記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
セカンドオピニオンという言葉は、近年それほど珍しくなくなりました。しかし、実際にセカンドオピニオンを受けたいと思った場合、治療のどの段階で受けに行くのが良いのでしょうか?
また、セカンドオピニオンを受ける際に、用意するものや受け方のコツなどはあるのでしょうか?セカンドオピニオンの疑問について、解説します。
セカンドオピニオンは、「治療の方針を検討する」という段階で受けるのが良いでしょう。通常、疾患の治療は以下のような段階を経て進んでいきます。
このうち、2)の方針を検討している段階でセカンドオピニオンを受けるのが、もっとも適切でアドバイスの効果も得やすいと考えられます。
1)はまだ疾患の見当をつけるために情報を集めている段階であり、セカンドオピニオンを受けるために必要な「疾患の基本的な情報」が不足しています。ですから、この段階でセカンドオピニオンを受けに行っても良いアドバイスは得られません。まずは、担当医から診断が下されるまでいったん待ちましょう。
また、3)はせっかくセカンドオピニオンを受けても、その意見を治療に反映させることが難しくなります。特に、担当医とセカンドオピニオンを受けた医師との間で治療方針が異なった場合、治療の途中で方針を変更することは容易ではありません。その場合、あっちの方が良かったのか、などと迷いを増やしてしまう結果になりかねません。
また、セカンドオピニオンは特に大きな疾患、治療期間の長い疾患で選ばれることが多いですが、大きな疾患において、一番始めに決めた治療方針で治療終了まで進むとは限りません。症状の進行などにより、再度診断や病状の評価が必要になる場合もありますので、その都度、方針の検討の段階でセカンドオピニオンを受けることで、納得のいく治療を受けることができます。
セカンドオピニオンが推奨される大きな疾患の一つにがんがありますが、近年、がん医療を行っている病院では「セカンドオピニオン外来」を設置しているところも増えてきています。「セカンドオピニオン外来」とは、セカンドオピニオンの提供を専門とする外来のことで、通常の診療とは異なる窓口を設け、セカンドオピニオン希望の患者さんをスムーズに案内するとともに、十分な時間をかけてセカンドオピニオンの情報を提供できるようにしているのです。
こうした「セカンドオピニオン外来」を設置している病院は、各地のがん相談支援センターに問い合わせると知ることができます。セカンドオピニオン外来は、基本的に公的医療保険が効かない自費診療ですので、病院によって費用が異なります。セカンドオピニオンをどこで受けたらいいか迷ってしまっているという人は、こうしたセンターなどを利用するのがおすすめです。
また、「担当医からは手術を勧められているけれど、放射線治療を検討したい」というように、患者さん自身に具体的な治療方針の希望があるような場合は、希望する治療方針の専門医に相談するのが良いでしょう。例えば、前述の放射線治療の場合であれば、がんの放射線治療で有名な医師や病院に問い合わせ、セカンドオピニオンを受けると良いでしょう。
セカンドオピニオンを受けるために必要なことは、聞きたいこと・質問したいことをきちんと整理しておくことです。そのためには、まず担当医からの「ファーストオピニオン」をしっかり聞いておくことが大切です。担当医からの診断や方針の説明はしっかりと聞き、メモを取ったり資料を保管・振り返ったりすることが大切です。
ファーストオピニオンで、病状や疾患の進行度合い、なぜその治療方針になったのかなどを正しく理解できないままでセカンドオピニオンを受けても、かえって混乱してしまったり、自分にとってもっとも良いと思える選択肢を選べなくなったりすることがあります。ですから、担当医の意見や説明はしっかり聞いて理解しておきましょう。
いよいよセカンドオピニオンを受けよう、と思ったら、まずは現在の担当医にセカンドオピニオンを受けたいと思っていることを伝え、必要な書類や記録を準備してもらいましょう。以下に示す書類は、患者さんの疾患の状態についての重要な情報ですから、これがないとセカンドオピニオンを担当する医師も十分に疾患の状態を理解できず、適切な助言ができないことが多いのです。
これらの資料のほか、患者さん自身で用意するべきものもあります。それは、質問をまとめておくことです。できれば、セカンドオピニオンは信頼する人と一緒に受けるのが良いでしょう。その際、一緒に受ける人と質問の相談をあらかじめしておいたり、メモを取ってもらったり、足りないところを補完してもらったりするのがおすすめです。
まずは、患者さんが疑問に思っていることを率直に質問するのが良いでしょう。担当医から勧められた治療の他にも方法がないかどうか、治療のメリット・デメリットを始め、担当医の説明でわからなかったけれど聞きそびれた、などというところがあれば遠慮なく聞きましょう。専門的な領域で患者さんがわからないことは、気を使っていてもどうしても専門家である医師には気づけないこともあります。
セカンドオピニオンを受けようというきっかけ・動機になった質問がメインの質問になりますが、聞くことがあまりに多すぎると時間内で終わらなくなってしまう可能性もありますので、質問を用意する段階である程度絞り込んでおくとより効率的に質問できます。また、患者さんの方でもインターネットの解説やガイドラインを読むなどして、予備知識を得ておくこともおすすめです。
セカンドオピニオンを担当する医師の許可があれば、録音をするのも良いでしょう。高価な録音機器を買わなくても、スマートフォンのアプリで録音することもできます。質問のメモを手元に置いて聞けば、質問と話を聞くことに集中できます。
セカンドオピニオンを受けたいと言うと、診断を信用していないと言うようで、担当医にはなかなか言い出しづらいという人もいるでしょう。しかし、近年ではセカンドオピニオンを希望するのは担当医への信頼いかんに関わらず、珍しいことではなくなってきています。そのため、医療関係者の認識も変わってきているのです。
また、担当医に秘密にしたまま受診すると、紹介状や検査結果・画像診断の記録など、必要な資料が一切ないまま臨むことになってしまい、せっかくセカンドオピニオンを受けに行っても適切な判断や必要な情報が得られない可能性も大きいです。ですから、臆することなく担当医にセカンドオピニオンを受けたい旨を伝えましょう。
セカンドオピニオンの費用は、健康保険の適応ではありません。したがって、全額自費診療となります。その場合、各医療機関が自由に費用を設定できるため、医療機関によってセカンドオピニオンの費用は異なります。また、保険診療と自由診療を並行して同時に行うことはできないため、セカンドオピニオンの受診先で検査や処方を受けることはできません。
セカンドオピニオンの費用の相場は、30分の相談で1〜2万円程度(税別)とされていることが多いようです。時間は最長で60分程度となり、病院によっては費用を払えば延長できるところもあります。また、一部の民間の医療保険で、セカンドオピニオンの自己負担額を給付してくれるものもありますので、興味のある人は調べてみるのもおすすめです。
セカンドオピニオンとは、担当医の意見の他に第三者の専門家の意見を聞くことで、疾患や治療への理解を深め、納得のいく治療を受けるための制度です。そこで、セカンドオピニオンを受けるのは「方針の検討」のときがもっとも適切であると言えます。
また、受ける前には資料の準備や、質問のまとめを忘れずに。限られた時間内で効率的に質問し、適切なアドバイスを受けるために、事前準備はしっかりと行いましょう。
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