記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/25
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性膵炎は、膵臓が分泌した消化酵素が膵臓そのものを溶かしてしまう恐ろしい病気です。早期発見が非常に重要ですが、検査を受ける基準となる、慢性膵炎が疑わしい症状とはどういったものでしょうか。以降で解説します。
膵臓では、血液中の糖分濃度をコントールするほか、いくつかの消化酵素を分泌しています。消化酵素は大腸に送られて、食べ物を吸収しやすく分解する働きがあります。
そして慢性膵炎は、膵臓が分泌した消化酵素が膵臓そのものを溶かしてしまう病気です。そうして膵臓の細胞がなくなると膵臓が硬くなったり、膵臓の中に膵石(すいせき)という石ができたりします。
同じ内臓であっても、肝臓は再生機能がありますが、膵臓の組織は一度壊れると再生することができません。ゆっくりと進行して膵臓の機能が衰えていくと、消化不良や糖尿病の症状が現れていきます。
一般的な自覚症状は上腹部の痛みといわれます。しかし、自覚症状があまり出ないケースもあり、健康診断で糖尿病と診断されて初めて膵臓の機能低下が判明する人もいるほどです。しかし症状が進行すれば、消化酵素の分泌量が低下することから消化不良を起こし下痢が続くということもあります。痛みや違和感があるときは早めに受診することはもちろん、健康診断で血液検査を受けていくことで早期発見につなげましょう。
慢性膵炎が疑われた場合には、下記の検査が実施されます。
超音波を使って、膵臓の形や大きさ、膵石の有無などを確認します。患者さんへの負担が少ない検査です。
X線を用いる検査です、お腹の画像を撮影して、膵臓の中に膵石がないか確認します。
レントゲン検査と同様にX線を用います。膵臓の大きさや形を確認します。膵臓がんの診断にも有用です。
X線は使わず磁気を用いた検査で、体への負担が小さくて済みます。進行した慢性膵炎の診断に有用とされています。
口から内視鏡を挿入して、胃や十二指腸側から膵臓に超音波をあてて確認をする検査です。軽症の段階から慢性膵炎が診断できることで注目されています。
口から内視鏡を入れて、さらに膵臓の中の膵管(すいかん)までカテーテル(細い管)を入れます。カテーテルから造影剤を入れて、膵臓の中の状態をレントゲンで撮影する検査です。早期から進行したものまで慢性膵炎の診断に用いられます。膵臓に直接刺激を与えるため、検査後の膵炎のリスクに注意が必要な検査です。
慢性膵炎は、代償期、移行期、非代償期の順に進行していきます。
まだ膵臓のはたらきが保たれている代償期の段階では痛みは現れていますが、非代償期になり膵臓の働きが失われると痛みが軽くなったり、なくなったりします。治療は、それぞれの時期に現れている症状や、膵臓の機能がどの程度保たれているか、また、病気の原因は何であるかなど複数の要素を検討して行われます。
痛みに対しては、痛みを抑える鎮痛薬や、炎症を抑える薬を用いた薬物療法が行われます。また、慢性膵炎の大きな原因であるアルコールについては、断酒が勧められます。そのほか、食事療法が組み合わされることもあります。
特にアルコールについては、病気の進行を防ぐためには、アルコール量を減らす、飲まない日を設けるという対応ではなく、「全く飲まない」という断酒が必要とされます。
慢性膵炎は、膵臓が分泌する消化酵素が膵臓自身を分解していく病気です。大きな原因は長期にわたってのアルコール摂取が挙げられます。膵臓の細胞が壊れると、消化酵素が分泌されなくなったり、体内の血糖値が保てなくなったりします。
膵臓は、一度失われた機能を再生することができない臓器です。慢性膵炎を早期に発見するために、定期的に健康診断を受けるほか、腹部の痛みや違和感が続くときには病院を受診しましょう。
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