記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/2
記事監修医師
前田 裕斗 先生
近年、晩婚化が進んでいることに伴い、女性の初産年齢も高くなってきています。
不妊治療も一般的になりつつありますが、治療による妊娠・出産に不安を感じる方も少なくないでしょう。
今回は、不妊治療によって妊娠・出産を望む場合、ダウン症児誕生の確率が高くなることがあるのかどうかについてご説明していきます。
「不妊治療を行うと、子供がダウン症になる確率が高くなる」という話は、不妊治療に伴うリスクの1つとして、まことしやかに囁かれてきました。
しかしながら、この話には科学的根拠はなく、実際にはダウン症の子供が生まれる確率の高低が、受精や妊娠の方法で左右されることはないとされています。
このため、自然妊娠でできた子供であっても、人工授精など不妊治療の末にできた子供であっても、ダウン症の子供が生まれる確率は変わらないのです。
人工授精など不妊治療による妊娠では、自然妊娠と比べてもダウン症の子供が生まれる確率に違いはありませんが、高齢出産との関連性は指摘されています。
ダウン症の子供が生まれる一因は先天性の染色体の異常であり、この染色体の異常は卵子・精子ができる過程、または受精卵になってからの分裂異常が原因です。
女性は生まれつき一生分の卵子のもとを持って生まれ、妊娠できる年齢になると卵巣の中で排卵の前段階まで発達して、妊娠のタイミングを待つことになります。この発達の段階で分裂をしますが、排卵できる成熟した状態まで卵子の細胞が分裂する過程で、偶発的に異常分裂が起こるケースがあります。
また、これは男性の精巣で日々作られる精子においても、同様に起こり得るものです。
なお、正常な分裂をしていた卵子と精子が出会って受精卵となった後でも、着床するまでの細胞分裂がうまくいかず、異常分裂を起こすケースもあります。
このような「細胞の異常分裂による染色体異常」は、卵子・精子の老化とともに起こりやすくなるとされていることから、高齢出産ではダウン症の子供が生まれる確率が高くなると考えられています。
35歳以上の高齢出産で必ずしもダウン症の子供が生まれるわけではないのですが、目安としては、40歳の出産では約100人に1人の割合になるといわれています。
自分やパートナーの年齢・体質などの諸事情から不妊治療を決断したものの、さまざまな情報があるなかで、大きな不安を抱える人は少なくないでしょう。
特に近年ではインターネットからさまざまな情報を入手できるため、自分だけで調べていると情報の正誤を判断できず、かえって不安があおられることにもなりかねません。
インターネットの情報のなかには、不妊治療とダウン症の子供が生まれる確率の相関性が高いとする情報のような、間違ったものも数多くあります。
不妊治療をすすめるうえで、また妊娠・出産に向けて動いていくなかで少しでも不安なことがあるなら、まずはあなたの主治医に相談してください。
不妊治療を成功させるためにも、不安や精神的なストレスはよくありません。
専門家である医師から正しい知識をもらって、きちんと不安を解消しながら不妊治療に専念することが大切だと、覚えておいてくださいね。
卵子と精子の受精方法をはじめ、妊娠に至るまでの経緯でダウン症の子供が生まれる確率が左右されることはありません。卵子・精子、または受精卵の分裂異常が一因で起こるダウン症の発生確率は、不妊治療ではなく高齢出産においては左右されると確認されています。
インターネット上の不妊治療に関する情報には、間違ったものも多いです。不妊治療で不安なことがあるなら、主治医に相談して正しい知識を得るようにしましょう。
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