記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/31
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
排便時の痛みや出血など、不快症状の原因となる「切れ痔」。この切れ痔がなかなか治らない場合、どんな原因が考えられるでしょうか。また、治すにはどうしたらいいのでしょうか。
「切れ痔」は便秘による硬い便などを出すときに、肛門にできてしまった切り傷です。下痢による炎症によっても起こります。
切れ痔になると主に、便を出すときに痛みがある、お尻を拭いたときに紙に血がついている、などの自覚症状があります。傷が深いと、排便後もしばらく痛むこともありますが、出血量は基本的にあまり多くないのが特徴です。
切れ痔はすり傷のようなものなので、時間が経てば自然に治癒しますし、痛みもすぐに消失します。このような一時的なものを「急性裂肛」といいます。しかし便秘を繰り返している人や、出る便がいつも硬い人は排便の際にまた同じところを切ってしまい、「慢性裂肛」とよばれる慢性的な切れ痔になります。
切れ痔の原因は、硬い便を無理やり出そうとすることです。そのときの傷が治ったとしても、硬い便が出続ける限り、何度も切れ痔を繰り返してしまいます。そのため、切れ痔を根本的なところから治すには、皮膚を切らないような適度な柔らかさの便を出すようにするのが有効です。
便秘の悩みというと、排便の回数が少ないことばかりに目がいきがちですが、柔らかくスッキリと出せる便が出ているかもとても大切です。適度な柔らかさは、練り歯磨きからバナナぐらいといわれています。
便が硬めの人は便を柔らかくする「水溶性食物繊維」が入った、リンゴ、ミカン等の果物、芋類、 キャベツや大根等の野菜類、海藻などをとるとよいでしょう。また、便の回数自体が少ない人は、便の総量を増やして排出を促す「不溶性食物繊維」が入った、大豆、ごぼう、小麦ふすま、穀類などがおすすめです。
他にも、充分な水分をとること、朝食をしっかり食べて眠っていた腸を起こすことなども有効でしょう。反対に、アルコールや香辛料をとりすぎると傷を刺激したり、うっ血させたりすることがあるため状態が悪化してしまいます。
どうしても食事だけでは改善されず、薬を飲むときは、「下剤」ではなく「軟便剤」にしましょう。アロエやセンブリなどが便秘薬として有名ですが、これらは下剤のため、緊急時だけにしましょう。
切れ痔を繰り返すと、排便の痛みによる恐怖感が出て、排便の際に無意識に肛門が緊張してしまいます。肛門は括約筋という筋肉でお尻の穴を閉めたり開いたりしますが、ここが緊張すると肛門が上手く開かなくなるのです。すると、以前は平気だった硬さや太さの便でもお尻が切れるようになってしまいます。
また、傷がついては治りを繰り返すことで、そこの皮膚が厚くなり周りが盛り上がってきます。その盛り上がった皮膚が肛門の外に出てくるまで大きくなると、「肛門ポリープ」や「見張りいぼ」と呼ばれるものになります。やがては穴自体が小さくなり「肛門狭窄」といって、排便がままならない状態になってしまうこともあります。こうなってしまうと手術をしなければならなくなるので、やはり傷を治すだけでなく適度な柔らかさの便を出し続ける工夫がとても大切なのです。
「切れ痔」は便秘による硬い便などを出すときに、肛門にできてしまった切り傷です。傷自体はすぐに治りますが、硬い便などが原因で排便のたびに切ってしまうと慢性的なものになります。傷を治すだけでなく、便秘を解消し、食べ物などに気を付けて、適度に柔らかい便を出す対策をとりましょう。
この記事の続きはこちら