潰瘍性大腸炎は、薬の服用や手術をすれば完治する?

2018/11/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

難病に指定されている「潰瘍性大腸炎」は、薬の服薬などの治療をすれば、完治が見込める病気なのでしょうか。潰瘍性大腸炎の治療法を中心に、詳しく解説していきます。

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潰瘍性大腸炎って完治するの?

大腸の最も内側にある粘膜部分に炎症が生じることによって、その粘膜にびらんや潰瘍ができてしまう炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎。潰瘍性大腸炎は難病指定もされており、潰瘍性大腸炎が起こる原因が分かっていないことから、残念ながら現在の医療の力では完治させることができません。多くの患者さんが治療を継続して行うことで症状の改善や寛解が認められ、内科治療を継続して寛解を維持するという経過をたどります。

一方で再発する場合も多く、再発後は内科治療で寛解状態までもっていくことが難しく手術となる場合もあります。また、潰瘍性大腸炎を発病してから7~8年後に大腸がんを合併する例も多くあります。

潰瘍性大腸炎の症状が出ないよう、どんな治療をするの?

潰瘍性大腸炎の治療は薬物療法、血球成分除去療法といった内科的治療、手術療法といった外科的治療を行います。

潰瘍性大腸炎が軽症から中等症の場合には、5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®)による内服あるいは坐剤・注腸製剤を使用して炎症を抑えます。多くの場合はこの薬剤を使用することで、症状が和らぎます。他にも初期の段階ではステロイド剤(プレドニン®、プレドニゾロン)を使用した治療が中心となります。特に5-アミノサリチル酸製剤は再燃予防の効果も持ち合わせているため積極的に治療で使用されます。

これらの薬剤を使用しても潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールできないという場合には、それまでの治療経過や重症度によって免疫調節剤であるチオプリン製剤(イムラン®、アザニン®、ロイケリン®)生物学的製剤(レミケード®、ヒュミラ®)、免疫調節剤(プログラフ®、サンディミュン®などを使用して炎症を強力に抑制します。

血球成分除去療法とは、ステロイド剤を使用しても効果が得られない場合の活動期の治療に用いられます。血液中から異常に活性化した白血球を取り除くという治療法で、炎症には白血球が関係しているという考えから、点滴や献血に用いる針で片方の腕より血液を取り出してカラムと呼ばれている特殊な筒を用いて炎症を引き起こしている血液成分である白血球を取り除き、もう一方の腕から血液を戻して炎症を落ち着けるという治療法です。この治療法にはLCAP(白血球除去療法:セルソーバ®)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム®)があります。治療は週に1~2回を合計5~10回継続して行い、1回に約60~90分かけて炎症を起こしている血液成分を除去します。

手術療法は内科治療が無効な重症例、副作用などで内科治療が行えない場合、大量の出血が見られている、大腸が穿孔してしまっている、大腸がんに罹患しているもしくはその疑いがあるという場合に行われます。基本的には大腸をすべて取り除き、人工肛門を設置するという方法をとります。多くの場合、人工肛門は一時的に設置しますが、最終的に人工肛門を無くす手術を行います。

治療のおかげで症状がなくなった!もう通院や薬は必要ない?

治療をしたことによって症状が消失すると通院や薬はもう必要ないと考える方もいるかもしれません。しかし、前述したように潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返す病気のため完治はしません。そのため、症状が無くなった寛解期であっても薬の服用を継続して寛解の状態を維持していくことが必要です。

特に潰瘍性大腸炎を発病してから7~8年経過すると、それを素地にして大腸がん発症する可能性が高まります。そのため、薬の治療と併せて1~2年に1回は内視鏡による検査を受けることが必要となります。また、内視鏡検査を行うことで現在の大腸の状態を知ることができ、薬の内容の変更や中止の判断をするのに役立つこともあります。

そのため、自己判断で通院や薬をやめたりせず、かかりつけ医の指示に従い、定期的に検査を受けていくことがよいでしょう。

おわりに:寛解と再燃を繰り返す潰瘍性大腸炎。薬の継続と定期的な検査を

潰瘍性大腸炎は難病指定をされている通り、原因が解明していないため完治をさせることが難しい疾患であり、薬物療法や血球成分除去療法、手術を行うことによって症状が出ていない寛解状態を維持することが必要となります。そのため、寛解状態になったからといって自己判断で通院や薬を中止せず、かかりつけ医の指示をよく守って薬の継続あるいは内視鏡による検査を受けるようにしましょう。

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