記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/9 記事改定日: 2020/7/16
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胃潰瘍や胃のポリープなど胃に関する病気は多くあります。胃の切除や全摘出が必要となるケースもありますが、食べ物の消化吸収を司る胃はとても大切な臓器です。胃を全摘出した後の食生活ではどのようなことに注意をするといいのでしょうか。
胃の切除や全摘出によって胃の機能を失い、そのためにあらわれる不調を「胃切除後症候群」といいます。切除した部位や範囲によって症状の度合いは異なります。
ダンピング症候群、逆流性食道炎、下痢、貧血、胃切除後胆石、カルシウム吸収障害などの症状がみられます。
また、胃を全摘出すると、手術前と同じように食事はできません。
胃を全摘出した後は、手術前と同じようには食事をとることができず、食品の選び方にも注意が必要です。ただし工夫次第でおいしく楽しい食事をとることはできます。
とくに手術後一年目までは体の状態に合わせて食事の内容や調理法、頻度を調節することが大切です。
消化のよい食品を選び、調理法は「ゆでる・煮る・蒸す」を中心に食材をよく加熱してください。一日の食事は少量を少しずつとるようにし、朝昼晩3食と間食2~3回の計5~6回を目安にします。
胃切除後症候群は、手術後の早い時期にあらわれるものと何年も時間が経ってからあらわれるものがあります。症状があらわれる時期が早いものと、時間が経ってからあらわれるものについて、次の章から詳しく解説していきます。
食べ物は通常、胃の中に溜められてから小腸へ送られます。ところが胃を切除すると胃から腸へと食べ物が送り込まれるまでの時間が短くなり、ダンピング症候群と呼ばれる症状がみられることがあります。
症状が発生する時間帯によって「早期ダンピング症候群」と「後期ダンピング症候群」に分けられます。
手術後1~6か月を目安に、胃の全摘出をした患者さんに多くみられます。胃液や腸液が口まであがってきたり胸やけを感じるなどの全身症状のほか、胃のむかつきやみぞおちあたりの痛みといった腹部症状が発生します。上半身を少し高めにして安静にすると症状が改善されますが、投薬治療をする場合もあります。
術後1~2か月に発生しやすく、患者さんの約10%に発生します。小腸へ食べ物が急に流れ込み、神経反射や腸の蠕動運動が過剰に刺激されることが原因です。
術後数か月ほどしてから発症することがあります。動悸や息切れ、めまい、疲労感を感じたら貧血を起こしている可能性が高いです。
胃の切除によって栄養素の吸収が低下するため栄養障害を起こし、体力不振やむくみ(低たんぱく症)を起こすことがあります。
たんぱく質や脂肪の吸収低下により乳製品の消化がうまくいかず乳糖不耐症を発症する可能性も少なくありません。
手術後3年以内にあらわれることが多く、胆石ができて腹部に強い痛みを感じます。摘出手術で胆のうの神経が切れてしまった場合に、胆のうの動きが悪くなると結石ができやすくなります。胃の切除をした患者さんの10~20%にみられます。治療法は胆のうの摘出ですが、胃の摘出手術時にあらかじめ胆のうを取って予防をすることもあります。
カルシウムの吸収率が下がり、骨密度の低下がみられたり骨折や骨粗しょう症のリスクが上昇します。骨密度測定を定期的に行い食事療法や運動療法、投薬治療を検討します。
胃を摘出すると血液を作り出すのに必要なビタミン類の吸収が低下するため貧血になりやすくなります。動悸や息切れ、めまい、倦怠感などの症状があるときはできるだけ早く病院を受診することが大切です。
貧血は症状がないまま進行することも多々あるため、身体の負担になるような激しい運動は避けた方がよいでしょう。
また、胃摘出後は、胆石症や腸閉塞、逆流性食道炎などの病気になりやすくなります。腹痛や吐き気、胸焼け、発熱など思い当たる症状があるときも早めに病院へ行きましょう。
食品の選び方や調理法を工夫すれば、胃の摘出後もおいしい食事をとることはできます。術後の健康的な生活のためにも、ポイントを抑えて体にやさしい食事を楽しんでください。胃切除後症候群による症状が出て辛いときは、医師や栄養士に相談してみましょう。
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