記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/7 記事改定日: 2020/9/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓に疾患を持つ人のなかには、心臓ペースメーカー手術を受ける必要がある人もいます。この記事では、心臓ペースメーカーの種類や手術の流れ、術後の注意点やリスク、気をつけたい電磁波について紹介していきます。
心臓ペースメーカーの役割は、植え込まれた人の心臓が自力で最低限の脈拍を維持できなくなった時に、心臓を刺激することです。
健康な人の心臓は、一定のリズムで脈拍を刻んでいます。脈拍を刻むためには、右心房の上部にある洞結節と呼ばれる部分で発生した電気信号が、「刺激伝導路」と呼ばれる特定の回路を伝わって、心房から心室へと順に心臓の全体に行き渡ることが必要です。
この刺激伝導路が疾患など何らかの原因で断線したり、洞結節自体の活動が低下したりして電気信号が発生しにくくなると、心臓の脈拍が低下してきます。こうして心臓の脈拍が低下した時に、一定以下の脈拍数にならないように心臓に刺激を与えるための機械がペースメーカーです。つまり、ペースメーカーは心臓に電気刺激を与える機械であり、心臓そのものを治療したり、弁を治したりすることができるわけではありません。
心臓ペースメーカーが適応となる状態は、正常な電気信号が作られなくなる「洞不全症候群」または、電気信号が伝わりにくくなる「伝導障害」が主です。
いずれの場合も脈拍数が十分に上がらなくなるため、体を動かしていると息切れや全身倦怠感などが生じます。徐脈(脈拍が低下した状態)が長時間続くと、「足がはれる」「肺に水がたまる」などの症状が現れます。さらに、徐脈が進んで心臓が5秒以上停止してしまうと、失神することもあります。
心臓ペースメーカーは、本体とリード(導線)から成り立っています。リードは心房または心室、あるいはその両方に挿入されます。導線は心臓から出た電気信号をペースメーカー本体に、本体からの電気刺激を心臓に伝える役割をしています。本体は楕円形で、大きさは概ね直径4~5cm、厚さ5~6mmぐらいの大きさをしています。
心臓ペースメーカーはリードの数や挿入の位置、本体の機能によって、4種類に分類することができます。
ペースメーカーの埋め込み手術は、初めての埋め込みの場合と、電池交換の場合で手術の形式が異なります。
手術時間は約1〜2時間程度で、局所麻酔で行われます。術後、問題がなければ約10日〜14日程度で退院できます。
リードに異常がなければ、皮膚を切開してリードとジェネレータの接続を外して新しいジェネレータを接続して皮膚を縫合し、手術終了となります。
約1時間程度で手術が終わります。リードとジェネレータの接続は特殊なネジによる固定ですから、専用の工具を使えば簡単に付け替えることができます。術後はすぐに歩けるようになり、日常生活も全く制限する必要はありません。
ペースメーカーを埋め込んだ後は、強い電磁波に暴露しないようにする必要があります。とはいえ、強い電磁波を出力する機器は日常生活ではそう使うものではありませんので、日常生活であまり触れないような機器を扱う時に注意すれば良いでしょう。
ペースメーカーへの影響の分類を大きく分けると、以下のようになっています。
基本的に、日常生活で使うような家庭内で使われる家庭用の電子機器はほとんど問題はありません。日常生活でも触れる可能性があるもので注意が必要なのは、「高出力トランシーバー」です。
以前は携帯電話の電波の影響が心配されていましたが、現在ではペースメーカーが影響を受けにくくなっていること、また、携帯電話の電波も影響を及ぼしにくくなっていることなどから、日常生活で使用する範囲内では心配する必要はないと考えられています。
ただし、ペースメーカーが埋め込まれている側の胸ポケットに携帯電話を入れるなど、密着した状態で長時間過ごすのはやめましょう。
ペースメーカーの植え込み後は、基本的に全く制限することなく日常生活を送ることができます。ただし、鉄棒などの腕に強い荷重がかかるようなスポーツは控える必要があります。これは、ペースメーカーの植え込み位置に近い部分の筋肉を動かすと、ペースメーカー本体やリードに思わぬ力がかかって故障や破損の可能性があるからです。
退院後は、ペースメーカーの作動状況を調べるため、3~6カ月ごとにペースメーカー外来を受診する必要があります。検査は専用の機器を使用して5~10分程度で終了します。検査中は軽い動悸がすることがありますが、苦痛を伴うものではありません。
ペースメーカー本体の電池の寿命は機種や患者さんの状態によって違いますが、だいたい4~8年程度で寿命が訪れます。電池の残量は検査の際に機器に表示されるため、その残量を見ながら本体の入れ替え時期を決めることになります。また、「交換指標」が表示されても、すぐにペースメーカーの動作に支障が出るわけではありません。
ペースメーカー手術は、ペースメーカーの大きさやリードの太さなどさまざまな改良が行われ、苦痛や危険性は大幅に減少してきました。しかし、手術である以上、リスクを完全にゼロにすることはできません。ペースメーカー手術後に考えられる合併症には、以下のようなものがあります。
3%〜5%程度に起こる気胸とは、肺から漏れた空気が肺の周囲から肺を圧迫し、縮小してしまう現象のことです。これは、リードを鎖骨下静脈に通す時に誤って肺を刺してしまうことで起こります。この場合、しばらく胸に管を入れておき、肺の外側に溜まった空気を抜く必要がある場合があります。
また、リードは心臓の壁に押しつけて固定するのですが、まれに心臓の壁を突き抜けてしまうこともあります。リードが心臓を突き破ってしまうと、心臓を取り囲む心嚢という袋に血液が漏れ、袋に血液が溜まってしまいます。すると、外から心臓が圧迫されて十分に血液が送り出せない状態になることがあります。
場合により、X線撮影の造影剤を使用することがあります。造影剤はほとんどの人で悪影響のある薬剤ではありませんが、体質によってはアレルギー反応を起こしてしまうこともあります。
その他、不測の合併症が起こることも考えられます。
パースメーカーを埋め込んだ後には次のような合併症が生じる可能性があります。
ペースメーカーの電極やリードに細菌感染が生じることがあります。敗血症を引き起こす可能性もありますので、感染症が生じた場合はペースメーカーを取り外す手術が必要です。
電極から電気的な刺激を心臓に送るリードが心臓の壁から抜け落ちたり、リードの不具合が生じてペースメーカーが正常に作動しなくなったりすることがあります。このような場合もリードを入れ替えるための手術が必要です。
合併症が起こった場合、術後にできる限りの治療を行いますが、場合によってはより大きな手術が必要になったり、合併症によって後遺症が残ったり、最悪の場合死亡する可能性もゼロではありません。一般的に、合併症が起こる確率は約5〜7%とされています。
心臓ペースメーカーは、心臓の拍動が止まらないように刺激を与える機械です。ですから、脈拍が弱くなってしまうような疾患に対して適応となります。ペースメーカー埋め込み後は日常生活を制限する必要はありませんが、強い電波を出す機器に近づかないよう注意しましょう。また、ペースメーカー手術後は、定期的に動作確認のテストを受ける必要があります。検査と電子機器への注意を守って生活しましょう。
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