低血糖症の治療はどんなふうに進むの?食事や運動の注意点は?

2018/10/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

体を動かしたり頭を使って考えたりするときには、エネルギー源であるブドウ糖の補給が大切です。糖尿病治療や近年のダイエットブームなどで「血糖値のコントロール」の重要性が認識されていますが、「低血糖症」と呼ばれる病気のことも理解しておきましょう。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

低血糖症とは

体内に取り入れられたブドウ糖は、酸素によって代謝されエネルギーとなります。体内の細胞に吸収されるブドウ糖の量をコントロールしているのが、インスリンと呼ばれるホルモンです。インスリンは膵臓から分泌され、血糖値を下げる働きを持ちます。

低血糖症とは、インスリンの分泌に異常が発生したために血糖の急激な上昇や低下が起こり、体力・精神面に不調を引き起こすことをいいます。インスリンの分泌が少なくなった結果、慢性の高血糖の状態を引き起こすのが「糖尿病」の代表的な症状ですが、糖尿病と低血糖症は正反対の病気というわけではありません。どちらも血糖のコントロールに異常が発生した病気であり、糖尿病の患者さんに低血糖症状があらわれることがあります。

低血糖症の症状例

  • 強い疲労感
  • 筋肉痛
  • めまい、目のかすれ
  • 日中、昼食後の眠気
  • 呼吸が浅くなる
  • 集中力の低下
  • 理性の低下、感情の起伏が激しい
  • 甘いものが無性に欲しくなる

低血糖症の原因

すい臓への負担
精製された糖や精製炭水化物、脂肪分の過剰摂取は、すい臓に大きな負担を与えます。
副腎への刺激
タバコやカフェインを含む飲食物、ストレスは副腎を刺激し血糖値を上昇させます。
ビタミンとミネラルの不足
糖の代謝を助ける栄養素が不足すると低血糖症が起こりやすくなります。

低血糖症の治療はどんなふうに進んでいくの?

体力面、精神面に症状があらわれる低血糖症の治療は個人差が大きいのが特徴です。治療の基本は血糖値のコントロールです。血糖値の急激な変動を避けたり、低血糖状態を長時間放置しないようにします。

日常生活で気をつけたいポイント

  • 食事と食事の間は、なるべく時間を空けすぎない(6時間以内が目安)
  • 軽めのストレッチなどで血液の循環を促す
  • 仕事や家事、趣味の最中にきちんと休憩する
  • 睡眠を十分にとる

治療開始後、症状がよくなったら?

治療開始1か月目
症状がぶり返すこともありますので、焦らずに生活習慣に気をつけて過ごします。
治療開始2か月目
体調のよい日が続くようになったら軽い運動を取り入れます。疲労は副腎の働きを低下させ、血糖値のコントロールを難しくしますので無理は禁物です。
治療開始3か月目以降
体調や精神面が安定してくる患者さんが多くみられます。医師と相談のうえ、運動の時間を増やすことも可能です。

低血糖症の治療のために、食事で気をつけることは?

膵臓を疲れさせたり、インスリンの分泌を妨げたりする食事はなるべく避けます。糖質や脂肪分を控えた、ビタミンやミネラルを豊富に含む食品を取り入れるのが理想的です。以下では低血糖症の人が食品を選ぶときの参考例を紹介します。

食べてOK!

  • 未精製の穀物(玄米、全粒粉の小麦粉)
  • 天然素材を使用した調味料(昆布や煮干し、粗製糖)
  • 新鮮な食材
  • ナッツ類
  • 豆類
  • 蕎麦
  • にんにく、たまねぎ、ねぎ(インスリン様性質を含むため)
  • アボカド

過剰摂取はNG!

  • 精製された糖(白砂糖)
  • 清涼飲料水
  • カフェインを含む飲食物
  • 人工甘味料や化学調味料、香料、色素
  • 冷凍食品、インスタント食品
  • 果糖を多く含むフルーツ

食事は「たんぱく質→サラダなど野菜類→炭水化物」の順番で食べるようにします。過食は糖質などの過剰摂取につながりますので、よく噛んで食べて満腹中枢を刺激するようにしてください。

低血糖症の人が運動するときに気をつけることは?

運動は体内にある酸素の働きを高め、栄養素の消化吸収やインスリンの分泌を促進します。低血糖症の患者さんは体力が落ち、気分がすぐれないことが多くあります。食後や天気がよく温かい時間帯など、体内にエネルギーが十分に補充されているタイミングで運動をしましょう。

低血糖症の人におすすめの運動療法

ウォーミングアップ運動
筋肉を伸び縮みさせる、軽めの運動です。起床時に布団に寝そべったまま背伸びを数分程度します。余裕があったら膝などの関節をゆっくりと曲げたり伸ばしたりし、血行を促進します。
コンディショニング運動
つま先立ちやかかとジャンプを行い、筋肉を刺激します。ウォーキングやハイキングなどもよいですが、いずれも体調に合わせて行います。
循環器の機能促進運動
体の循環器や呼吸器の力をアップさせます。水泳、テニスなどの球技、自転車などやや強度の強い運動です。くれぐれも無理はせず疲れを蓄積させないようにします。

おわりに:血糖値をコントロールし、体力・精神面の安定を!

食事療法と運動療法を中心とした低血糖症の治療は、効果があらわれ症状が改善するまでに時間がかかります。焦らず無理をせず、ゆっくりと治療を進めていきましょう。不安に感じることがあったら医師に相談してください。

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