記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/8/31
記事監修医師
前田 裕斗 先生
避妊をせず、定期的な夫婦生活を持っていてもすぐに妊娠しない期間が続くと「不妊症?」と心配になってしまう人も少なくないと思います。
ここでは、不妊の傾向があるかどうかを確認したいという人のために「不妊のセルフチェック」と病院での検査について解説しますので参考にしてください。
「不妊 チェック」などのキーワードで検索するといくつかのWEBサイトが検索に上がります。これらのチェックリストを使ってセルフチェックをすることができますが、このセルフチェックはあくまでも「当てはまるものが多いほど不妊症の可能性が高い」ということであり、全てに当てはまったからといって必ずしも不妊症になっているとは限りません。当てはまる項目が多い場合は、一度検査をしてみることをおすすめします。
WEBサイトでの不妊チェックはあくまでも実際に検査に行くかどうか決めるための一つの指標と考えておきましょう。
また、セルフチェックは自己申告です。そのため、自身の不妊症を見過ごしてしまう可能性もあります。
もし、当てはまる項目が少なかったとしても、避妊をやめてしばらく経っているのに妊娠しない場合は、早めに検査を受けるようにしましょう。また、月経不順や月経痛がひどいなどの症状がある場合、気づかないうちに排卵障害が起こっている可能性がありますので、早めに医師に相談してください。
では、実際に病院で受ける検査にはどのようなものがあるのでしょうか?まずは、女性側の検査からご紹介します。
一般的な検査とは、疾患があるかどうか、まずは検討をつけるための検査です。ここで何らかの異常が発見された場合、さらに原因を詳細に特定するため、特殊な検査を行う場合があります。
診察室の内診台の上で行います。子宮・卵巣を産婦人科的に診察するもので、押してみて痛いかどうかを触ったり、超音波プローブを腟から挿入して筋腫や嚢腫・子宮内膜症などがないか確認します。
X線造影室で行います。X線で透視を行いながら、子宮口から造影剤を注入していきます。子宮の形や卵管が詰まっていないかどうか確認します。
卵管を押し広げるような検査となりますので少し痛みを感じる人が多い検査といわれていますが、この検査によって卵管が通りやすくなるため、結果的に検査後に自然妊娠率が上がるという報告もあります。そのため、まず一度はこの検査をしてみると良いでしょう。
採血室で血液を採取します。主にホルモン値を検査しますが、糖尿病などの全身疾患も見つかることがあります。ホルモン値は、基本的な卵胞ホルモン・黄体ホルモンの他、プロラクチンや男性ホルモンなどの値も確認します。
また、ホルモンは月経周期によっても変化するため、月経期と黄体期に分けるなど、月経周期に合わせて何度か検査することがあります。
特殊な検査は、上記の検査で何らかの異常が発見された場合に行われます。腹腔鏡検査や子宮鏡検査は、直接体内を観察し、病変を発見します。また、MRIによる画像診断は、直接の観察ではわかりにくい内部の様子まで詳細に見ることができます。
腹腔鏡検査は、臍部からカメラを入れて腹腔内部を観察します。そのため、全身麻酔をかけて手術室で行います。子宮や卵巣を初め、骨盤内臓器の様子を確認することができるため、組織や器官の癒着などを見つけることができます。卵巣嚢腫や子宮筋腫などがある場合、その場で切除することもできます。
子宮鏡検査は、麻酔をかけずとも行える検査です。子宮内部を直接観察することになるため、子宮内部のポリープや筋腫などの病変にいち早く気づくことができます。
大きな機械の中に入り、体の断面図を画像として撮影します。子宮や卵巣の内部の組織の状態まで含めた詳細な画像を見ることができます。子宮筋腫や子宮内膜症が疑われる場合に、MRIでも該当の症状が見られた場合は確定診断を下すことができます。さらに、卵管水腫などその他の不妊原因を見つけられることもあります。
不妊症の場合、男性側にも不妊の原因があることもあります。実際、不妊症と診断された夫婦のうち、原因が女性側のみと判断されるのが約3割、男性側のみと判断されるのが約3割、双方に原因がある場合が約3割とされていますので、男性も検査を行うことは非常に有効です。
男性の検査は、主として精液検査です。2〜7日間の禁欲期間の後、用手法にて全量を採取し、量・濃度・運動率・形態などを調べます。以下にご紹介するWHO(世界保健機構)の定める正常値を下回っていれば、不妊症の男性因子があると判断されます。
男性因子があると判断された場合、触診・内分泌検査・遺伝子検査などを行う場合があります。この検査の結果をもとに、男性因子が改善できるかどうか、治療の適応になるかどうかなどの判断が行われます。
女性の年齢によって、その妊孕性(妊娠する力)は大きく変化します。女性の妊孕性は30歳から徐々に減少していき、35歳を過ぎるとさらに顕著になります。そして、40歳を過ぎると急速に減少し、45歳を超えるとわずか数%となります。興味深いのは、この現象は避妊法のなかった17世紀から20世紀のデータを見ても同じことがいえることです。つまり、女性の妊孕性の低下は生物的に必然の現象であり、数百年単位では変化していないことになります。
男性の不妊については数百年も過去のデータは調べる手段がありませんが、現在行われている研究で、少なくとも男性の精子も加齢によって数が減ったり、正常な形態や運動している精子の率が低下したりすることがわかっています。また、流産率も高くなることがわかっています。これらの変化は女性よりはややゆるやかですが、やはり35歳を境に精子の質が下がるといわれています。
一般的に、夫婦のどちらかが高齢ならば、もう一方も高齢であることが多いです。ですから、不妊かも?と思い当たる節があるときは一人だけでなく、ぜひ夫婦で一緒に検査を受けましょう。
不妊症のセルフチェックは、それだけを過信するのは危険ですが、病院での検査を受けるかどうかの指標になります。ですから、不妊かな?と思っても病院に行くのはちょっとハードルが高い、という人はぜひ、WEBサイトなどでセルフチェックを行ってみましょう。
セルフチェックの結果、当てはまるものが多い場合は不妊症となっている可能性が高いです。心当たりがあれば、早めに医師に相談しましょう。
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