記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/5 記事改定日: 2018/10/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大腸の粘膜がただれて潰瘍ができ、大腸がんに発展するリスクもある「潰瘍性大腸炎」。日本では約17万人の患者がいるとされており、最も患者数の多い難病ともいわれていますが、どんな人が潰瘍性大腸炎を発症してしまうのでしょうか?治療することはできるのでしょうか?
持続的な血便や下痢、腹痛などをもたらす潰瘍性大腸炎ですが、その原因ははっきりとはわかっていません。腸内細菌による影響や自己免疫反応の異常、あるいは食生活によって引き起こされると考えられていますが、正確な原因は不明です。
また、欧米にて「潰瘍性大腸炎患者の約20%に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の近親者がいた」と報告されたことから、遺伝的要因と食生活などの環境要因が重なって発病するという説が有力視されています。
潰瘍性大腸炎は、0歳の赤ちゃんから80歳以上の高齢者まで、年齢を問わず発症することのある病気です。患者さんの男女比も1:1で、性別による発症数の差もみられません。ただ、発症年齢のピークは、男性の場合は20~24歳、女性の場合は25~29歳と若い人に多い傾向にあります。また、喫煙者は非喫煙者と比べ発病しにくいといわれています。
潰瘍性大腸炎の症状は、重症度によって「軽症」「中等症」「重症」「激症」の4段階に分類されます。一般的に、軽症の段階では軽度の血便や下痢が起きる程度ですが、重症になると下血の回数が増加し、37.5℃以上の発熱や頻脈、貧血といった全身症状が現れるようになります(重症の中でも症状が深刻なものは劇症に、軽症と重症の中間くらいの症状は中等症にそれぞれ該当します)。
また、潰瘍性大腸炎の患者さんの多くが、初発症状の後、「寛解」(症状が落ち着き、日常生活が問題なく送れる状態)と「再発」を繰り返す傾向にあります。この点も潰瘍性大腸炎の特徴のひとつです。
潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返しますが、再燃して症状が現れている時には症状を悪化させないように、日常生活で注意すべきことがあります。
まず、症状がある間はしっかりと休息・睡眠時間を確保することが大切です。また、できる限りストレスのない生活を心がけるようにしましょう。肉体的・精神的な疲れは症状を悪化させる可能性がありますので注意が必要です。
また、高脂肪・高たんぱくな食事や喫煙も増悪因子の一つとなりますので、食事内容や生活習慣を見直してみましょう。
寛解状態を維持するには、適切な服薬治療を続けることが最も大切です。
残念ながら潰瘍性大腸炎には、根本的に治癒するための治療法は確立されていません。このため、治療の目的は「いかにして寛解状態を維持するか」という点になります。
現在では適切な投薬治療を続けていれば寛解期を長く維持することが可能になっています。それ故に、数年にわたって症状がないからといって服薬を自己中断する患者さんが多くいますが、再燃を招くことになるので必ず医師の指示通りの服薬を続けるようにして下さい。
また、寛解期には通常と変わらない生活を送ることができますが、喫煙や過度な飲酒を避け、消化管への負担を軽減するために低脂肪で食物繊維が少ない食生活を心がけましょう。さらに、しっかりと休息・睡眠を確保してストレスの少ない生活を送ることも大切です。
潰瘍性大腸炎の原因は解明されておらず、また根本的な治療法も確立されていないのが現状ですが、適切な治療を受けることで症状を最大限に抑え、通常の生活を送ることはできます。新薬が開発されるその日まで、専門医のアドバイスを受けながら、長期的に病気と向き合っていきましょう。
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