記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
いつの間にかあらわれた手首周辺のしこり。特に強い痛みがあるわけではないそのしこりの正体は「ガングリオン」と呼ばれる腫瘤かもしれません。治療方法は症状によって異なりますが、この記事では主にガングリオンで手術となるケースについて紹介します。
ガングリオンとは手首や手の甲などにあらわれる、米粒大からピンポン玉ほどの大きさの腫瘤(こぶ)です。
手は日常生活でよく使う部位ですので、ガングリオンができると気になるものでしょう。しかしガングリオンは良性のこぶであり、痛みのような症状はほとんどみられません。放置している間に自然治癒するケースもあります。
ガングリオンは若い女性に多くみられ、体のいたるところに発生し、特に関節、腱、軟骨組織の周辺にあらわれやすい傾向にあります。ガングリオンの発生と、発生部位を酷使しているかどうかには必ずしも関連性はありません。
ただし手の甲に発生したガングリオンが神経を圧迫すると、痛みやしびれを引き起こすので注意してください。そのほかまひや運動障害がみられるケースもあります。
痛みが強い、腫瘤が大きくなっているなど、神経を圧迫する症状があらわれたら治療が必要です。治療方法として代表的なのは、注射器での吸引、押しつぶし、手術療法です。いずれの治療法でも再発の可能性はあります。
ガングリオンはまず、触診で腫瘤の状態を診ます。それから注射針を刺して内容物を吸引のうえ確認し、ガングリオンかどうかを診断します。外側からでは腫瘤の場所がよくわからないときは、MRI検査や超音波検査を行います。
手術では腫瘤の内容物を摘出します。従来は、局所麻酔をかけて皮膚を切開する手術が一般的でしたが、最近は内視鏡を使った手術も行われており、体への負担が軽くなっています。手術にかかる時間は短く、入院を必要としないことが多いです。
しかし腫瘤が大きい、体の深いところにまで影響を及ぼしているという場合は2~3日の入院を伴う手術が必要となります。
注射器での吸引に比べて、腫瘤を摘出する手術療法であれば再発の可能性が低いといわれています。しかし術後に再発がみられたケースもあり、確実に根治する治療法は今のところありません。また切開手術に伴う傷跡や手術部位の知覚が鈍くなるといったリスクもあるので、よく考えて治療方法を選択することが重要です。
ガングリオンの原因はまだはっきりと解明されていませんが、ガングリオンをきっかけにして腱鞘炎を発症することもあります。気になるしこりの周辺に痛みやしびれを感じたら、整形外科や皮膚科に相談しましょう。
主に手首の周辺に発生するガングリオンは、体に大きな悪影響をもたらすものではありません。しかし神経を圧迫し痛みやしびれを引き起こす場合は、手術が必要です。再発の可能性は否定できませんが、手術は麻酔を使わないものや短時間で終わるものが多いといわれています。気になる症状があらわれたら、症状が重くなる前に整形外科や皮膚科で診察を受けてください。
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