記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/6 記事改定日: 2020/9/10
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胃潰瘍の治療法には薬やピロリ菌除去、手術があるとされますが、どんな治療を行うのでしょう?また、治療後の食事や生活習慣、飲酒、喫煙は胃潰瘍再発に影響を与えるかも気になりますよね。この記事では胃潰瘍の診断や治療法、治療後の生活における注意点を紹介していきます。
胃潰瘍は、胃の粘膜にえぐれるようなダメージが生じる病気のことです。原因は多々ありますが、胃酸の過剰分泌、ピロリ菌感染などが挙げられます。
発症すると空腹時を中心とした心窩部の痛み、胸焼け、食欲不振などの症状が現れます。また、重症化すると病変部からはじわじわとした出血が続くため、動悸・息切れ・めまい・倦怠感などの貧血症状が現れたり、胃酸で酸化して血液が混ざることで便が黒くなるといった症状が見られるようになります。
そして、そのまま放置すると病変部から大量出血して吐血することもあります。また、胃の壁に穴が開いて激烈な腹痛を引き起こし、腹膜炎や敗血症などの重篤な病気に進行するケースもあるためできるだけ早い段階で治療をするのが望ましいと考えられています。
胃潰瘍の有無を確認するためには、主に採血・胃カメラ・腹部エコーの検査を受ける必要があります。
貧血や血清のアミラーゼなどの膵臓の酵素の上昇の有無、肝機能の状態や炎症の有無などを調べるために行われます。これらの検査によって胃潰瘍からの出血や、急性膵炎や胆石などの他の疾患の評価を行います。
みぞおちの痛みがある場合は、胆石に関連する痛みや盲腸(急性虫垂炎)の初期症状である可能性があり、この鑑別には腹部エコーが適しているとされています。
レントゲンのように放射線被爆の心配をせずに受けることができます。
胃カメラでは、胃や十二指腸を直接観察することで、潰瘍やがんの有無を確認することができるためとても良い適応となります。バリウム検査では、胃がんらしき病変が発見されても、バリウムの光により診断が難しくなったり、バリウムの付着により粘膜の観察ができなくなる恐れがあるため、胃潰瘍の症状があるときのバリウム透視は避けましょう。
また、バリウム透視を行った後はしばらく他の検査を受けることができないことも、避けるべき要因となります。
胃カメラで胃潰瘍の病変が発見された場合は、潰瘍の辺縁の癌の有無を調べる顕微鏡検査のために、病理検査を行います。また、ピロリ菌の有無を調べるための検査も行います。
2013年2月から全てのピロリ菌保菌者の検査および除菌が保険収載となりましたが、事前に内視鏡検査を受けることが必須となっています。
胃潰瘍の治療法には、薬物療法、ピロリ菌除菌、手術などが行われます。症状などによって治療法は異なりますので、以下で詳しく説明していきます。
潰瘍は、プロトポンプ阻害薬・H2受容体拮抗薬を使用して胃酸を抑制することでほとんど治癒することが可能です。ただし、内服を中止すると再発するため、薬を続けることが必要となります(維持療法)。また、胃粘液増量や粘膜の血流改善を目的として胃粘膜保護薬が使用されることもあります。
しかし現在では、胃潰瘍が再発する主な原因がピロリ菌感染であることが確認されているため、胃酸を抑制する治療は対症療法と位置づけられています。
胃潰瘍の再発を予防するためには、ピロリ菌を除菌することが非常に効果的とされています。胃潰瘍を根本的に治療するためにはピロリ菌除菌が必要不可欠になります。
除菌治療では、抗生物質のアモキシシリンとクラリスロマイシン、酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬が使用されます。これらを1週間内服して、約8週間後に尿素呼気試験または便中抗原法を行い除菌の成否を確認する方法が一般的です。
ピロリ菌の中には、抗生物質の効かない耐性菌と呼ばれる菌が存在しますが、この方法による除菌成功率は約80%といわれています。
ただし、腎障害や薬剤アレルギーのある人や妊産婦は、除菌治療は控えましょう。
H2受容体拮抗薬が使用されるようになってから、外科的手術が行われることは少なくなりましたが、大量出血、内視鏡での止血困難、穿孔、狭窄などの重篤な合併症が見られる場合に行われることがあります。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの薬剤により潰瘍が起こっている場合は、薬剤を中止するもしくは必要最小限の使用量に留める必要があります。その上で、プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬を使用する治療を行います。
胃潰瘍は再発を繰り返すことがありますので、治療後の生活にも十分に注意する必要があります。
具体的には食事や生活習慣について以下のような点に注意しましょう。
食事は胃の粘膜になるべく負担をかけないような消化がよいものをバランスよく摂るのがポイントです。揚げ物など油分の多いものはなるべく控えるようにしましょう。また、塩分や香辛料が多く含まれた食事も胃の粘膜に負担をかけますので適量を守ることが大切です。
胃潰瘍などの胃の病気はストレスや自律神経バランスの乱れによって胃酸の過剰分泌が生じることで発症することがあります。このため、十分な休息・睡眠時間を確保する、熱中できる趣味を持つ、ストレスの原因となる事柄を避けるなどストレスや疲れをためない生活を心がけるようにしましょう。
胃潰瘍は喫煙や過度な飲酒が原因となることもありますので、禁煙・節酒を目指すことも大切です。
食事や生活習慣に注意していても胃潰瘍を再発してしまうことは多々あります。普段から体調に注意し、腹痛や吐き気などの腹部症状やめまい、動悸、黒色便など消化管出血が疑われるような症状がある場合には放っておかず、早めに病院を受診するようにしましょう。
タバコには胃粘膜の血流低下や粘膜の防御力低下を引き起こす作用があるため、消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)の発症に関係しているとされています。
喫煙者は非喫煙者と比較すると胃潰瘍になるリスクが約3倍高くなるとされており、胃潰瘍が治ってからも吸い続けると再発のリスクが上がってしまいます。
禁煙することで胃潰瘍の再発率が16%まで低下するという報告があるため、胃潰瘍の再発防止には禁煙が必要不可欠となります。
胃潰瘍は、採血・胃カメラ・腹部エコー・顕微鏡検査を行って潰瘍の有無を調べた後、薬物療法・ピロリ除菌・外科的治療などが行われます。また、胃潰瘍が治った後も喫煙や胃の粘膜を障害する飲食物などの再発の原因となることを避けることが大切です。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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