記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高熱や背中の痛み、寒気、嘔吐、倦怠感などの辛い症状が出る「腎盂腎炎」は、何が原因で発症する病気なのでしょうか。また、どのように治療が行われていくのでしょうか。
腎盂腎炎は、腎臓の中の腎盂という部位に炎症が起こる病気です。
腎臓には体内で不用となった老廃物や、蓄積すると害となる物質が血液に乗って運ばれてきます。そして、腎臓でろ過されて、必要なものは再吸収し、不用なものは尿として排出されていきます。
ひとつの腎臓の中には、糸球体とボーマン嚢(のう)が組み合わさった「ネフロン」というろ過装置が約100万個あります。ネフロンでろ過された液体(原尿)は、尿細管という細い管の中で、必要なものは再吸収をされて、腎盂に集められます。つまり腎盂は、腎臓の中で尿がためられるところをいいます。
腎盂に溜められた尿は、尿管と膀胱、尿道を経て排尿されます。そして腎盂腎炎は、何らかの要因で外から入ってきた細菌が尿管を逆流して腎盂に入りこみ、炎症を起こす病気になります。
腎盂腎炎は、腎盂に細菌が感染することで起こります。主に、尿道から膀胱に感染した細菌が逆流して腎盂に入り込むことで起こります。そもそも、尿道に細菌が入り込んでも、自己免疫が働くとともに、排尿のたびに細菌も一緒に排出するため簡単には逆流はしません。
しかし、膀胱炎や前立腺炎、尿路結石や悪性腫瘍といった膀胱や尿路周囲に異常がある場合や、何らかの理由で尿路にカテーテルを入れている場合、糖尿病のような全身性の疾患がある場合には、腎盂腎炎が起こりやすくなります。大腸菌のような腸内細菌のほか、ブドウ球菌や緑膿菌など、多様な菌が原因となります。
腎盂腎炎の自覚症状は、背中や腰の痛み、高熱、排尿時の痛み、トイレに何度も行きたくなる、残尿感などがあります。特に、急激に発症する急性腎盂腎炎では、高熱や全身のだるさ、嘔吐などの強い症状がみられることがあります。一方で、慢性腎盂腎炎では、自覚症状がないこともあります。ただし、急激に症状が悪化すれば、急性腎盂腎炎のように強い症状がみられてもおかしくはありません。
また腎臓は、体内で不用となった老廃物や害のある物質をろ過して、排出するための大切な器官のため、何度も腎盂腎炎を繰り返したり、慢性的に炎症が起こっている状態(慢性腎盂腎炎)が続けば、腎臓のろ過機能が低下してしまうこともあります。そして腎臓を通る血液に細菌が入り込めば、細菌が全身に広がる可能性があります。全身で炎症が起こって敗血症を起こし、多臓器不全を起こせば命に関わることもあります。
腎盂腎炎は、細菌が入り込むことによって起こる炎症です。放置していても自然に治癒することはなく、適切な治療が必要です。治療ではまず、細菌を殺すための薬である「抗生物質」の投与が行われることになるでしょう。軽症であれば、内服や通院による点滴での治療が可能なこともあります。しかし、重症の場合には入院して、全身管理を受けながらの治療となります。
特に自宅での治療の場合に、症状が落ち着いてくると自己判断で抗生物質を飲むことを止めてしまう人がいます。しかし、体内から全ての細菌をなくすためには、処方された薬を最後まで飲み切ることが大切です。
また、腎盂に細菌が入り込んだ原因についても改善が必要です。尿路結石や前立腺肥大症によって尿路が閉じてしまい、尿の逆流が起こっている場合には、カテーテルなどで尿路を開放して、尿と一緒に膿や細菌を排出する必要があります。
腎盂腎炎は、何らかの原因で尿道に入った細菌が、腎臓に逆流することで起こる腎臓の炎症です。腎臓は老廃物や体に害のある物質を体外に排出するための重要な臓器です。放置すれば、全身への影響が起こり、最悪の場合は命にかかわることもあります。治療は重症度に応じて異なります。軽症で内服薬のみの治療であっても、医師の指示を守ってきちんと薬を飲み切ることが大切です。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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