記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/7 記事改定日: 2018/10/3
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
急に熱が出たり、腰が痛くなったりというのはよくあることです。ちょっと安静にしていればよくなると甘く考えてしまうかもしれませんが、その症状は腎盂腎炎が原因かもしれません。
今回は、腎盂腎炎について解説していきます。
人間の血液は腎臓を通って尿になり、尿管へ向かいます。腎臓の中の、尿管とすぐ繋がっている部分を腎盂といいます。この腎盂や腎臓の実質まで細菌に感染したものが腎盂腎炎です。ここから更に急性と慢性、単純性と複雑性に分類されます。
健康な人間の体では、尿の通り道は概ね無菌状態になっています。しかし大腸菌などの腸内細菌のような、何らかの細菌が尿道に侵入すると膀胱炎などを発症し、その後腎盂腎炎に発展することがあります。
まず単純性腎盂腎炎とは、尿の通り道に特に異常がないが発症した腎盂腎炎のことを指し、若い女性に多く起こります。それに対して複雑性腎盂腎炎は、尿の通り道に何らかの解剖学的な異常があるものを指します。例えば高齢者では尿路の悪性腫瘍や結石、小児では尿路の先天異常が挙げられます。高齢者や小児に多く、細菌を尿の流れで洗い流す仕組みが障害されているため注意が必要です。
腎盂腎炎では様々な症状が生じますが、大人と子供では症状の現れ方が異なることがあります。
まず、大人では腰痛や側腹部痛、血尿・頻尿、排尿時痛、残尿感などの身体症状が見られ、続いて発熱や倦怠感、吐き気などの全身症状が現れることが多いです。高齢者では目立った発熱がないことも少なくありません。
一方、子供の場合には、腹痛や尿の異常などの局所的な症状よりも、発熱や吐き気、食欲不振などの全身症状が目立つことが多く、発症を見逃されやすいのが特徴です。
尿路感染症のうち、腎盂腎炎か膀胱炎かを判断するときに重要なことが、発熱などの全身症状の有無です。膀胱炎では熱が出ないことが多く、おしっこの際の痛みや回数の増加があります。
腎盂腎炎はこのような症状に加え、発熱などの全身症状が現れます。確定診断には尿検査や血液検査が必要です。
治療として、抗生物質の投与や、尿路から細菌を出すために水分を多く取ってもらうなどで対処します。早期から治療を始めれば3~5日で熱が下がり回復しますが、対処が遅れると入院治療が必要になることもあります。
腎盂腎炎は、尿道から膀胱、尿管、腎臓へと細菌感染が広がることで発症します。本来、これらの尿路は無菌状態なのですが、陰部に付着した大腸菌などが尿道へ侵入し、上行性に感染が広がっていくのです。
このため、腎盂腎炎を予防するには、陰部を清潔に保つことが大切です。特に女性は尿道が短く、尿道と肛門が近くにあるため男性よりも腎盂腎炎を発症しやすいとされています。排便後はしっかりと汚れを落とし、入浴時は泡立てた石鹸で汚れを洗い流すようにしましょう。
また、生理用ナプキンやタンポンは長時間使用すると細菌が繁殖しやすくなりますのでこまめに取り替えることも大切です。
その他にも、腎盂腎炎の原因である尿路結石を防ぐために水分を多くとり、脂肪分や塩分、糖分の多い食事を控えるなど生活習慣を見直してみましょう。
腎臓は血流が豊富な臓器です。腎盂腎炎では細菌が豊富な血流を介して全身に回り、重症となることがあり注意が必要な病気です。腎盂腎炎の兆候があるようであればお早めに医療機関を受診しましょう。
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