記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/10/3
記事監修医師
前田 裕斗 先生
プレママにとって最もつらい時期とも言えるつわりの時期ですが、つわりとはそもそもどのような状態のことを言うのでしょうか?また、つわりの時期を少しでも楽に乗り切るためにはどうしたら良いのでしょうか?
さらに、つわりはまれに重症化することもあります。重症化に気づくポイントも合わせ、つわりについて解説します。
つわりとは、主に妊娠初期の4週目〜15週目ごろに見られる症状で、吐き気が起こったり、匂いに敏感になったりする体調の変化のことを言います。つわりのピークは8週目〜9週目ごろで、15週を超えると落ち着いてくる人が多く、中にはつわりを経験しない人もいます。しかし、まれに妊娠後期まで続く人もいるので、15週を過ぎてもつらい症状が続く場合は注意が必要です。はっきりとした原因はまだわかっていないため、特効薬や解決策もまだ見つかっていません。
有力視されている説には、以下があります。
その他、つわりが起こる時期は赤ちゃんがお腹にいることを自覚する頃でもあるので、精神的なことも一因ではないかとも考えられています。
つわりの症状でよく見られるのは、次の5つです。
つわりで最もよく起こる症状は「吐き気」で、朝目覚めたときや空腹時に起こりやすい症状です。また、匂いに敏感になったり、食べ物の好みが変わったりすることも比較的よく見られる症状です。人によっては、眠気や体のだるさ、イライラや頭痛など生理前のような症状が出る人もいます。
つわりを感じる人の中には重症化して妊娠悪阻と呼ばれる症状を引き起こすこともあります。約50%〜80%の人がつわりを経験するのに対し、妊娠悪阻にまで症状が進行する人は約1〜5%と少ないですが、妊娠悪阻は治療を必要とする疾患ですので注意が必要です。
つわりの時期は、吐き気や体のだるさのせいで何をしても、何を食べてもつらいという状態が続きます。ですから、まずは無理をしないことが大切です。食べたいものを食べ、体がだるいときは休むことのできる環境を作り、必要ならば周囲にも協力してもらいましょう。
また、つわりがあるということはもちろん、お腹に赤ちゃんがいるわけですから「食べたいものだけ食べていては赤ちゃんに栄養が行かなくなるのでは?」と心配されるお母さんも多いことでしょうが、心配しなくても大丈夫です。この時期の赤ちゃんはとても小さく、それほど多くの栄養を必要としていません。お母さんが毎日食べる食べ物や飲み物のうち、赤ちゃんに最低限必要な栄養素は優先的に送られる仕組みになっています。ですから、あまり気にしすぎず、食べたいものを食べて良いのです。
ところで、絶対に必要な栄養素というのはあります。妊娠初期は、赤ちゃんの神経系などの発達に影響する「葉酸」という栄養素をしっかり摂っておくと、先天性の脳や脊椎の異常である「神経管閉鎖障害」、流産、奇形などのリスクを減らせることが研究でわかっています。ですから、サプリメントなどで構いませんので、葉酸はしっかりと摂取するようにしましょう。また、体に余裕があればビタミンB6、B12、ビタミンCなども合わせて摂取しておくとより効果的です。
つらいつわりの時期は、まるで嵐が過ぎ去るのを待っているかのように過ごしてしまいがちです。しかし、4つのポイントに気をつけることで、つわりのつらさを軽減できることがあります。ポイントをおさえ、つわりの時期を少しでも楽に乗り切りましょう。
体の症状としては、水分と葉酸サプリは忘れずに摂取するようにしましょう。また、家庭内や仕事の面ではどうしても言い出しづらいことも多いかもしれませんが、お母さんだけではなく赤ちゃんを守るためにどうしても必要なことですから、つらい時は無理をせず助けを求めましょう。お母さんがストレスを溜めすぎないよう、自分なりの気分転換の方法をたくさん持っておくのも重要です。
つわりが重症化して治療が必要な状態になると、妊娠悪阻と呼ばれます。
このような症状が出ている場合は、つわりでなく妊娠悪阻の疑いが強く、治療が必要な状態であることがほとんどです。できるだけ早く病院を受診しましょう。
妊娠悪阻になる原因ははっきりとわかっていませんが、絨毛性疾患がある、前回の妊娠でも妊娠悪阻の症状があった、双子以上の多胎妊娠である、初産である、などの要因があると妊娠悪阻のリスクが高まることがわかっています。また、疾患の既往歴として糖尿病、甲状腺機能障害、精神疾患、喘息なども妊娠悪阻のリスク要因であることがわかっています。
つわりと妊娠悪阻のはっきりとした線引きはありませんが、つわりは多くが一過性で、我慢できないほどではないのに対し、妊娠悪阻は何度も嘔吐を繰り返して1日中ほとんど食事ができないことが多いです。病院で診断する場合、尿検査でケトン体という物質が陽性であるかどうかの検査をし、ケトン体が陽性であれば妊娠悪阻である可能性が高いと判断します。その他、体重減少の程度や脱水症状、中毒症状などから総合的に判断します。
妊娠悪阻は、放っておくと段階的に進行していきます。1期の状態で気づけばほとんどは問題なく回復することができますが、2期の症状からは入院が必要となることがあります。また、3期や4期の症状まで進行してしまうと、最悪の場合は生命の危険が生じてしまいます。
1期や軽度の2期であれば、通院治療で済むケースがほとんどです。点滴で水分や栄養分を補給したり、葉酸を中心としたビタミン剤を投与します。場合によっては精神安定剤や制吐剤の投与をする場合もありますが、ほとんどは回復することができます。つわりがあまりにもつらい場合は無理をせず早めに病院で診察を受け、治療を始められるようにしましょう。
つわりの時期は、赤ちゃんにとってもプレママにとってもとても大切な時期です。ですから、ママの体調が第一です。絶対に無理をせず、食べたいものを食べ、体がつらくなったらすぐに休むことのできる体制を整えましょう。
また、つわりが明らかにつらいようなら、重症化して妊娠悪阻を引き起こしている可能性も考えられます。この記事で紹介したチェックポイントなどを参考に、早めに病院に行って治療を受けられるようにしましょう。
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