男児に多い?「ケトン性低血糖症」の症状や治療方法

2018/10/6 記事改定日: 2020/10/1
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

低血糖といえば、糖尿病の初期症状と考えがちですが、ケトン性低血糖症は発症者のほとんどが子供です。今回は「ケトン性低血糖症」について、症状や小児糖尿病との違い、発症年齢や男女差、診断・治療法について解説していきます。

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男の子に多くみられるケトン性低血糖症の症状とは

ケトン性低血糖症とは、小児がストレスや体調不良、食欲不振をきっかけとして発症する低血糖症の一種です。特に、1歳半から10歳までの男児が多く発症することで知られます。

ケトン性低血糖症の症状
  • 空腹時の吐き気
  • 頻回の嘔吐
  • 痙攣
  • 疲労感
  • 倦怠感
  • 顔面蒼白 など

発症には、何らかの理由で食事を摂れず一時的な飢餓状態に陥った身体が、血糖コントロールのために肝臓でグリコーゲンを分解しようとする作用が関係しています。

なぜ子供の発症数が多いの?

小児の場合、肝臓の機能がまだ未熟です。血糖コントロールのために肝臓で分解されるグリコーゲンの蓄えもそう多くはありません。このため、分解するグリコーゲンがなくなるとエネルギー不足となるため脂肪酸が分解されるようになります。

発症時の尿検査で、脂肪酸が分解時に生成されるケトン体が多量に検出されることから、ケトン性低血糖症と呼ばれています。

ケトン体とは

ケトン体とは、エネルギー源として脂肪酸が分解させる際に生じるアセトン、アセト酢酸、β‐ヒドロキシ酪酸などの総称のことです。

私たちの身体は通常、ブドウ糖を分解することでエネルギーを産生しています。しかし、極度な飢餓状態に陥ったり糖尿病を発症したりするとブドウ糖が十分に利用できなくなることで、脂肪酸が分解されるようになり、ケトン体は放出されるようになります。

ケトン体が体内に蓄積すると、血液の酸性度が変化して頭痛や吐き気など様々な症状を引き起こすようになります。

ケトン性低血糖症と小児糖尿病との違いは?

ケトン性低血糖症と小児糖尿病は異なります。

  • 一般的な小児糖尿病がインスリンの分泌・作用異常で起こるのに対し、ケトン性低血糖症の発症にはインスリンの関与はありません
  • 小児糖尿病では、通常時の血糖値にも異常が見られます。しかしケトン性低血糖症では症状が出ていないときの血糖に異常が出ません

ケトン性低血糖症の診断・治療法は?

ケトン性低血糖症の診断は、以下の条件を満たした場合に確定されます。

ケトン性低血糖症の診断基準
  • 吐き気や嘔吐、ふるえ、疲労感など低血糖が疑われる症状が出ていること
  • 尿検査で多量のケトン体(アセトン)が検出されていること
  • 総合的に考えて、中枢神経系疾患や先天性代謝異常などの疑いが低いこと
  • 12~18時間の絶食検査を行った結果、低血糖が出現した場合

ケトン性低血糖症の治療

症状が軽度なら、経口で糖分と水分を与えて安静・睡眠を取らせ、回復を待つことになります。
ただし、重症であれば点滴または静脈注射でブドウ糖の輸液をして症状の回復を待ちます。

子供のケトン性低血糖症は自然治癒するの?

ケトン性低血糖症は、成長して肝機能が成熟するのとともに症状が出にくくなり、10歳前後を目安に自然治癒することの多い疾患です。

しかし小児の間は、ストレスからできるだけ遠ざけたり、食事を糖質が多く脂質が少ないものに変えるなどして、発症予防に努めてあげてください。

おわりに:ケトン性低血糖症は、小児に起こる非インスリン性の低血糖

ストレスやエネルギー不足がきっかけで発症するケトン性低血糖症は、血糖をコントロールしようとする肝臓の働きによって引きこされます。小児、特に10歳未満の男児に発症しやすいと言われ、インスリンの働きと関係しないところが小児糖尿病との大きな違いです。

尿検査と12~18時間の絶食で診断され、糖質と水分の補給と安静で治療します。発症を繰り返さないよう、小児のうちは十分気をつけてみてあげましょう。

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