛とあわせてこれらの自律神経症状が慢性化してしまうと、日常生活や社会生活の妨げになって心理的な負担が増えて、うつ病や不安症などの心の病気を引き起こしてしまうことがあるのです。

本当にセルフケアで症状が緩和するの?

セルフケアで回復が見込める慢性疼痛とは、病気やケガが治っているものや痛みに影響しない状態であるものです。例えば、気候の変化や感情の起伏で痛みが悪化するものや、睡眠時間や食事の内容、労働環境などに左右されるものはセルフケアでの改善が見込める場合があります。

反対に、糖尿病や関節リウマチ、がんなどが原因の痛みに関しては、原因となる病気の治療が優先になります。

日常生活に簡単に取り入れられるセルフケア

病気が原因でない慢性疼痛は、生活習慣を見直したり新たな習慣を取り入れることがセルフケアにつながることも多いです。簡単にできる方法を紹介していくので、ぜひ試してみてください。

無理のない範囲で運動をしよう!

ウォーキング、水泳、ダンスなど、無理のない範囲で運動を続けていきましょう。脳に痛みの信号を送ることを防ぎ、痛みを直接和らげることができます。運動して筋肉を刺激することで、脳に痛みの信号が送られにくくなるといわれています。
また、運動は凝っている筋肉や張っている筋肉に血流を促し、筋肉の回復を促進してくれます。慢性疼痛が軽度の筋損傷から起こっているのであれば、軽い運動が症状改善に役立つ場合があります。

軽い運動でも、始めたばかりのときは筋肉痛のような痛みを感じるかもしれませんが、このような痛みは、これから筋肉が回復していくために必要な症状です。たんぱく質やビタミンなど、十分栄養補給をしてきちんと休息をとりましょう。

ただし、急に運動量を増やすことは筋肉や関節などを痛める原因になりかねません。運動量や運動の負荷は、少しずつ増やしていくことが大切です。

ゆっくり深い呼吸を心がける

痛みが激しくなったときには速く浅い呼吸になりがちですが、呼吸の乱れはめまいや不安、パニックを引き起こす要因になることがあります。
痛みがあるときは、ゆっくりと深く息をしてみましょう。深呼吸してリラックスした状態を保つことで、精神的に落ち着きやすくなり、痛みが緩和することがあります。
また、深い呼吸で酸素を取り入れることは、筋肉や脳へ十分酸素を送るために必要なことです。

カウンセリングを受けて、ポジティブな心を持てるようにする

慢性疼痛は、精神的要因が左右することが多いです。落ち込んだり不安になったりといった精神的な問題が痛みを引き起こすこともあれば、痛みが続くことが不安や悩みを引き起こして精神的な問題を抱える要因になることもあるのです。

自分の心理パターンや痛みの原因となるトラウマを理解することで、このような負のスパイラルを回避ることができる場合があります。
自分自身で気づくことは難しいので、カウンセラーに相談し、どのようにケアしていけばいいか指示を仰いでください。

没頭できる趣味を見つけて、気晴らしをしよう

自分の痛みを忘れるくらい夢中になれる趣味を見つけましょう。本当に好きな趣味に没頭することは沈んだ気分の改善に役立ちます。
アロマセラピーやヨガ、森林浴などがおすすめですが、心から楽しめる趣味であれば何でもかまいません。たくさんの趣味を作って楽しんでください。

慢性疼痛のつらさを理解してくれる、信頼できる仲間を作ろう

似たような痛みを経験している人や、自分の痛みのつらさを理解してくれる人と話をするようにしましょう。痛みのつらさについて話すことで、落ち込んだ心が明るくなり、痛みが軽減することがあります。
また、反対に痛み以外の会話を楽しむことで、痛みを忘れることもあります。

睡眠習慣を見直そう

睡眠不足は疼痛の発生や悪化の要因になることがあります。質の良い睡眠を十分な時間とれるように、規則正しい生活を送るように心がけましょう。

漢方薬で改善する?

ロキソニン®などのNSAIDでは効かなかった慢性疼痛が、漢方薬で治ったという症例があります。
骨格筋の痛みに対しては疎経活血湯(そけいかっけつとう)や葛根湯(かっこんとう)、消化管などの平滑筋の痛みには桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、骨格筋と平滑筋両方の痛みには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が効果的だと考えられています。

また、ストレスなど心理的な要因で起こっている痛みに関しては、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や加味逍遙散(かみしょうようさん)の効果が期待できます。

これらの漢方薬は市販されているので気軽に購入できますが、他の薬との飲み合わせがあるので、持病などで継続して薬を飲んでいる人は必ず医師に許可をもらってから飲むようにしてください。

慢性疼痛はペインクリニックで治る?どんな治療をするの?

ペインクリニックとは、様々な原因で生じる体の痛みを改善するため、消炎鎮痛剤や医療用麻薬などを用いた薬物療法、痛みを発する原因となる神経に麻酔薬を注入して痛みを止める神経ブロックなどが行われます。

日本では主に麻酔科医が主体となって診察・治療を行いますが、その他薬剤師や理学療法士などが協力し合ってチームで医療を行い、精神的な異変が原因で痛み感じている場合や痛みが原因で精神的に異変を生じている場合には精神科医や心理士などが治療に加わるケースもあります。

慢性疼痛に対しては、神経ブロック療法、理学療法、栄養療法、薬物療法、認知行動療法などの精神療法が行われます。これらの治療は一種類のみを行うのではなく、通常はいくつかの治療を組み合わせて行われます。慢性疼痛の場合は、急性疼痛のように痛みの原因がはっきりわからないことも多々あり、様々な治療を試みながら患者に合った治療を模索していく必要があります。

おわりに:自分にあった方法を見つけて、積極的にケアしていこう

慢性疼痛の原因はさまざまあるり、効果が期待できるセルフケアも人によって違います。色々な方法を試しながら、自分にあったセルフケアを積極的に取り入れるようにしましょう。
ただし、病気が原因で痛みが起こっている場合もあるので、まずはペインクリニックなどの医師に相談して痛みの原因をはっきりさせることを忘れないようにしてください。

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