記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
普段あまり意識することのない臓器のひとつ「膵臓」。この膵臓とは、どんな役割りを担っている臓器なのでしょうか。機能が低下すると、どんなことが起こるようになってしまうのでしょうか。
「膵臓(すいぞう)」は、胃の後ろ側、みぞおちから左上腹部にかけて存在する、胃と十二指腸に囲まれた厚さ約3cm、長さ約15cmくらいの勾玉のようなかたちをした横長の臓器です。
膵臓は、自身の右側から、膵頭部、膵体部、膵尾部に分けられ、大切な大血管に接しているほか、膵頭部は十二指腸に、膵尾部は脾臓(ひぞう)に接しています。膵臓の中には膵管が走っており、膵液を集めて十二指腸に注いでいますが、この注ぎ口のすぐ手前で、胆汁が流れる胆管(たんかん)が合流しています。
そのため、膵頭部に病気があると膵管や胆管、十二指腸などが影響を受け、膵炎や黄疸(おうだん)、嘔吐などの症状があらわれます。逆に膵体部や膵尾部ではこうした症状が出にくいため、病気になっても発見が遅れがちとなります。
膵臓は、「膵外分泌」と「膵内分泌」の2つの働きを持っています。膵外分泌では、膵液という消化酵素を作り膵管経由で消化管へ分泌しています。膵液は、アミラーゼにより糖をブドウ糖、果糖に分解したり、タンパクをアミノ酸に分解し、リパーゼなど数種類の酵素が脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解するほか、胃酸で酸化された消化物をアルカリ性にする働きもあります。
膵内分泌では、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンを作り、血中に分泌します。インスリンはブドウ糖を活動エネルギーに変えたり蓄えたりし、グルカゴンは蓄えたグリコーゲンをブドウ糖に戻したり脂肪をエネルギー源として分解します。ソマトスタチンはさまざまなホルモンの分泌や消化管機能を抑制します
このように膵臓は、食物の消化や体のエネルギー源の生成に重要な役割を果たしています。
長期間の過剰な飲酒、胆石やストレス、あるいは何らかの原因で膵臓の働きが弱くなると、「急性膵炎」を発症します。
急性膵炎は膵液に含まれる消化酵素によって膵臓自体が消化されてしまう病気で、上腹部の激しい痛み、吐き気や熱が出ることもあります。この段階での治療は可能です。しかしこの炎症を繰り返すと膵臓の細胞が壊されて硬くなってしまい、「慢性膵炎」という膵臓の働きが失われていく病気になってしまいます。こうなると病気は徐々に進行し基本的に治ることはないといわれています。
慢性膵炎は40~50歳代での発症が多く、腹痛の発作が繰り返され、背中の痛み、だるさ、下痢などを起こすほか、分泌物の成分などが固まって結石ができることもあります。進行すると食物が消化できず栄養障害を引き起こしたり、糖尿病を発症する恐れもあります。慢性膵炎に移行する前に、早目に検査し治療をすることが大切です。
膵臓は、多くの消化酵素を含む膵液や血糖をコントロールするホルモンを作りだし、食物の消化やエネルギー源の生成に重要な役割を果たしています。しかし機能が低下すると急性膵炎に、それが繰り返されると慢性膵炎になって機能不全に陥り、糖尿病を引き起こすこともあります。思い当たることがあれば早目に検査し治療するようにしましょう。
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