記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/20 記事改定日: 2019/8/5
記事改定回数:3回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
お腹の中で赤ちゃんが動く胎動は、妊娠中に赤ちゃんの命を感じることができる癒しの瞬間ではないでしょうか。キックしたり、身をよじったりなど、生命の息吹を直接感じることができる妊婦の特権です。ここでは、お腹に赤ちゃんがいることを実感できる胎動がいつ頃から始まるかや、胎動が弱くなる原因として考えられることを紹介します。
まず最初に、妊娠期間の数え方についておさらいしましょう。
妊娠期間は、最後の月経(生理)の初日から数えて約40週(280日)です。ただ、実際に出産するのは妊娠39~41週のどこかです。4週を1カ月と数え、以下のように分類されます。
妊娠直後の数週間から妊娠3カ月の終わりごろは、超音波でかわいい心拍音が聞こえる時期です。ただ、心拍音は聞こえても、胎動を感じることはないかもしれません。妊娠初期にお腹がポコポコ鳴ることがあった、というお話を聞いたことがあるかもしれませんが、この音は胃腸の不調やガスがたまったときの音である場合がほとんどです。この音を胎動と勘違いし、「何か異常があるのでは…」不安になる妊婦さんもいるそうです。
妊娠初期はホルモンの変化の影響で、胃腸にちょっとした不調が起こったり、ガスが溜まりやすくなったりすることがあります。あまり心配することはありませんが、お腹にガスがたまるのを防ぐためにも食事はゆっくり摂りましょう。また、ガスが発生しやすくなるイモ類や、炭酸飲料の過剰摂取を控えるのもおすすめです。
妊娠中期になると、胎動を感じ始めます。これを「胎動初感」といいます。胎動初感がどんな感じかは、人によって変わります。バタバタと落ち着きがないように感じる人もいれば、お腹が引きつるように感じる人もいます。また、おなかがゴロゴロ鳴ったり、泡がはじけたような感じがしたり、ジェットコースターでひっくり返ったように感じがすることもあるといわれています。
このように、胎動の感じ方には個人差がありますが、お腹に感じる変化が「胎動」とわかった瞬間、幸せな気持ちになると思います。
一般的には5カ月目以降に胎動を感じ始める人のほうが多いと言われていますが、妊娠4カ月で感じ始める人もいます。特に、出産経験のある妊婦さんはこの時期に胎動に気づくかもしれません。この時期の胎動は、お腹の赤ちゃんが活発に動いていても、お腹のガスがポコポコと鳴ったり、腸がグルグル動いているように感じます。
妊婦さんの多くが妊娠5カ月目で胎動を感じ始めます。この時期の赤ちゃんは、子宮の中で宙返りができるくらいの大きさに育っています。
胎動が感じにくいこともあるので、胎動が小さかったり、胎動を感じなかったとしても、担当の医師が問題ないと言っているなら不安がらなくて大丈夫です。妊婦さんに正中線(お腹の中央にあらわれる茶色い線)が現れて安定期に入りますが、無理は禁物です。
お腹の赤ちゃんはぐんぐん成長し、手足の運動も活発になるので、バタバタしているのに気づくでしょう。まだ動き回るスペースがあるので、お腹の中を活発に動き回ります。胎動を感じる間隔は個人差がありますが、少なくとも1日1回は胎動を感じる場合が多いといわれています。
妊娠6カ月目を過ぎると、胎児が自由にお腹の中を動き回ります。このため、赤ちゃんの体が子宮の内側にあたって子宮収縮が起こり、お腹が張ることがあります。お腹の張りを感じたら、無理せず安静にして、体を冷さないようにしましょう。また、この時期のお腹の張りは問題ない場合がほとんどですが、まれに問題がある場合もあります。心配なときは、産婦人科の先生に相談しましょう。
妊娠後期から子宮に多少の痛みを感じ始め、尿漏れや頻尿、お腹の張りなど、さまざまな症状や変化が出てきます。また、胎動は毎日感じるようになります。7カ月目から8カ月目までは胎動が激しくなりますが、9カ月目になると弱くなっていきます。
お腹の赤ちゃんは、妊娠7カ月までは体の向きを変えることができます。赤ちゃんの力も強くなっているので、妊娠中期に心地よく感じていたパンチや蹴りが痛いと感じるかもしれません。また、赤ちゃんがしゃっくりをすると、一定のリズムでピクピクと感じることもあります。
お腹の中で動き回っているので逆子になることもあります。ただ、出産直前までに逆子が解消するといわれているので、心配しなくて大丈夫です。
子宮の中で動き回ることがなくなる代わりに、ひじやひざがぶつかることが増えてきます。また、胎動やお腹の張りも強くなってきます。我慢できないときは体勢を変えてみるとよいでしょう。
赤ちゃんがひざや足でお腹をつっついているのを感じたら、やさしく押し返してあげましょう。もし、赤ちゃんが遊んでいたときは、いったん足を引っ込めて、また押してくることもあります。
ちなみに、早い人では、妊娠8カ月目で前駆陣痛が現れることもあります。
赤ちゃんは子宮に収まりきらないほど成長しており、胎動が少なくなってきます。キックも感じられなくなり、赤ちゃんが体勢を変えるなど、大きな動きをしたときだけ胎動を感じるでしょう。力が強い赤ちゃんであれば、赤ちゃんがどの場所を押しているかが外から見てわかる場合もあります。
出産前(初産の場合は予定日の2、3週間前)、赤ちゃんが頭から骨盤のほうに下りてきます。赤ちゃんが下りてくるタイミングには個人差がありますが、赤ちゃんが頭の向きを変えるたびにかなり強い刺激を感じるようになるでしょう。ときには、子宮頸部近くに鋭い痛みを感じることもあります。
胎動は妊娠期間を通して変化しますが、ある条件で変わることもあります。
性行為の揺れる動きと、オーガズム後のリズミカルな子宮の収縮で赤ちゃんが眠ってしまうことがあります。ただ、性行為後に動きが活発になる赤ちゃんもいるので、性行為の後に胎動が変化しても心配する必要はありません。ちなみに、基本的に妊娠中に性行為をしても問題ありませんが、医師に止められている場合は控えてください。
赤ちゃんがキックやパンチしていたのに、その動きを感じられなくなると不安になるかもしれません。ですが、妊娠中期の赤ちゃんはまだ小さく、子宮内を自由に動き回ることができるので、定期的に胎動を感じなくても心配には及びません。
ただし、これまで定期的に胎動を感じていたのに、突然1日中胎動を感じないことがある場合は、念のため担当医に診てもらいましょう。
妊娠後期になると、赤ちゃんの寝ている時間帯と起きている時間帯がはっきりしてきます。赤ちゃんが順調に育っているかを確認するために、胎動の変化をチェックすることがとても重要です。妊娠28週に入ったら、胎動を数えることをおすすめします。特に、予定日が近づくほど胎動チェックが重要といわれています。
キック、バタバタ、叩く、宙返りなど、すべての動きを数えましょう。1時間以内に10回程度動くのが一般的といわれているので、動作を10回チェックしたら時間を確認して記録してください。
1時間に10回動かなくても不安になる必要はありませんが、10回動くまでに2時間以上かかるときは何か原因がある可能性があります。一度医師に相談してみてください。
胎動は赤ちゃんが元気に動き回っている証です。辛いときもあるかもしれませんが、赤ちゃんの成長を確認するためにも、特に妊娠後期はきちんと回数をチェックしましょう。また、胎動を感じ始めるタイミングや感じ方には個人差があります。人より胎動を感じるタイミングが遅かったり、感じ方が弱かったりしても、あまり心配しすぎないようにしていください。不安があるときは、担当医に相談しましょう。